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時間。
それは人間が唯一支配できないものである。
もし支配できたら好きなところで一時停止して、嫌なところは早送り。
そうすれば充分な睡眠もとれるし、何より働かなくても食料が調達できる。

そんな便利な道具、持ってるとしたら…。
あ、やっぱここは某猫型ロボットかねィ。
でも猫はいらねぇ。
ポケットだけ存在してくれりゃそれで良いのに。

なんて現実逃避をしながら、俺はまた午睡のために目を閉じた。









猫は猫でも   です









「さて、どうしたものか。」

土方は腕を組んで考えていた。
原因は仕事中にも関わらず堂々と居眠りをしている部下。
毎回悩まされているが、こう何回も続くと怒るのも飽きてくる。




(何かいい方法は…)

コイツは俺の説教なんて慣れっ子で聞く耳を持たない。
近藤さんの説教は聞くのだが、それは普段温厚な人間ほど怒ると恐いという世間の定理だ。
しかしだからといって近藤さんに頼むわけにもいかない。

俺一人でもできる躾とは。
ダメだ、考えれば考えるほどコイツの嘲笑う声が脳内に響く。
ということは、




「…考えるだけ無駄か。」

土方はハァとため息を吐いて沖田を放っておいた。
というより考えるのをやめた。




「ったく、」

俺にどんだけ仕事が回されると思ってんだあの馬鹿。

心の中で悪態づいていると、不意に近くの障子が開いた。
そして総悟を従わせることのできる唯一の存在が部屋から出てきた。




「おおトシか。
どうしたんだ浮かない顔をして。」

「いや、いつものサボり魔のことでな。」

「また総悟か。
なんなら俺が言ってみるか?」

「構うことはねぇ。
誰が何を言っても人間の根本までは変えられねぇよ。」

土方は口に咥えていたタバコを指に持ち、ふっと煙をはいた。




「俺はこれから部屋で始末書を整理しなきゃならねぇからな。
だから総悟にはしばらく寝ててくれた方が安全なんだよ。」

なんたって武力行使で副長の座を狙う奴だ。
大事な資料や書類を扱っている時に、もし沖田のバズーカが乱入したら。
それだけは何としても避けたい。
というか今まで何度も避けてきた。

安心して仕事ができるのは本人が眠っている間ぐらいである。
なので今の機会は逃したくはない。




「それに、あいつは腐っても隊長。
見回りの時間になったら、嫌でも誰かしらに起こされるさ。」

だから俺が手を下すことでもねぇ。




「そうか…。
でもトシ、無理はするなよ。
人手が足りなけりゃ俺を呼んでくれ。」

「ありがとな、近藤さん。」

土方は近藤に礼をした後、自室へと向かう。
そしてすれ違う隊員にそれぞれ指令や仕事の確認をしながら、ようやく自室にたどり着いた。
目の前には始末書の山。
しばらくはコイツらと付き合わなくてはならない。




(一週間だな)

会議、接待、江戸の見回り、休日。
全てを含めて書類が終わるのは一週間と見込みをつけた。

誰でもいい。
時間でも何でも止めてくれ。






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