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それからというもの。
接待や見回り以外の時間は全て、自室に籠もって書類に目を通していた。
担当する書類に加えて増える始末書。
息抜きはしているが、やはり辛いものは辛い。

今日も今日とてせっせと仕事を進める。




「副長。」

「山崎か…入れ。」

聞き慣れた声に、土方は一度筆を置いた。
するとスッと障子が開く。

どうせ大量の始末書を持ってきたのだろう、また仕事が増える。
土方はフゥと煙を吹いて煙草を灰皿に捨てた。




「忙しいのにすみません。
攘夷浪士粛正の報告書と、始末書です。」

「…………………。」

「副長?」

「山崎、それで全部か?」

「え、ああはい。」

山崎が手にしているのは三枚の紙。
予想していた量とだいぶ違っていたため、土方は目を丸くしていた。




「やけに少ないな。」

「まぁ…確かに、いつもなら抱えるほど始末書がありますからね。」

「問題なく一日が終わるのは良いことだが。
何か変わったことは無いか。」

「変わったこと…。」

山崎は土方に書類を手渡しすると、うーんと考える。
すると「あ、」と言って何かを思い出したような素振りを見せた。




「そういえば、沖田隊長が昼寝をしてませんね。
見回りも真面目にやってますし、何より仕事もサボってませんよ。」

山崎の言葉に、土方は耳を疑う。
あのサボり魔が“真面目に”“仕事をしている”らしい。
しかも日課の昼寝もしていない。

これは何が起きたのか。
会議も見回りも時間が合わず、沖田にはしばらく会っていない。
この数日に何があったというのだ。




「風邪でも引いたか?」

「いいえ。
稽古場では隊士たちをなぎ倒してましたよ。」

「じゃあ近藤さんが言ってくれたのか。」

「局長は、副長が言ってくれたおかげだと。」

「………………。」

「改心でも、」

「あり得ねぇ。」

「ですよね。」

二人でうーんと悩んでいると、外から誰かが歩いてくる音がした。
そして山崎の頭の上に何かが置かれた。




「総悟?」

「お、沖田隊長?!」

「何でィ、二人して。
あ、コレ近藤さんから差し入れなんで。」

じゃ、と言って沖田は出ていく。
またドS発言をするかと思いきや、何事もなく終わった。

そのことに、山崎と土方は「え、それだけ?」という顔をしていた。







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