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※銀時♀、裏注意







共に燃えゆけ

命叫ぶ鳥たちよ









「うっ…わぁー。」

「……………。」

「なんかもう…予想通りっていうか、なぁ。」

襖開けた瞬間に刀が飛んでくるとか物騒なお迎えだなオイ。
そう思いながら銀時は薄暗い部屋に入る。




(血塗れた獣ねぇ…)

確かに、このにおいはそうかも。
部屋も閉めっきりだし、相当病んでんなこれは。
換気とかしたいが…今はあんまり刺激をさせないほうが良いよなぁ。




「高杉…。」

「……………。」

「たかすぎ…。」

「……………。」

呼んでも返事はない。
ピクリとも動かない。
それでも襲ってこないということは、拒絶されてはいないんだと安心。
銀時はゆっくりと近づく。

ちょっと面倒なことに絡んだら負傷して、手負いの獣みたく誰も部屋に通さないという。
黒眼鏡の兄ちゃんからそんな話を聞いて、少し様子を見に来たのだ。
そしてぬるま湯が入った桶と、手拭い、ガーゼ、包帯が渡された…ってコレ完璧に治療しろってことじゃん。
別に高杉には何も無いけど、本当にそうなのかって興味本位だったのは事実。
あの俺様がここまで引きこもるのかと。
そしたら確かに引きこもってたと。
さて、どうしたものか。




「たかすぎー…。」

「……………。」

薄暗い部屋の中。
チラリと見える目はどこも見えていない。
意識が朦朧としているのか、それともただ頑固なだけか。




(仕方ないなぁ…)

懐刀は無さそうだし。
斬られる心配も無さそうだな。

銀時はしゃがみこむと高杉に抱き付き、あたためようとした。
血生臭い体が痛まないよう、包み込むように。
真正面から抱き締めては、視界を遮って余計な刺激を与えてしまうかもしれないから。
こちらから抱きついた形にすれば、高杉も見てくれる、かもしれない。




「…………。」

「…………。」

「……………。」

「……………。」

「…………………。」

「…………………。」

沈黙の、静かな時が流れる。
ただ高杉の息遣いが聞こえてくる、そんな時間。
生きている。
今はそれだけで良かった。




「高杉…。」

「…………。」

「体、見せて。」

「…………。」

「少しだけ…ね?」

「……………。」

反応がない、ただの屍のようだ。
まぁそう簡単に心は開いてくれないか。
銀時は手探りで高杉の手を辿り、そして握った。




(余計な心配させんなし…)

汚れているのか、いつもよりゴツゴツと荒れている。
何でそうなったのかわからない…けど、今放っておいたら間違いなく道を踏み外してしまう。
それはコイツが求めるものじゃない。

これは長期戦になりそうだな、と思いながら。
静かに目を閉じて高杉を感じていた。




「………………。」

「………………。」

まだ冷たいが、触れている部分は温かくなっている、気がする。
風呂にでも入れれば良いのだけれど。
どこに傷があるかわからないから下手に体は動かせない。
つか、本当に大丈夫なのか。
ちょっと会話をしたい。




「たかすぎ……。」

「…………。」

「どこか…痛いところ、ある?」

「…………。」

「なぁ…。」

喋ってくれないと、わからない。
銀時は高杉の目を見る。
やっぱり俺は見えていないようだから頭突きでもしてやろうか。
でも相手は怪我人だし。
ならもうちょっと優しい感じにと、銀時は的を外さないよう狙いを定め、ゆっくりと唇を重ねた。




(俺の初キス…が、こんなんか…)

ちょっと複雑だが、仕方ない。
かさついた唇だなぁと思っていると、不意に高杉が身動ぐ。
ようやく我に返ったのかと安心して唇を離せば、高杉が眉を寄せていた。




「体、見せて。」

「……………。」

「脱がすから。」

問答無用。
着物の帯を解いて、脱がす。
はらりと落ちた着物からは大きな傷が……って思ってたけど、そうでもなかった。
ちょっと深いかもしれないっていうところがちらほら。
あとは化膿してるところもあって、下手に触ったら悪化しそうで怖い。

銀時は手拭いで傷を拭きつつ、軟膏を塗ってガーゼを当てて包帯で巻く。
一般的な治療法だが、本当にこれでいいのかは不明。
だからこそ、医者に見てもらった方が良いのだが。




(あ、やべ)

無意識のうちに、高杉を全裸にしちまった。
着物から褌まで全てを脱がしていたので、今は男の体が目の前にあって動揺する。
が、顔には出さない。
黙々と治療を続けた。




「もうちょい…脚上げて。」

「…………。」

「うわぁ…ちょっと痛いから塗るわ。」

銀時は太腿の傷に触れ、治療を施していく。
だがその際、高杉の性器や玉袋にどうしても手が当たって良い心地はしない。
つか何か性器が上を向いているような…。

だが銀時は気にしないそぶりで治療を続ける。
結果的にほとんど包帯だらけになってしまったが、もう良いだろうというところで応急処置は終わった。
軽く着物を羽織らせて、血や膿で汚れた手拭いを洗う。




「じゃぁ、口あけて。」

「……………。」

「ちょっとは飲めよ?」

そう言うと、銀時は水を口に含んで高杉に口付ける。
少しずつ注いで、水を飲ませようとする。
これにはさすがに気付いたのか、素直に飲んでくれた。




「よし、」

あとは自分で食べれるようになれば、上出来だ。
唇からこぼれた水を指で拭う。
そして高杉の側に布を敷き、ゆっくりと寝かせた。
本当だったら布団でも敷いて寝かせれば上出来なのだが、今はそんな余裕はない。

仰向けに寝かせて、楽な姿勢をとってもらった。
その際、パチリと目が合う。
言いたいことはだいたいわかる。
「何でテメェが」もしくは「下手くそ」だ。
治療してあげたのにそんな目で見られるとか心外だけども。




「俺だって忙しいんだよ。」

もう少し感謝しやがれ。
そう呟けば、高杉は鼻で笑いながら目を閉じた。
銀時は桶や手拭いを持って部屋を出る。
そして三味線を弾きながら待ち構えていた万斉に押し付けた。




「少しはニンゲンに戻ったでござるか。」

「さぁ?」

あいつ、もともと獣だから。




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