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※蛟×九尾♀注意
名前は「晋助」「銀時」です。
「晋ちゃん晋ちゃん」
「お月見しない?」
「お月見しよ」
「お月見」
「お月見」
「お月見しませんか」
「お月見しませんか」
「お月見しましょうよ」
「お月見しましょうね」
「ね」
という、どう見ても月より団子な月見勧誘に負けたのが数日前。
それなりに準備を行い、それなりに整え、それなりに晴れた月を眺める。
何が望みだったのかようやく判明する。
と思ったが、
「………スー……スー…。」
「……………。」
この有り様。
勧誘しておきながら本人は抱きついたまま爆睡。
月見どころか団子すら食べてない。
空腹と言えば空腹らしいが、今は睡眠を優先したようだ。
「お狐様の気分か…。」
いつものやつ。
本当に、いつものやつ。
晋助はやれやれと思いながらも、月を見上げて煙管を楽しむ。
そして抱きつく銀時の頭や背中を撫で、煙をくゆらし銀時の鼓動を感じた。
(これだからなぁ…)
例え発情してノリ気だったとしても、睡魔に襲われればそのまま寝てしまうぐらいの気分屋。
むしろよく寝るもんだから睡魔に抱かれてるのかと、変な嫉妬が芽生えた事もしばしば。
世界には『夢』や『眠り』そして『月』にでさえ神がいるらしい。
あやかしでも人の夢をどうこうする輩はいる。
ならば銀時はその類いに取り憑かれているのかと、古い資料から祓いのやり方を見直した。
が、実際やっても常に寝ているため、これは天性のものだと判明している。
「…酔狂なこった。」
水神の前で、こんなにも無防備に寝るとは。
あまりに気持ちよく寝るもんだから、どうにも手が出せない。
夫婦になってからというもの、ゆったりと平和な時間だけが流れている。
それを愛しいと思うのは、銀時の鼓動を感じているから。
故に外の喧騒は常に排除せねばならない。
「…ン……………。」
「お、」
「……………。」
「ついに起きたか、姫様よ。」
「………におい…。」
「ん?」
「ちかくまで……きてる。」
「あぁ、」
晋助の胸板にもたれながらも、銀時の耳はピクピクとしきりに動かしている。
外のざわめき。
風の音。
耳や鼻の良い銀時はすぐに察知し、晋助に伝える。
「雨でも降らすか?」
「…んン………。」
「月見どころじゃなくなるが。」
「………できるだけ強めにね。」
「あぁ。」
「なら、」
銀時は顔を上げ、晋助の胸板に手を添える。
そして煙を吐いた唇に吸い付き、挨拶をする。
もう少しこのままでいたいという銀時の甘え。
くちゅくちゅと舌を絡ませて気持ちよくなっていく。
(そうやって俺を焦らすな…)
これから出掛けるというのに。
狐らしく、本能的に精気を欲しがっているようだ。
ならばここは秋雨を降らし、緊張のない環境でたっぷり抱いてやろう。
「ン……し、すけぇ。」
「もう少し寝てろよ。」
「ほしくなっちゃった…。」
「ダメだ。
すぐ帰るから少し待ってろ。」
「まてない。」
「銀時。」
「んン……。」
我が儘な唇に噛みつき、言い聞かせるように深く口付ける。
舌を絡ませ、これでもかというぐらい愛情たっぷりの口付けを施した。
「ふ……ぁ……、」
「クク…そんなに蕩けたら自分でする気力も無ぇか。」
「ん……? 」
「仕方ねぇなァ…。」
高杉は着物を1枚脱ぎ、銀時に手渡す。
煙がついた着物。
これで銀時は心置きなく自慰ができるし、発情した銀時の『 気』に誘われる虫どもからも守れる。
晋助は銀時に見送られ、社から湖へと飛び込む。
ここからは水神としての役割。
聖域に踏み込む愚かな者共に鉄槌を下す。
(はてさて、どうなる事か…)
あやかしよりもヒトよりも、恐れるものは『気』の力。
精気を求める銀時の『気』は特に強い。
あやかしだけでなく、神までをも誘惑してしまう。
銀時を連れ去ろうとする輩はこれまで何度も浄化してきたが、本人には警戒心が全くない。
このままでは月の神でさえ誘惑してしまうのではないか。
そして月の世界へ連れていかれるのではないのか。
自分が置いていかれる、銀時が拐われる。
そう思うと腸が煮えくり返るため、俺は雨を降らせて銀時を隠す。
「月の神だか知らねぇが、」
あの狐は俺のもの。
誰にも渡さない。
月光でさえ届かない闇の世界へ、いざ。
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