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次の日、高杉が熱を出した。
何となく気になって高杉の隣で寝ていたら、寝苦しそうな感じだったのだ。
頭や体が熱いわで少しパニックになったが、すぐさま濡らした手拭いで冷やしたり体を拭いたり水を飲ませたりして応急措置を行う。
そんな俺って献身的、なんて。




「苦しい?」

「…………。」

「今日は飯、食えよ。」

「…………。」

「そうしねーと、治んないから。」

「……………。」

「とりあえず医者ー!
出てこい医者ー!!!」

万斉が信頼のある医者を呼んだと教えてくれたので、銀時はこれでもかというぐらい大声で呼ぶ。
すると部屋によろよろとした爺さんが入ってきた。
と同時に襲いかかるコレジャナイ感。
確かに白衣、のような白い羽織は着ているが本当に医者かと疑問に思ったが、ひとまず信じて任せるしかない。
銀時は部屋を出ると同時に、入れ替わりで万斉が入っていく。
そして襖に背を預け、ずるずるとしゃがみこんだ。




(なんか…つかれた)

戦争の時もこんなんだったか?
と思ったが、そう簡単には思い出せなかった。
あのときは応急措置ばっかをあてにしてたから、素人がなんとかやっていただけ。
でもこんなに疲れることはなかったのは。
おそらく高杉が滅多に大怪我をしていなかった、そしてその治療をしたことがなかったから、だろう。
手負いの獣は本当に神経質なんだなぁと思っていると、再び襖が開いた。




「…あの爺さん、本当に信用してんの。」

「ああ見えても腕利きの医者。
拙者らのような輩にも寛容なのだが、」

「が?」

「『ワシはミスしませんから』とドヤ顔で言われたでござる。」

「ドラマの見すぎだろ、本当に大丈夫か。」

「さて、晋助が悪化しなければ良いが…。」

そう言って、万斉は銀時の前を通りすぎてどこかに行ってしまった。
しばらくして、部屋から例の医者も出てきた。
一通りの治療は終わったらしい。
相変わらずよろよろしている爺さんを出先まで見送り、高杉のいる部屋へと入る。




「少しは綺麗になったのな。」

全身を拭いて包帯を巻き直したのか、さっぱりと綺麗になっていた。
熱があってまだ辛そうだが、顔色は良くなってきたように見える。




(とりあえず…)

安心した。
回復には向かっているようだから。
お願いだから俺の前で死なないでくれと必死になっていたが、これでもう一安心。
開かれた障子からは涼しい風が入ってくる。
血生臭かった部屋が、さらさらと気持ちのいい空間となっていた。

これだけ環境が良くなればあとは時間が解決してくれるだろう。
報酬は後々ぼったくればいい。
なら俺は帰るかと立ち上がろうとして、少しつっかえた。
何故なら高杉が着物を引っ張ったから。




「高杉…?」

「…………。」

「あとは、大丈夫だろ?」

「…………。」

「わかったよ。」

やれやれといった感じで、座り直し、手を握った。
なんとなく心細いんだろう。
意識がちゃんとしていて、頭もしっかり働いているのが確認できた。





「ちょっとは人間らしくなったみてーだな。」

皮肉もこめてそう言うと、ゆっくりと手を引かれる。
もっと近寄れということなのか。
どこまでも上から目線の奴だ。
少し躊躇いながらも高杉の側に横たわれば、高杉の胸の中へと抱き締められた。
こんな展開かぁとドキドキしながらも受け入れる。
だいぶ前にもこんな風に口説かれたことがあったような…ないような。
抵抗はできるけど今はしない。
それも全て、こいつのため。
今の俺は味方だからと、安心させてやりたいから。

でも傷は痛まないのかと疑問に思い、顔を覗きこめば目が合った。
少し熱が籠ったような目。
ちょっとはその気なんだろうと、ニヤリと笑ってもみせた。




「はよ。」

「……あぁ。」

返事をしてくれた。
なら良し。
高杉の手が後頭部に添えられ、導かれるように口付けをする。




(高杉と何回もちゅーしてる…)

だが悪い気はしない。
性格と口は悪いが、中二を除けば外見は悪くない。
昔から女に引っ付かれてる奴に触られて嬉しいのと、ほんの少し優越感があって気持ちがいいのだ。
何より唇から温度が伝わってくるから、本当に生きてることを感じられる。




「…なぁにしてんだか。」

「お互いにな。」

唇を啄みながら、時折喋っては見つめ合う。
変に和やかな空気となり、クスクスと笑いながら寝返りを打って仰向けになった。
口内がほのかに甘く感じる。
これは何だと考える前に、高杉が覆い被さってきて再び唇を重ねた。

これでは逃げられない。
啄むだけでは物足りず、唇を割って入ってきた舌が熱く絡む。
高杉の舌に全てを任せて目をつむると、体にとろけるような快感が走った。




「ふ……ン…ぁむ、」

「俺の舌は食いもんじゃねェよ。」

「ん………なんか、あまい…。」

「…さっき蜂蜜飲まされたからな。」

「はちみつ?」

「手っ取り早い治療だとよ。」





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