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着替えて歩いて今は土方の家。
こじんまりとしたマンションの3階で、初めて来たが悪い意味で生活感のある部屋だと、第一印象はそんなもん。
「食い散らかしと脱ぎ散らかし…男の部屋の定番ですね。」
「あぁ、1日ぶりの我が家だな。」
肩の力を抜いたのか、土方はそのままベッドに横になる。
いつもこんな感じなんだろう。
ケーサツだから何か起きれば家に帰れないのは当たり前で、言わばこの部屋は寝るために帰ってくるだけの空間。
沖田は脱ぎ散らかしをカゴにまとめ、積み重なった皿を洗い始めた。
これぐらいなら何の技もいらない。
(水も電気も使わねぇ部屋なんざ、)
意味がない、そして全く女っ気がない。
大人の男の部屋と言えば、モノトーンで生活感の無いほど片付いてる場所かと思っていたが、それはドラマの中の話らしい。
何だかなぁと思いながらも、沖田は食器を軽く洗って食洗機に入れていく。
こんな便利家電を装備しているのに使っていないとは宝の持ち腐れ。
土方の生活にやれやれと呆れながらも、全ての皿を食洗機の中に収納し、スイッチを押した。
「よし、あとはお任せでさァ。」
これでどのくらいのご褒美がもらえるか。
また少しルンルンになりながら振り返ると、既に夢の中の土方がいた。
「うわぁー…。」
人に家事をやらせて感謝もないとか。
だが、すやすやと眠る土方を見ては怒りも無くなる。
どれほど緊迫した空気にいたのだろう。
今は緊張が解けたのか寝ていてもピクリとも動かないし、わかるのは呼吸をして生きていることだけ。
土方の無防備な姿を見るのは良い。
だが、
(俺の寝る場所が…)
無い、のは困った。
この場合、床で寝るべきかそれとも土方さんの隣で寝るべきか。
迷った挙げ句、床で寝ようとして沖田は身支度を整えようと動き出す。
その時、不意に手首を掴まれた。
「土方さん?」
「…悪ぃ。」
「え?」
「お前は…こっちで寝ろ。」
沖田の思いが伝わったのか、土方は怠そうに体を起こし、沖田にベッドを明け渡す。
そして床に枕や自分のコートを置いて再び寝始めた。
沖田の前にはふかふか、とも言えない使い古したベッド。
これは後々日光に当てて天日干ししないと、そして床の掃除、クローゼットの中の確認と、やることは盛りだくさんだ。
「明日も学校だし、」
一応着替えとカバンは持ってきた。
学校に関して支障はないし、歯も自宅で磨いてきた、でも風呂ぐらいは入りたかったなぁとしみじみ思う。
だがそれも、土方の寝顔を見て仕方ないと片付けた。
「土方さん…。」
「……………。」
「隣、失礼しやす。」
沖田はベッドのシーツをひっぺがして土方の隣に寝転んだ。
そしてお互いの体にシーツをかければもう大丈夫、これで風邪をひくことはない。
疲れきって死んだように寝る土方を見てはクスクスと笑う。
もはや無防備すぎて笑えてしまった。
「土方さん…。」
「…………………。」
「土方ぁ。」
「………………。」
「…まったく、」
よくもまぁ現行犯逮捕した人間の前で寝れるのか。
俺のことは空気としか思ってないのか。
それはそれでムカつく。
(明日は朝風呂しないと…)
そう思いながら、土方の大きな背中を見て目を閉じた。
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