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俺と土方さんがこうなったのは、文化祭の悪ふざけの時。
女子から借りた制服をめっさミニスカで履いて土方さんに披露したら、マヨネーズのスイッチを押したらしい。
突然抱き締められたと思ったら、そのまま流し流されの触り合いで絶頂、からのお互いの気持ちを口に出せたのだ。




(俺が下なんざ、無様すぎる)

希望としてはあの時。
俺がドSとしてガンガン攻めたかったのだが、あれよあれよという間に掘られてしまった。
快感的に問題は無かったのだがやはり腑に落ちないところはあるので、今度は女王様としてたっぷりご奉仕してもらおうと試行錯誤中。
今はドSとして女王様設定へ転換しているのだ。




「このにおい。」

「はい?」

「いや、女子みてぇなにおいだな。
何をつけてんだ。」

沖田の首筋に鼻を寄せて、においを確認する。
あまり自分ではわからないが、女子っぽいにおいがするらしい。
いつものように土方の部屋で一通り抱き合った情事後、とろんとふやけた思考で突然そんなことを聞かれても脳がついていけないだろう。




(やった後の話がにおいって、)

本当ならもうちょっと余韻に浸るとか、そういう心配りができないんですかね。
やっぱ野郎にトキメキを求めても無駄か。

沖田は呆れながらも土方の髪をくしゃくしゃと掻く。
それに何だよと土方が反抗すれば、沖田はシーツを被って逃げた。




「総悟。」

「…別に、このにおいはバレンタインで貰ったもんを付けただけですぜ。」

「バレンタイン?」

「そ。
チョコは飽きたから別の物が良いって女子共に言ったら色々くれました。」

「それがこの清涼剤ってわけか。」

「においもんはどうかと思ったんですけどね、捨てるのも勿体ねぇんで。」

「ほう。」

「納得しました?」

「まぁな。」

沖田が一通り説明すると、土方は沖田の体をシーツごと抱き締める。
これには少しだけトキメキ。
何だやればできるじゃないかと、脳内で土方の好感度が上げていく。

そして土方が首筋にすり寄る感触に、沖田は少し身動ぎをして声が出ないようにする。
こんなんで感じてしまっては女王様のメンツは丸潰れ。
この犬を手で転がすぐらいの余裕を持たなければ。




「ぁ、」

そうだ、またアレをやってみよう。
今度は外さない…はず。




「土方さん。」

「ん?」

「そのままで…ちょっと失礼しやす。」

そう言って沖田は振り返り、土方の顔を確認する。
そして狙いを定めながらも目を閉じつつ、ふにっと唇を重ねた。

つもりだった。




(……………やっちまった)

唇が届いたのは、まさかの顎。
ちょっと首の捻りが足りなかったようだと、沖田は渋々身を引く。




「…総悟。」

「……………。」

「もしかしてさっきのやつも、」

「アンタって人は、どうしてこうもタイミングが合わないんだか…。」

「なんか、悪ぃな。」

「勘違いしないでくだせぇ。
俺はキスがしたいんじゃなくて、見返りがほしいだけです。」

「見返りね。」

「俺が施した分、きっちり3倍で返せって予定だったんですぜ。」

それがどうも上手くいかない。
帰りの時も、不意討ちのキスでもして何かしら奢ってもらおうと考えていたのに。
歯が当たったり顎に当たったりと失敗続きだ。




「俺の思い通りにならない奴は、土方さんだけですぜ。」

振り回そうとするのに、実際やったら上手くいかない。
そのモヤモヤが溜まりに溜まった時は、いつもの流れで土方さんに抱かれて全てを出しきる。
射精の快感と心の爽快感は似ているらしい。
でもすぐにモヤモヤは積もり始めるのだ。

そして今の問題は、どうしたら土方から主導権を奪えるのか。
スッキリとした体と頭で考えつつ、土方の手を握って軽い触れ合いも欠かさない。




「一応訂正しておくが、これでも振り回されてる方だぞ。」

「下僕って意味ですぜ。
女子共は尻尾ふってくるのに、土方さんだけパシリにできないんです。」

「…タイミングの問題だな。」

「あ、俺の話を投げやがった。」

「要は嫉妬だ嫉妬。
ここ最近構ってやれなくて悪かったな。」

頭を撫でられ、土方の中で良いように話をまとめる。
自分の中のモヤモヤをここまで簡潔に丸め込まれるとは、やはり腑に落ちない。
だが土方の心が此処にあると確認できたため、沖田は黙って受け入れた。
クラスが違えば土方を見張ることができない。
情が動けばこの人は別のところに行ってしまう、それだけは何としても阻止しないと。
この不安とのお付き合いも、恋愛ってやつなんだろう。




「総悟。」

「はい?」

「今度は外すなよ。」

「……………。」

耳元で囁かれた挑発。
それに沖田はニヤリと笑い、寝返りを打って土方と向かい合った。
でもすぐには狙わず、土方の頬を撫でながら徐々に顔を近付けていく。




「…3倍にして返せるものでも見つかりましたか?」

「今のところ性欲ぐらいだな。」

「明日も朝練ですぜ。
適度にお願いします。」





(あとは楽しむだけ)




18,10/30
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