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総悟を甘やかすようになってから、何故かこんな事をしてしまう関係になってしまった。
妹が中学生、俺が大学生の時から。
抱き付いてきたり、同じベッドで寝ようとしたり、キスをせがんだり。
あえて言おう、総悟は可愛い。
そんな可愛い妹に強請られたら負けるだろう。
しかし俺の理性はギリギリのところで踏みとどまり、自分からは手を出さずにいた。
それで「俺は悪くない」と言い張っている。
(それもいつまで持つのやら…)
十四郎は通勤途中で考える。
社会人でなおかつ一人暮らし。
家族の目もないし、その気なればいつだって総悟を抱ける。
それでも踏み越えてはいけないと『何か』が耳元で囁いてくるのだ。
「何ですか、ため息なんてついて。」
「………………。」
今だってそうだ。
結局、学校に遅れるからと車を出して総悟を乗せている。
ここでもし挑発なんてされたら…。
「まさか車を出してくれるなんて思っていませんでした。」
「……………。」
「今日の夕飯は何がいいですか?
お礼に材料買って俺が作りまさァ。」
「……………。」
「土方さん?」
「ん、あぁ…。」
「?」
「総悟…今日は、」
家に帰れ。
そう告げようとした時、目の前が赤信号になったため車がゆっくりと止まる。
その瞬間、顔を無理やり振り向かせられて唇に柔らかい感触があった。
「っ………。」
「ン……は、」
頬が総悟の両手で覆われる。
十四郎は止めろと総悟の肩を押すがなかなか離れてくれない。
信号待ちとはいえこんなキスをぶちかます奴がいるか。
そう思う反面、舌を絡ませる快感に若干流されつつある。
すると総悟はちゅっと十四郎の唇を吸って、ゆっくりと顔を離す。
「俺の帰るところはアンタだけ…。」
だから、帰れなんて言わないで。
「お前…。」
「じゃあここからは歩いて行きます。」
送迎ありがとうございました、そう告げて総悟は車から出る。
十四郎は呼び止めることもできず、茫然としながらその背中を見つめていた。
「……………。」
ふわふわして、生意気。
だけど脆い部分も多くある。
道の角を曲がり、総悟が見えなくなった時。
十四郎は我に返って青信号になった道路を真っ直ぐに進んだ。
そしてハンドルを握る手が少し汗ばんでいるのに気付く。
(参った…)
今の言葉は効いた。
そしてかなり興奮した。
このままだと夕飯の前に妹を押し倒してしまうかもしれない。
「ったくあの馬鹿……俺の気持ちも考えねぇで。」
*
変わらない街。
変わらない風景。
いつものように通学路をスタスタと歩く。
しかし不意に立ち止まり、歩いてきた道を振り返った。
「………………。」
さすがに、やりすぎた…かもしれない。
「すいません、兄さん。」
総悟はボソリと謝罪をし、そして再び歩き始める。
罪悪感と後ろめたさと、重くのし掛かるもの。
今まで何でもないような顔をしてきたが、心と体を繋ぐ何かが引き裂かれそうだった。
もう、限界らしい。
(それでも…諦めませんから)
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