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※銀時♀注意
「俺がしてほしいこと、してみ。」
「…………………。」
高杉の心がザワつく。
会って開口一番に何を言い出すのかと思えば、何やら女特有のお題タイムらしい。
所謂、どっちが似合う?的な。
答えが決まっていながらも、あえて相手に聞く定番のアレ。
そして間違えると微妙な空気になるアレ。
高杉は頭を捻り、まずは銀時が何を企んでいるのかを模索する。
「何だ突然。」
「ん?どゆこと?」
「それはこっちの台詞だ。
ついに天パが電波になったか。」
「ひっどーい。
晋助なら何か面白いことしてくれるかなーって思ったのに。」
「本当にそれだけか。」
「えー?
まぁあるとしたら晋ちゃんに優しくしてもらいたいなぁってぐらい?」
「ほう。」
「俺もさぁ、晋ちゃんの知らない所では疲労困憊なの。
切羽詰まってんの。
だから労ってもらおうかなって。」
「要は女王様になりてぇのか。」
「かもね〜。
晋ちゃんの自由にしていいからさ。」
「自由にってもな、」
高杉はチラリと隣を見る。
銀時の目は、これから何が起きるんだろうとルンルンに輝いた目。
そんなに期待されても困る。
(おそらくは、)
俺がどんな攻め方でくるかを見ている。
口説きも時間をかけすぎたら寝てしまう。
安易に手を出せば不機嫌になる。
順番を間違えたら回収が面倒なことになるだろう。
ならば、あの時の戦法をやってみるか。
「ねぇねぇ、」
「ったく、お前は。」
一服していた煙管を置き、銀時の腕を取って押し倒す。
流れとしては柔道などの寝技のような何か。
更に口と顎を手で覆ってしまえば、まるで強姦1歩手前のような雰囲気になる。
あえてロマンチック要素を無くす。
銀時のお題に、高杉は獣で応えた。
「どうだ、女王様よ。」
「んん……。」
「こうやって組み敷かれる気分は。」
「…ん。」
高杉の指が鎖骨を撫でる。
こういうドS気取りの女を叩きのめすのは心地良い。
普段から優位に立ちたがる銀時も、いざ押し倒してしまえば途端に雌の顔となる。
危うい選択だったが、どうやら正解のようだ。
「クク…今のお前の目、最高だなァ。」
とろけた目になった銀時に、あえて挑発的な態度をとる。
だが正解を導いた高杉に対し、銀時は大人しく従っている。
口を覆う手に力は無い。
男の力を見せつけるのは押し倒す瞬間だけ。
理性を切って加減を間違えれば、逆に飼い犬に手を噛まれることになる。
痛めつけないよう押し、柔らかく受け止める。
銀時が感じやすい加減で攻めれば、体の芯から火照り始める。
ここまで考えて攻めるのは、銀時だけ。
「ふふ…。」
「?」
「晋助の目も…良いよね。」
「どんな目だ。」
「視線だけで圧倒される、みたいな?」
「昔から変わっちゃいねぇが。」
「昔のイキってた切れ目も良いけどね。
でも今は余裕があるっていうか、なんか、大人の色気っていうのがある感じ。」
だから再会した時、簡単に捕まっちゃったのかも。
ニヤニヤと笑う銀時。
その唇を、高杉は親指でなぞった。
(夏祭りか……)
再会した時、というのは夏祭りの話。
あれは俺も勢いだった。
10年ぶりに見かけたこいつが、あまりにも変わってなかったから。
姿を見せりゃどうなるかと遊び半分で前に出たが、結果として即堕ち。
最初こそお互いに警戒してたはずが、段階的に関係を築いてしまった。
そうだ。
あの時から銀時の目は挑発的だった。
それこそ「俺のしてほしいことをしてみせろ」と。
「猛犬だったお前が、素直に感じてたのは俺の目か?」
「それもあるかも。
晋助の目とか声とか、あと手も大人になってて…。」
「そうかい。」
「晋助が、かっこ良いから…。」
高杉の手にすり寄るように、銀時は顔を寄せる。
誉め言葉を言いすぎたらしい。
恥ずかしくなったと隠すその銀時の顔が愛おしくなり、高杉はふわりと唇を重ねた。
「しんすけ。」
「ん?」
「もっと…。」
火照った目は柔らかい感触をねだる。
女王様の申し付けに応えるべく、高杉は柔らかく唇を重ね続けた。
唇だけでこの熱量。
このまま本番に進んだら、今夜は加減ができなくなるだろう。
それでも口付けがやめられない。
「はぁ…ん…ン。」
「……大人になったのは、それだけか?」
「ぁ……。」
「お前を満足させる、ここは?」
「ン……いじわる…。」
「ああそうだな。
そうやって、膨れた面を見せるから…意地悪しちまう。」
「ぁ…っ」
「色気を持ったのは、むしろお前の方だ。」
声も目も、女になりやがって。
昔は見せなかった雌の部分を、俺の前では見せるようになった。
(もう、限界だ……)
その声と目と体。
銀時の全てに、いちいち胸が疼いてしまう。
隣にいるだけで深部体温が上がる。
空酒をせずとも銀時だけで酔える。
まさに俺だけの健康器具、なんて言えば怒られるだろうな。
「……なにニヤニヤしてんの。」
「お前は俺にとって、大切な存在だと再認識しただけだ。」
「どした、急に。」
「今の俺が俺でいられるのも、お前の存在のおかげだ。」
「……………。」
「つかみどころの無ぇお前が、俺の側にいる。
それがたまらなく嬉しいのさ。」
「それは、」
「……………。」
「晋助の、ためだから。」
「……………。」
「…………晋助が……すき…。」
「っ……、」
小さく震える唇に、高杉は食らい付く。
わざと性器を触れさせた銀時の手も、応えるように愛撫をし始めた。
ならばこの後の選択肢はただ1つ。
俺を好きだと言った銀時を、ひたすら溺愛すること。
「はぁ…はぁん…っ」
「…っあぁ、くらくらさせやがる。」
夏祭りの熱気と似たような。
初夜の興奮と同じような。
銀時を愛する欲に、終わりがない。
ならば全身全霊で溺れるだけ。
「ん……ぁ……っ」
「お前のしてほしいこと、たっぷりやってやるよ。」
「ぁっ……あん…。」
「優しく…激しく…逃がさねェからな。」
「しんすけぇ…っ」
「あぁ、銀時…っ」
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