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※総悟♀、兄妹パロ注意
(兄妹なので2人とも名字は土方です)
「おーい、早く起きろ。」
「ンぅ……。」
「学生は学校に行くのが仕事だろ。」
「………………。」
「総悟。」
「………………。」
「ったく仕方ねぇな。」
兄のベッドですやすやと眠る妹。
それを起こすべく、丸まっている細い体を手際よく持ち上げる。
そして幼い子をあやすように抱き上げて寝室を出た。
(学生は寝ても寝足りねぇか)
直射日光。
朝食のにおい。
俺ならそれで起きるが、学生である妹は起きない。
というか起きる気配もない。
親なら叩き起こして無理やりでも行かせるものだが、最後の最後で甘やかしてしまう十四郎は、やれやれと自分に笑ってしまう。
すると抱き上げている体がゆっくりと動いた。
「ぅ………ん…?」
「起きたかよ。」
「ねむい……。」
「知ってる。」
「ひじかたぁ…。」
「お前も同じ名字だろ。」
「んー………。」
「おいコラ、また寝るな。」
「けちぃ…。」
総悟は目を擦りながらも十四郎の首に腕をまわす。
密着する体からはゆっくりとした鼓動を感じられ、髪からはシャンプーの香りがふんわりとする。
男はどうもこういうのに弱い。
(妹のくせに生意気)
リビングまで来た十四郎は、総悟を椅子に座らせようとする。
しかし総悟は離れようとしない。
何度体を揺すっても離れない。
またまた折れてしまった十四郎は総悟を抱き上げたまま椅子に座った。
「飯、できてんぞ。」
「和食…ですか。
相変わらず手が込んでるこった。」
ようやく起きる気になった総悟が、十四郎の膝の上でくぁあと背伸びをする。
そしてふにゃりと笑って目の前の黒髪を撫でた。
「おはようごぜぇます…。」
「おはようさん。」
十四郎は社会人になった時から、自立しようと一人暮らしをしていた。
しかし始めた時から、妹がちょくちょく遊びに来るようになった。
というかもう住んでいる状況に近い。
周囲を見れば一目瞭然。
黄色の棚に水色のテーブル、そして何故かオレンジのテディベアがマヨネーズの模型を持っている。
モノクロカラーだったはずの部屋が、パステルカラーへと変わりつつあった。
「あれ、俺のブタさんのお皿…。」
「あぁ悪ぃ。
ピンクのは俺が使っちまったから今日は黒いブタで我慢してくれ。」
「で、湯飲みも違いますぜ。
新しく買ってきたウサギさんの和柄のやつはどうしたんですか。」
「あー…まだ箱から出してねぇ。」
「面倒くさがり。」
「節約だ。
まだ使えるモンがあるだろうが。」
焼いた魚を盛りつけたのは、ブタの顔が描かれた黒い皿。
その近くに質素な湯飲みが置いてある。
不満そうな総悟だったが、さすがに空腹には勝てないらしい。
十四郎を背もたれにしようと座り直し、手を合わせて「いただきます。」と言って食べ始めた。
「俺、アンタの卵焼きだけは認めます。」
「“だけ“は余計だ。
あと、人参は残すなよ。」
「うぇ。」
総悟は嫌そうな顔をするが、兄として妹の偏食は直さなくてはならない。
十四郎は総悟の頭を撫でて、できるだけ優しく接する。
これが長年付き添ってきた兄の業。
妹は褒めて延びるタイプと理解してからは、あまり叱らなくなった。
今思えば、これがいけなかったのかもしれない。
「土方さん、あーん。」
「……………。」
ほらな、また始まった。
「あー。」
突如として目の前に現れた人参。
十四郎はしかめっ面で総悟を睨むが、肝心の顔は見えない。
そして出勤まで時間もない。
やっぱり折れてしまう十四郎は、総悟から箸を奪って人参に食らいついた。
すると総悟が勢いよく振り返り、唇に食らいつかれる。
(案の定…か)
総悟の舌が、十四郎の口の中に入ってくる。
そしてわざわざ口内を舐め回してから、人参を奪い取った。
と、同時に唇は離れる。
もくもくと人参を食べる総悟は不機嫌そうに十四郎を睨んだ。
「もしかしてアンタ不能、」
「今度は人参まるごと煮るぞ。」
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