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突然、料理がしたいと言ってきた。
しかも屯所の食堂だと味気ないからと、どの手を使ったのか民家の台所を借りられた。

飯を作ってくれる女がいない野郎の非番なんざ、寂しすぎますぜ。
なんて、一言二言多い年下の言い分は聞き流す。




「おいマヨネーズはどうした。」

「まぁったマヨネーズですかィ。
そんなにマヨマヨしたけりゃ自分で作りなせェ。」

「俺のために作ってくれんじゃねぇのかよ。」

「タバスコのオプション付きで高くつきますぜ。」

「わかった俺が悪かった。」

やれやれと思いながらも、土方は沖田の料理姿を見る。
たまに本とにらめっこしているが、なんとなく手際は良かった。




(嫁みてぇだな)

エプロンつけて。
鍋かき混ぜて。
味見して。

何もせずに後ろから見る俺に気付くと、すぐぶーたれる。
おそらく次に口から出る言葉は、ぼーっとしてないでマヨでも作れィ土方コノヤロー、だ。




「っ…ぼーっとしてないで…マヨでも作れィ土方コノヤローっ」

「大当たり。」

「は…何が?」

「さて、何だろうな。」

土方は立ち上がり、台所で格闘する沖田の横に立つ。
牛肉にじゃがいもにしらたき、おそらく鍋の中は肉じゃが。
炊き上がった飯は既に握って皿に盛りつけてある。
そして隣の器に入っているはニラと納豆が混ざったもの。
これだけは何かわからない。




「…………。」

「…………。」

沖田はチラチラと土方を見てくる。
料理を見られたくなかったのか、それとも手伝ってほしいのか。

どちらにせよ、言うことは聞いてやる。
何故かっていうと機嫌がいいからだ。




「おい総、」

「土方さん。」

「何だよ。」

「ちょっと…コンロの火を止めてくだせェ。」

「あぁ。」

言われた通りに火を止める。
すると沖田が抱き付いてきて、土方に触れるだけの口付けを落とした。
それには土方も驚いて1歩引いてしまう。




「…屯所じゃ、できねェんで。」

「そうだな。」

土方は沖田の頬に手を添えて、今度は土方から口付けをする。
啄む口付けではなく舌を絡ませるような大人の口付け。
これはしばらく解放されない。
そう思った沖田は、土方の背中に腕をまわして受け入れた。

口付けもいつぶりかわからない。
屯所ではただでさえ人目があるため、昼間からなんて盛れない。
だけど今なら、なんて思うが。
コイツの機嫌はどうだか。




(お、)

脈あり、か?




「…なんか楽しそうだな。」

「そりゃアンタでしょう。
俺の後ろ姿をジロジロ見やがって。」

「てめぇが嫁みたいだったからな。
お前ごと食ってやりてーとか考えてた。」

「キレ顔で言えば下ネタが許されるなんて大間違いですぜ。」

「でも好きだろ、そういうのが。」

「勝手に言ってなせェ。」

くすくす笑う沖田に、土方もつられて笑う。
そして唇や首筋にかぶりつく。
沖田は仕事だとかここは人の家の台所だとかせっかくの料理が冷めるとか、色々と背景の問題はあるが気にしない。

俺もコイツも気分がいい。
理由はそれだけで充分だった。






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