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※高校生パロ注意



「ひーじっかた。」

「あ?」

呼ばれたから振り向いた。
その途中で耳に何かが当たった。
衝撃に慣れてない部分なだけに、じんじんと鈍い痛みが広がる。




「〜〜ってぇな総悟!
いきなり頭突きはねぇだろ!」

「いや…俺も歯に響きましたぜ土方コノヤロー…。」

耳を押さえる土方に対し、沖田は口を手で押さえる。
当たった感触的に額での頭突きかと思ったが、どうやら耳に噛みついてきたらしい。
突然の嗜虐趣味が謎すぎる。




「で、何の用だ。」

「ひっでぇや。
部活が終わったら一緒に帰りましょって言ってたじゃないですか。」

「………あー。」

「これだから脳内マヨネーズは。」

「マヨネーズは関係ねぇ、忘れてただけだ。」

「通年、マヨネーズが彼女ですね。」

「拗ねんなって。
今夜も俺の部屋に来んだろ。」

「マヨネーズ煩いの男の部屋になんか行きません。」

「なんだ、今日はやけにツンツンしてんな。
たまってんのか?」

「今すぐ支度しねぇと置いていきやす。」

「はいはい。」

土方は脱いだユニフォームやシャツをバッグに押し込み、先を歩く沖田に駆け寄る。
ふんわりと香る石鹸のにおい。
最近は部活動帰りの男子たちもにおいに敏感なのか、汗を抑えるスプレーや涼感のローションなど、女子が好むような香りを選ぶらしい。
だからといって、土方は変わらずメンズ用として売っている市販物を使うのだが。

しかし沖田はこの頃、石鹸やら柑橘やらと趣味をコロコロ変えているらしい。
女子がオシャレに目覚めるように、沖田の中でも色々と変わっているようだ。




(女子みてぇだな…)

沖田の後ろを歩けば、せっけんの香りがふんわり。
このにおいは嫌いじゃないし、それを香らせているのが沖田となれば悪くはないので、土方は後ろを歩き続ける。
するとムッとした顔の沖田が振り返ってきて、並んで歩くよう促してきた。
その際も香るせっけん。
泥だらけで遊んでいた昔の面影はあるのに、月日が経てばこんなに変わるものなのか。
時の流れは個人差があるのだと思いながら、土方は沖田の隣を歩く。

家が近いし同級生だからと、小さい頃から沖田と土方はセット扱いされていた。
遊びに行くのも一緒、登校下校も一緒、そしたらまさかの小中高と一緒の学校。
反抗期真っ盛りでぶつかることもあるが、時間が経てば一緒にいる。
我ながら不思議なものだ。




「で、今日のご機嫌はどうだ。」

「さぁ。」

「上は不機嫌、下は?」

「はっ倒しますぜ。」

「冗談。」

「まったく…これだから浮気した下僕を許すってのも難しい話なんですぜ。」

「またお前は。
生まれたときからマヨネーズは俺の習慣だっての。」

「マヨじゃなく呼び出しの件でさァ。」

「呼び出し?」

「クラスの女子に呼び出しされたんでしょう?」

「………………。」

呆れながらも頬を膨らませる沖田。
気にしてないようだが、どこかしらで引っ掛かっている、と顔に書いてある。
黒い笑顔の下に、深い嫉妬心があるのは昔から。
土方はニヤニヤと笑いながら、沖田の言う呼び出しについて思い出す。




「呼び出しね…。」

確かにあった。
まぁ学生同士の呼び出しなんざ喧嘩か告白かの二択、だがどちらも今となっては逆に珍しい描写らしい。
何だ何だとクラスがざわついたから、別クラスの沖田の耳に届いてしまったようだ。
学校は社会より更に狭いから厄介だ。

はてさてその呼び出しに関しては。
告白ではなく、連絡先を交換してほしいとの話だった。
新手のナンパかと思ってしまったのは仕方ない。
そして本音を言えば、今まで顔も知らなかった女子に自分の連絡先を教えるのは気が引けた。
が、告白の重さではなかったことに気が緩んでしまったのか、2つ返事で連絡先を交換してしまったのだ。
そして呼び出しそのものは数分で終わり、放課後になってその女子から連絡が入ったので適当に返事を送信した。
…というのが大まかな流れだが、これを沖田にどう説明するか。




「アレは…そうだな、とりあえず連絡先を教えてくれって言われた。」

「……………。」

「そっからは別に挨拶程度の返事しかしてねぇ。」

「……………。」

「嘘だと思うんなら俺のケータイを確かめろよ。
中を見られても怒りはしねぇ。」

「…………ふーん。」

「あ、どこぞのドS王子の寝顔写真がどっかに保存、」

「滅!!」

「いつから術師になったんだお前!」

土方がケータイをいじろうとすれば、隣の沖田が奪おうと腕を伸ばしてくる。
それを阻止しながら、突っかかってはふざけて格闘する。
夕暮れの住宅街をバタバタと走りながら、家へと向かう。




(これでもう良いな)

実際のところ、たまっているのは土方で。
もっと言えば、沖田のせっけんの香りの下りからだいぶ煽られている。
これは帰宅後にでも1発と考えながら、夕飯はコンビニで調達しようと沖田の腕から逃げていった。



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