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※沖♀、裏注意







なっ……なんだ…この景色。




「っ……ッ………。」

開いた口が塞がらない。
なので沖田はぐっと自分の手で口を閉め、必死に現状を理解しようとする。

隣に男。
自分は裸。
相手も裸。
一緒の布団で寝ている。
抱き締められたまま寝ている。
となると、つまり、どうやら、そういうことらしい。




「ひ…っじ、かた。」

しかもその相手がむかつく上司コノヤローとか。
マヨマヨしてないと生きていけないうえにたまにナヨナヨしいこの野郎とか。
酔っていたとはいえ、まさか、こんな。
って近い近い近い!




「ん……。」

「!!!!」

頭上から土方の寝言が聞こえて思わず体を強ばらせる。
頭が大混乱してるのに加えて、今目の前の男が起きたら何をどうすればいいのかわからない。

どうしようどうしよう。
沖田は目を合わせないよう俯くと、土方の男らしい体が目に入ってしまう。
起きた時にまず見えたのが、男の胸板に自分の胸が当たっているという場面だった。
そして今は運悪く、その先のものまで見えてしまう隙間がある。
沖田は男の一物を見まいと恐る恐る顔を上げる。
と、男の目と視線がばっちり。




「ッッ…ひ……ひじ…。」

「……はよ。」

びくびくと震える沖田に対し、土方は眠そうにしている。
すると不意に抱き締めている力を強くした。




(な…にすんだ、このっ)

胸が高鳴って仕方ない。
つか高鳴りすぎて痛い。
こんなに密着してたら土方にもバレてしまうではないか。

でも極力顔は見たくないから、そのまま土方に身を委ねる。
くそぅ…何も言えない。
むしろ何も言いたくない。
だがその反面、どこかで期待している自分がいる。
まさか本当に、濃い意味で、一夜を明かしてしまったのか、と。




「あの…土方、さん。」

「ん…?」

「俺…なん、で。」

「…んだよ。」

気になんのか。
そう告げられると、胸の鼓動がいっそう強くなる。
そして土方の足がもぞりと動けば、沖田の足に絡んできて、頭が沸騰しそうだった。




「ゃ……っ」

「さっきは、お前から絡んできたんじゃねぇか。」

恥ずかしがっても遅い。
土方の言葉に、ついにトドメを刺される。
まさかの事態。
俺は酔った勢いでマヨラーと…をしてしまったんだと。




(お、俺の青春が…)

今ここで終わってしまった。
しかもその夜のことに関しては全く覚えていない。

それなのに。
体はどこも悪くないし、気持ちがフワフワとしていることが不思議だった。
今だって体が擦れ合うたびに甘く痺れて、思わず声が出てしまいそうなのだ。
それが嫌じゃ、ない。




「っ……。」

沖田はぎゅっと目をつむって気持ちに蓋をする。
土方に身を委ねてしまったら、己が弱くなってしまう。
それは絶対あってはいけないこと。
隊長として、女だからと油断してはいけないのに。




「総悟…。」

「ぁ…っ」

甘く囁かれて声が出てしまう。
驚いた沖田は手で口を塞いで、これ以上声が出ないようにする。
そして恐る恐る見上げると、驚いた土方の顔があった。

どうやら俺の声に驚いたらしい。
お互いに何をやってんだと思っていたら、土方が腕を解いて体を起こした。




「土方さん…?」

「ったく…俺もまだまだだな。」

「ぇ、」

「何でもねーよ。
ほら、着替えて飯食いに行くぞ。」

近くにあった浴衣を羽織ると、沖田にも浴衣を渡す。
煙草のにおい、ということは土方のものらしい。
土方が背を向けてる間に、沖田はそそくさと着替える。
下着なしの浴衣はどこか気持ち悪いが、仕方ない。
男物の浴衣をズルズルと引きずりながらも、ゆっくりと立ち上がった。

体の痛みは、ない。
高鳴りすぎてキリキリする心臓以外は。




「一度部屋に戻って着替えてこい。」

「い…っ言われなくても、そう、しますっ」

ギクシャクとした空気の中。
どこか落ち着いてる土方を余所に、沖田は障子を開いて部屋を出た。

こういう時だけ大人になるとか。
それにドギマキしてる俺はなんてガキなんだ。
不意打ちのかっこよさなんざマヨに不要ですぜ土方コノヤロー!!!





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