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恋愛や愛撫、そして性交。
それらがこんな気持ち良い感触だと知ったのは、晋助と再会してから。
昔馴染みで常に側にいた、という好条件だったのにも関わらず、幼い頃は特に何も無かった。
お互い恋愛対象ではないのかと気にしつつ、10年経って再会したのが始まり。

晋助に睨まれれば体が火照り、口説かれては体が痺れ、押し倒されては何も考えられなくなってしまう。
恋愛初心者には強すぎる愛情に、たまに毒すぎると距離を置いたこともある。
そんな俺でも晋助が愛してくれる。
綺麗になったねとみんなが言う。

そして今更ながら思う。
ワルいギャップ男に捕まったなぁって。











「ねぇ、」

「なんだ。」

「こんな気持ちいいこと、昔はなんで教えてくれなかったの?」

一段落した布団の中。
しんしんと降る雪を眺めながら、布団の中で高杉に寄り添い、体温を感じていた。
饒舌なのは、性交後特有の空気だから。
直接伝わる体温に、銀時も気分良く話ができる。




「昔から仕込んでたら相当なインランになった、とか?」

「それも一理あるな。
わかってんじゃねぇか。」

「だって晋助の周りにいたのは、そういうのが上手い子ばかりだったんでしょ?
いつだったか、一緒に遊んでた辰馬がげっそりして倒れてたし。」

「あれは…そうさなァ。
まぁ、金もあってあの性格だから大人数に搾られてたな。」

「もー、えっちなことばっかして。」

「それを茂みから覗いてたお前が言うな。」

高杉の手が銀時の頭を撫でる。
たまに髪を梳してくれるのが心地良い。
昔はこういうことも、その上手い子にやってたのかと思うと心臓がチクチクする。
それをわかってか、高杉は銀時を呼び、銀時を目を合わせ、口付けをする。
『お前だけしか見てない』と言っているように、優しく。




「…晋助って、本当に策略家だよね。」

「まぁな。
当時は女をヒイヒイよがらせて情報を吐き出させるぐらいは。」

「うわぁ〜。」

「だがお前はその女たちともつるんでたな。
知ってるやつらが絡んでるのを見てどうだった。」

「どうだった、て。」

「クク…俺の事がそんなに気になってたのか。」

「だって、晋助のは凄いイイって話だったから。
どんな凶器を持ってんのかと…。」

「へぇ。」

「比較対象がいないからよくわかんなかったけど、今こうしてイイようにされてるって事は、イイってことでしょ。
ぜんぶ晋ちゃんのせいだかんな。」

「お得意の責任転嫁か。
そうやって何人も男を振り回してたんだろ。」

「んぅ…。」

「男の手を知らず、味もわからず、自分で慰めてきただけ。
その割には野郎に漬け込まれなかったんだな。」

「だって…気持ち悪かったから。」

銀時もモテないわけではない。
仲良くなれば好意を持たれ、真剣に告白されたこともある。
油断すれば道端で襲われることもしばしば。
そんな時は刀や木刀で渇を入れては男を蹴散らす。
おかげでそれなりに強くはなったし、周りの人から頼られることも多くなった。




(でも俺が望んでいたのは違う…)

本音を言えば、弱味を見せてもいい人が欲しかった。
スナックの年増たちの包容力とは違う。
背中を預けられるような、実戦でも守ってくれるような、そんな戦う王子さま的な存在。

でも俺が強くなればなるほど、寄ってくるのは包容を望む年下ばかり。
母性をくすぐる可愛い男子…らしいが俺の好みではない。
ひ弱な男には興味ないの一点張りだったが、周りから「若い男を断るなんて勿体ない」「少しは遊んでみればいい」「むしろ自分好みに育てれば良いんじゃない?」と言われるようになった。

確かに、今は性欲が増していくお年頃。
ならドSを発揮して年下の調教でもしてみようと意気込んでいたら、まさかの俺様ドSが再登場した。
久しく見ていなかった“自信家”で“俺様”で“口説き上手”な“獣”




「あの時のこと…忘れてないよ。」

だって初めてだったから。
夏特有の湿気と、屋台や人混みの熱。
そんな道のど真ん中で、まさか熱烈に唇を重ねるとは。




「あれは…俺も火傷しちまったな。」

「割かし余裕そうだったけど?」

「フリだフリ。
お前に触れて、絶対に逃したくねぇと緊張してたんだよ。」

「へぇ…。」

長年の隔たりがあったためすんなり再会できるなんて…と思っていたが。
物騒な雰囲気は一瞬だけ。
そのまま高杉に手を引かれて連れ去られたのが始まり。

有無を言わせないその流れにときめいてしまい、銀時は抵抗もできずされるがまま。
そして暗闇の林道で口説かれ、抱き合い、互いの名前を呼んで愛を口にした。
抱き締める力がお互いに強すぎて、離れようにも離れられなかったのが懐かしい。
今思えば、根は不器用な奴らが本気を出した瞬間だった。

