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「お待たせいたしました」

あれから旅館まで送ってもらい、ここに来て初めてゆっくり過ごした。三日月を一人にすると何かと不安なので同室にしてもらったが、お互い色々あって疲れが出たのか、すぐに寝てしまった。普通、男女同室なら何かしら期待されるものだが、生憎、ルシアにとって三日月は相棒という括りなので、そういう気は起きなかった(三日月はどうなのかは分からないが)。

用意を済ませてロビーで待っていると、草薙が迎えに来た。ルシアがふと目を移すと、草薙の背後に可愛らしい女性が立っていた。

「審神者様、おはようございます」
『おはよう、草薙。後ろの彼女は?』
「はい、私の後輩です」
「真壁と申します」
『ああ、宜しく』

綺麗にお辞儀し、自己紹介する真壁にルシアは少し違和感を感じた。
実は審神者になってから、凄い勢いで霊力が増えてきたようだった。特に雰囲気を感じとる力に目覚めたらしく、どんなに平静を装っていても、対象の周囲にオーラと言うか歪みが生じるのだ。
ルシアが無言で眺めている事に気づいたのか真壁が不思議そうに訪ねた。

「いかがいたしましたか?」
『ん、、?あ、ああ、すまない。何でもない』
「そ、うですか、、、」
「、、、?では、行きましょう。車へどうぞ」
『ああ』
「ふむ」

そして草薙に促され二人は車に乗り込んだ。

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真壁が運転し助手席に座った草薙が、これからの事を簡単に説明する。どうやらその本丸の主はかなりの問題児のようで、草薙達はかなり苦労しているらしい。

「あの本丸の審神者は、人の話を聞かない、仕事をしない、おまけにヒステリックで気に入らない事があるとわめき、周囲に当たり散らすんです」
『、、、まるで子供だな』
「ええ、、、此方としても何とかしようと色々指導しようとしましたが、、、」
『一向に効果がない、、、と』

指導が入り、度々訪れていた草薙達がうっとおしくなったのか、結界を張った上に端末の接続を切り、その本丸は完全に孤島と化しているらしい。こんのすけも行方不明と言うことで、現状が殆んど把握出来ていないとの事だった。

『なるほどな』
「もうこれ以上どうにも出来ない、かと言えそのままにもしておけないと、対策を考えているときに貴女様が現れたんです」
「のう、、、草薙とやら。気になっておったのだが、、、」
「はい、何でしょう。三日月様」
「なぜ主なのだ?確かに主の霊力は澄んでいて、力も強い。だが決め手はそれだけではなかろう?」
「、、、、」
『三日月、』
「、、、お主、主を何者かと重ねていないか?」

三日月に疑問を投げられた草薙は言葉に詰まる。
どうやら図星のようだ。黙ってしまった草薙の代わりに真壁が口を開いた。

「はい、三日月様のおっしゃる通りです。あの本丸の前任は真面目で心優しく、ですが体が弱く病気がちでした」
『私とは真逆だな』
「そう、ですね。ですが霊力の質がとても似ているのです。強さや量、澄みきったそれは正に珀藍様そのものなんです」
『珀藍?』
「はい。前任の審神者名です。実は私は彼の頃に担当をしていました。ですが、、、彼が亡くなり、あの女が主になったと同時に、私は担当を外されました」

前方を見ながら淡々と話す真壁。しかし、話の内容からして、その霞という審神者をかなり嫌っているのが分かる。草薙も何も言わない。おそらくその理由を知っているのだろう。
真壁になんて声を掛ければいいのか分からず、ルシアも黙っていると、大きな鳥居のようなものが見え、その前に停車した。

「到着しました」
『ここがそうか?』
「いえ、これはゲートです。本丸は神域と現世の狭間にあります。このゲートから転送出来るんです」
『そうなのか、、、その狭間と言うのが私が最初にいた場所、という事か』
「はい、普段はゲートは開いていないので、普通の神社ですが」

そういえばあの時も、車に乗る前にこの鳥居をくぐったのを思い出した。
車から降り、草薙が鳥居の前のパネルに何かを打ち込むと、鳥居の中が光り始めた。これがゲートなのだろう。

「さあ、お入りください。本丸の前に設定したので、そのまま門を潜って下さい。本来は結界が張られているんですが、、、あの本丸の門はあって無いようなものですので。それと、、、」

そこまで言うと、草薙は板状の機械をルシアに手渡した。

『これは?』
「タブレット端末です。こちらとの連絡にお使いください。使い方はこんのすけが教えてくれます」
『そうか。凄いなこんのすけ、、、』
「それと、、、」

草薙が懐から折り畳まれた紙を取り出す。

「これは、政府からの厳令書です」
『厳令書?』
「あの審神者の事です。政府からの連絡などに気にも留めていないでしょう。訪ねた時に門前払いされる可能性が高いです」
『、、、つまり、これを見せればいいんだな』
「はい。この厳令書に背くと、問答無用で権利を剥奪され、悪事をおかしていると逮捕となります。なので、、、」
『向こうも従うしかないと』
「ええ、彼女も現状を手放したくないと思っている筈、渋々従うでしょう。でも気を付けてください。中はかなりの瘴気に満ちています。ですが、審神者様なら大丈夫だと思います」
『そ、そうか、、、では行ってくる。三日月』
「あい、わかった」
「「いってらっしゃいませ。宜しくお願いいたします」」

草薙と真壁に見送られ二人はゲートをくぐって行った。

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―――――――――


「真壁」
「はい、先輩」
「大丈夫よ」
「はい、、、」
「ルシア様なら必ず、あの審神者を何とかしてくれるわ」
「はい、、、そう、ですね」
「戻りましょうか。仕事を片付けないと、ね?」
「はい、先輩」

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