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少し悪戯をしてみた。
酒に酔った未成年、そして服を脱ぎだして俺を誘っては、人の部屋を荒らすだけ荒らして寝てしまったこの馬鹿をどうしょっぴくか。
本当ならむちゃくちゃに抱いてやろうかと思ったのだが。
俺が犯罪者になってしまうのでそこは何とか踏ん張る。
そして思いついたのだ。
同じ布団で抱き合いながら寝てやろう、と。
(成功っちゃ成功だな)
土方は、フーと息を吐いて自室で満足げに笑う。
あれほど動揺させたなら満足だ。
どこでネタばらしをしようか。
「しっかし、」
やばかった。
あの沖田の甘い声。
いや、もっと言えば沖田の肌を見てから危なかった。
酔っぱらいの相手は面倒だと宴会から逃げたのはいい。
しかし沖田が乱れまくった着物、というかほぼ下着姿で部屋に来た時は驚いた。
持っていた湯飲みを握り潰すところだった。
風呂に入る前だったのか何なのか、タオルを持ってフラフラと部屋に入ってきて、挙げ句の果てには下着まで脱ぎ出した時は俺が悲鳴を上げる寸前まで追いつめられた。
それはまずいと、布団に入れ!嫌だ!と短い攻防戦のち、布団にくるまったまま沖田は眠ってしまった。
というのが昨夜の話。
(年下とはいえ女だからな…)
胸、腰、脚。
正直、目のやり場に困った。
自分の布団で全裸の女が寝てるとかどんな生殺しだと何度も何度も何度も何度も葛藤した。
それがどんどんムカついてきて、悪戯を決行したのだ。
せいぜい俺を苦しめた分、盛大に恥ずかしがるがいい、と。
「…………。」
土方は自分の手を見る。
抱き締めた感触はまだ残っており、酒に混じって香る沖田のにおいも鮮明に思い出される。
これでは捨てられた男のようだと肩をすくめた。
「さて、飯でも、」
食いに行くか、と1歩を踏み出した瞬間。
何かに突進された。
かろうじて受け止めた土方は何事だと下を見ると、見覚えのある栗色が目に入った。
これは見覚えがある。
というか見覚えしかない。
「っ…総、」
「…すいやせんでした。」
「は。」
「俺…初めてで、その…どういう感じか、覚えてなくて…。」
「お、おぅ。」
「でも…誘ったのは、俺…だから…っ」
「……………。」
「あ、あんた好みの女に、なって…みせます…!」
「え…。」
胸板に顔を埋めて叫ぶ沖田。
一方の土方は驚きで言葉が出てこなかった。
(あんた好みの女…って)
ちょっと待て。
いや…いやいやいやいや、責任の取り方がおかしいだろ。
もし仮にコイツに誘われて抱いたとしても、それは一夜限りの関係ってスッパリ切ればいい。
なのに何故、そうまでして関係を続けさせようとするのか。
つかコイツ、そんなに責任感あったのか。
「っ………。」
「…………。」
すぐに悪戯のネタばらしをしようかと思ったが、胸ですがりついて震える沖田に何も言えなくなってしまう。
これはマジだ。
悪戯を事実と思いこんでいる。
何かの罠かと思ってしまうが、真っ赤になった耳を見ては何も言えない。
「総悟…。」
「っ…ぅ、」
「ほら、顔上げろ。」
「…嫌です。」
「男に身投げは良くねぇぞ。
襲ってくださいって言ってるようなもんだ。」
「昨晩の俺が…そうだったんでしょう。」
「あー…。」
面倒なことになった。
もう幼い子供のような純粋さは持ち合わせていないと思っていたが、勘違いだったらしい。
今、俺が見事に踏みにじった。
(もうネタばらしは駄目だな…)
そんなことをしたら八つ裂きにされる。
そして周りに知れ渡れば俺が犯罪者として扱われる。
誤解に弁解したとしても、時間はかかるし仕事に影響が出るかもしれない。
ならこのまま嘘を貫くか。
そこまで考えて土方はふと気付く。
これは生意気な小娘を叩き直す良い機会ではないのか、と。
普段から散々足蹴にされ、局長副長とは別枠として権力を握っている女王様。
それを王座から引きずりおろして町娘にしてやろうかと。
そうなれば平和な未来が待っている。
「総悟。」
「っ………。」
「悪かった。」
「……ぇ、」
「お前に誘われたとはいえ、俺にも隙があった。
職場の未成年の部下に手を出したなんざ、侍が廃る。」
「……………。」
「何も覚えてねぇならそれでいい。
俺好みの女になるって話も無理はすんな。」
「ひじ…。」
「俺が羨むような女になれよ、総悟。」
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