そしてタイミング良く花火が上がり始めた頃。
高杉と再び道へ出て、多くの人に紛れながら一緒に花火を見た。
ドンドンと上がる花火の彩り。
それを両思いだった高杉と見れてリア充すぎるとテンションが上がったは数秒だけ。
名前を呼ばれ、振り向けば初めての口付け。
花火は音だけを聞きながら、静かに目を閉じて唇の感触を味わった。
次第に体を寄せ合い、抱き合い、唇の熱を楽しむ蒸し暑い夜。
見られてても気にしなかったのだが、知り合いはちらほらいたらしい。
あの銀時に熱愛報道、と後日騒がれたものだ。




「あん時は絶好のチャンスだったからな。
お前を絶対落とすと決めた。」

「へぇ。」

「今も思い出すと、俺も…。」

ごろんと寝転がった高杉に、布団の中で押し倒されてしまう。
そして交わす甘い口付け。
あの時もそう。
あまりに気持ち良くて、何度もねだったのが懐かしい。
過去を懐かしみながら、口付けを交わし、チュッと音を立てて唇を離す。
そしてゾクゾクと感じる目と目が合った。




(そうそう…)

これこれ。
俺が求めていたのはこれ。
ひれ伏そうとしてくる野獣のような目。
このゾクゾク感を、ずっと待っていた。




「晋助って、情熱的。」

「それはお前だけだ。」

「あと堅実。
最初もさ、すぐホテルとかにしけこむかと思えば、何回かデートを重ねての話だったし。」

夏祭りデートは銀時を送って終わり。
その後も逢瀬を続け、甘く深い口付けを交わしては愛を囁いた。
次はどんな逢瀬になるのか。
もしかしたら、高杉に抱かれてた女のように乱されてしまうのか。
気持ち的にソワソワしていた銀時は、ワンランク上の下着を買い揃えたりコンドームの買い置きなどして準備をしていた。

そして迎えた旅館での逢瀬。
その日は高杉の様子がいつもと異なり、獲物を定める雄の目をしていた。
今の、まさにこの目。




「そりゃ、処女相手にガツガツいくほど若くねぇ。
触っただけで気を失うようであれば尚更な。」

「あれは…本当に気持ち良かった。」

「誰が触ってると思ってんだ。」

「そだね。」

銀時は高杉の首に腕をまわし、横に寝転ぶよう仕向ける。
それに応じた高杉に寄り添い、首筋や鎖骨に吸い付いて遊んだ。
初夜を思い出すと子宮が疼く。
高杉に触れられ、頭も体も甘く痺れてそのまま気を失ってしまった。
初夜のいい思い出である。




「心配させてごめんね。」

「まぁ…顔は満足そうだったから安心したが。」

初夜は愛撫だけ。
それから数日間、愛撫や口淫を繰り返し、余裕ができた頃に挿入された。
脳天からとろけた影響かこれといった痛みもなく、高杉の腰についていくのが精一杯。
律動の途中で絶頂しても終わらない甘い刺激。
理性が崩れて、途中から性交の実況やら高杉への想いをぶちまけていたらしい。
煽られた高杉も自分で止めることができず、何時間にも及ぶ性交を体験したと後日語っていた。

そして極め付きは身も心も満たされた布団の中。
そんな時に「一生愛してる」「嫁になれ」と口説かれたら、夢うつつな頭はイエスと答えてしまうではないか。
なにか裏でもあるのかと腹を探る余裕もなく。
タイミングとしては意地悪だと思う。




「晋助は、俺のこと好きだったの?」

「……………。」

「ねぇ、いつから?」

「さぁな。」

「ねぇねぇ。」

「…うるせぇなぁ。」

過去をねだる銀時に対し、高杉は甘い口付けを交わす。
そして再び銀時を押し倒し、逃げられないようにする。




(めちゃ胸きゅん…)

こうやって押し倒されて身動きがとれないの、凄い好き。
俺を黙らせる口と体があっての話だから、晋助にしかできない攻め。
少女漫画の壁ドンとか不意打ちキスとか、あながち捨てたもんじゃないなって。




「ん……。」

「…攻められるのが、好きなんだろ?」

「すき…。」

「お前の周りには、攻める奴はいなかったのかよ。」

「いないもん…晋助だけ。」

「普段は素っ気なくしているが、本当は苛められてぇなんざ。
とんだ天の邪鬼だ。」

「それをやって良いのは、晋助だけ。
って、言ったら?」

「ほぅ…まだ物足りねぇか銀時。」

「足りないのは晋ちゃんでしょ。」

「俺が、欲しいだろ?」

「ん………。」

「さっきは挨拶程度だからな。
これからゆっくり種付けしてやるよ。」

「…ばぁか。」

「そうやって煽るのが、お前のワルい癖だ。」

「……えっち。」

「そう言って、目の前でねだる猫はどこのどいつだ?」

「はやくあっためて。」

「あぁ…壊れるぐらい愛してやるよ。」





21,01/11
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