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晋助のにおいを感じて指を動かすこと数十分。
何度目かの絶頂を迎え、晋助の着物に大きな染みを作っていった。




(あぁ、もう…やばい)

きもちよすぎて、だめ。
いっぱいだいてくれるとおもうと…あぁもうがまんできないっ




「はぁ……はぁ……。」

銀時は愛液を放ちながら、絶頂の余韻に浸る。
晋助の着物を羽織り、晋助の言われた通りの自慰を行う。
既に調教された体と心は晋助を求める。
涼しく心地良い風と、やさしく降る雨のにおい。
そして銀時の『気』を感じ、近寄ってくる無数のあやかしたち。
雨雲でぼやけながらも全てを見下ろしている月。




(人の体ばっか見やがって…)

面倒だから結界は張らないけども、晋助が帰ったら瞬殺だかんな。
なんかコーフンして準備万端なやつもいるし。
そんな弱い『気』じゃ、俺は満たされない。
お月様からイケメンが降りてきても俺はブレないかんな。
たぶん。




「ん…………。」

小さく名前を呼んでは、晋助の着物のにおいを確かめる。
甘い情事に浸った夜でも、起きたら晋助がいないこともしばしば。
それどころか何日も会えない事もある。
夫婦となってからは事前に予定を伝えてくれるが、それでも寂しいのは変わらない。

それを察したのか何なのか。
出掛ける前には必ず、晋助のモノを何か置いていってくれる。
時には着物、時には煙管、時には書物。
そして『帰ってくるから待ってろ』という晋助の言葉。
それを頼りに、晋助の帰りを待つのが恒例となっていた。




(すき……)

初めて会った時から構ってくれた。
それからも一緒にいてくれた。
それだけで嬉しかった。
それが今や、夫婦となって愛し合える。
こんなに幸せなことはない。

こんな俺でも、構ってくれたのは晋助だけ。
受け入れてくれたのも晋助だけ。
長い年月を経て、ようやく手に入れた俺の居場所。
だから俺は晋助を助けたい。
ヒトやあやかし、外の喧騒、その全てから守っていきたい。
そして今俺にできることは、




「ぁ………。」

晋助が帰ってきた。
早く行かなきゃ。




「晋助…。」

「………………。」

銀時は起き上がり、社の出入り口まで走る。
現れた晋助に抱きつき、口付けを交わして、浪費した分の精気を分け与える。




(今日はそれなり、かな…)

水神とは言え、雨を降らしたり水を司るには気力が必要。
それが広範囲に及べば尚更。
今日は立っていられるが、洪水や落雷などを大規模に発生させた日は何日も疲弊したまま。
そんなときは己の気を晋助に注ぎ込み、ついでに口付けや奉仕をして、夫婦として支えようとしているのだ。




「今日は大雨だけ…?」

「……………。」

「ん……ご苦労様。」

軽く頷いた晋助に、銀時は応える。
晋助を抱き締めつつ、歩けることを確認したのち、布団まで案内をした。




「………………。」

銀時の耳がピンと立つ。
たとえ霊山でも、近くにあやかしやヒトが住めば『音』が聞こえてくる。
ヒソヒソと話す音、キンキンと争う音、絡み合うパンパンという音。
晋助の結界により聖域となっているが、近くで争いがあれば水神自ら出向く。
時には大雨、時には落雷、時には洪水。
この霊山の守り神は誰なのかを見せしめるために。
その反面、晋助は多大な『気』を消費するのだ。

神と崇められながらも、疲労を伴うこの役割は嫌だと常々言っている。
それでもこの霊山を守っているのは、




「ん……っ」

「………………。」

「晋助……?」

「………き、」

「うん。」

「……お前の、気か。」

「わかる?」

「あぁ……。」

多少フラつく晋助を支えながら、銀時は晋助に寄りそう。
晋助の『気』は常に張りつめているが、今は弱い。
その影響からか、雨が少し弱まってきた。
これでは晋助を守れないと、銀時は強く念じる。
これぞお狐様流、神隠し。





「っ……、ふぅ……。」

外が少しばかり暗くなったとき、銀時は力を抜く。
雨のち霧になれば、もう生き物は立ち入りできない。
晋助が弱れば銀時の『気』でこの山を守る。
ただそれだけ。

銀時は深呼吸を繰り返し、再び晋助に『気』を送り込む。
先程よりも顔色が良くなったため、銀時も心を撫で下ろした。




「つらい?」

「いや、だいぶ楽になった。」

「よかった…。」

「だが、大丈夫じゃなくなったな。」

「え、」

「人の着物にぶちまける嫁を見たらな。」

晋助は銀時の肩を抱き、今度は唇から愛情を注ぎ込む。
銀時もそれに応え、このまま抱かれたいと返事をした。




「ん……今日は、俺が動く。」

「騎乗位か?
この前やって漏らしただろ。」

「あっ…あれは、晋助が離してくれないから、」

もごもごと言葉を濁す銀時。
それもそのはず。
騎乗位を連続で続け、理性が崩れ、快感の虜になった瞬間、晋助に股がりながら失禁してしまったのだから。
その時は変態らしく全てをひっかけてしまったが、起きた後の羞恥心は凄まじい。




「クク…あの生温かさは妙にリアルだったなァ。」

「晋助のばぁか…。」

「今さらだろ。
我慢できなかったやつが言うか。 」

「ぁ…っ」

晋助の愛撫が始まり、銀時は喜んで受け入れる。
どこか丁寧で意地悪な指は、何度も何度も絶頂へと導く。
お互いの『気』が混ざり、興奮してきた晋助の『気』が結界となり張り巡らされた。




(やっと二人きりになった…)

周りから聞こえるのは霧が流れる音と、遠ざかっていく雨の音。
そんな中、自分の喘ぎ声が大きく響く。
喘ぎと言っても喜んでいる声のため、更に恥ずかしくなってくる。
肌がぶつかり、晋助の着物には更に大きな染みを作っていく。
それを霧の中からぼんやりと月は見ていた。




「しん…っすけ、」

「あぁ、銀時…っ」

銀時は激しく腰を動かし、情事の実況を繰り返す。
恥ずかしさと高揚。
それらが混ざり、次第に水神の自慢を口にしていく。


月にいるという、別のなにか。
それらに情事から添い寝から全てを見せつけて、朝から晩までずっと水神に愛され自慢をする。
だってお月様に晋助が呼ばれたらまた一人になるから。
ようやく手に入れた俺の居場所、俺の旦那様。
水神が誰のものかを示すために、わざと見せつけるのが俺のやり方。

俺と晋助以外、森羅万象は恋敵。
なんて。






(宝は隠す蛟と宝を見せつける狐の敵は、)




20,09/10
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