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「総悟……。」
「ん…、」
「本音を言ってくれ。」
「ぇ……?」
「俺はお前が好きなんだよ。」
「……………。」
「昔からずっと。」
「……………。」
「だからこそ、ちゃんと口で言ってくれ。」
されるがままでは、受け入れられたと勘違いしてしまう。
「頼む…。」
分かり合おうなんざ言わない。
ただ、お前が欲しいだけだ。
例えその心がパンドラだろうと何だろうと解き明かしてみせる。
土方はそう願いながら、月に照らされた柔肌に縋る。
すると沖田は土方の頬に手を添えて撫でた。
「不安にさせてたのは俺、ですか。」
「総悟……。」
「アンタ、俺を抱いてる時もどこか上の空だったし。」
「……………。」
「すいやせん土方さん。」
俺はどうやら、愛することがプログラムされてないみたいでさァ。
(…………は)
今、コイツは、何て。
考えても言葉の意味が理解できない。
困惑した土方が顔を上げると、目の前には傷付いたような顔をしながら笑う沖田がいた。
「恋とか愛とかわからないんです。
今まで色んな奴に色んなことを言われましたが、それも良いやって思っちまう。
だけど束縛されんのも嫌いだし休暇はデートよりも中でのんびりしたい派なんで、どんなに告られても恋人なんて作らなかったんですぜ。」
そんな日常を繰り返し、ようやく気付いたのはいつだったか。
記憶に新しいのは山崎に「顔に出ないタイプなんですね」と言われた時か。
子供、隊長、女、人殺し、感情がない、そう言われ続けても平気だったのは自分の事に無頓着だったから。
思い返してみれば散々な言われようだったなと思う。
それでわかったのだ。
俺は、人と比べて“大切な何か”が欠けているんだと。
「何故と咎められても涙さえ流せやしない。」
「…総悟、」
「俺は…根本的に、人を変えた方が良いのかもしれやせん。」
俺が変わらなきゃ周りの皆も迷惑だろう。
そう呟く沖田に土方は眉を寄せ、そのまま強引に唇を奪った。
「っ………ん、ぅ……。」
舌が強引に迫ってくる。
唇をこじ開けて舌を絡ませればどんどん息ができなくなって辛くなる。
だけど抵抗はしない。
そんな沖田を再び布団に押し倒して見下す。
「…お前の本音は、それで全部か。」
「……………。」
「プログラムされてないとか、くだらねぇ言い訳すんな。」
お前はそのままでいい。
そう告げると、土方は沖田の頭を撫でて宥めるように呟く。
「変わらなくていい。」
「だけど…っアンタが一番変わってほしいって思ってるくせに、」
「あぁ、だけど本音を聞いてわかったよ。
お互いどうしようもない馬鹿だってことがな。」
確かに俺は総悟の本音を聞きたかった。
そして変えられるなら変わってほしいと思った。
つまり俺が安心できるような確信が欲しかったのだ。
だけど総悟は総悟なりに意志を持っている。
感情が無いわけではない。
周りが思っている以上にコイツが悩んでいたことを初めて知り、俺も気づかされた。
変わってしまえば、俺が惚れた総悟がいなくなる。
「俺は、惚れた時のお前がいい。」
「っ…自分勝手。」
「男なんざそんなもんだ。」
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