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イケメンを否定しない土方に、また笑みがこぼれる。
ある程度のボケは聞き流す、この空気も懐かしかった。




「半年ぶりか?」

「そうですねィ。
どっかの誰かさんが海外なんて行っちまったおかげで。」

「まだ怒ってんのかよ。」

「別に。
俺はただ事実を言っただけです。」

「可愛くねーの。」

お前の誕生日前までには帰ってきてやっただろ。
その言葉に、沖田はピクリと反応する。

土方は大学の研修で半年ほど留学をしていた。
そして帰ってきたのは沖田の誕生日前日、つまり七夕の日。
だが実際に会えたのは今日。
日付変更線を向かえ、カレンダーは九日となっている。




「会えなかったのは謝る。
だからいい加減、機嫌を直せ。」

そう言うと、土方は沖田の頭をわしゃわしゃと撫でた。
本当なら日が昇っているうちに顔を出すはずだったが、予定が立て込んで会えなかったのだ。
…という言い訳は沖田には通用しない。





「別に、機嫌は悪くありませんぜ。」

「嘘つけ。
お前は声に出やすいんだよ。」

沖田の機嫌は声を聞けばわかる。
それは至ってシンプルで、絶好調なら高く不機嫌なら低いという具合だ。

そして今の声はやや低め。
定理からいくとこれは不機嫌なのだが、“やや低い”ということは複数の感情が混ざっていることになる。
土方の勘が正しければ、それは“寂しさ”と“安心感”だ。




「だからわざわざ俺に会いに来たんだろ?」

「自信家も大概にしてくだせェ。
俺は天の川を見に来たんですよ。」

「天の川?」

「あのリア充が年に一度逢瀬をする川のことでさァ。」

「いや、それは知ってるが…。
今日は九日のうえに天気は曇りだろ。」

土方は沖田と同じように空を見上げる。
そこは雲に遮られた月がぼんやりと辺りを照らしており、周囲には街頭の明かりしかない。




(ついにここまで電波になったか)

小さい頃からワケのわからないことをする奴だと思っていた。
だがそれは不機嫌なだけで、プリンやケーキなどを買ってあげれば簡単に直った。

それを踏まえた上で、
今回はどうしたものか。




「総悟。」

「何ですか。」

呼ばれた沖田は目線だけ土方に向ける。
すると次の瞬間、土方の顔が視界いっぱいに広がった。
これは何事かと聞こうとしても、唇が塞がれていて何も言えない。




「ン……ん…。」

突然のことに抵抗しようかなと思ったが、久しぶりの感触に目を閉じる。
すると唇を割り込んで舌が入ってきたので、沖田も合わせて絡ませた。

頭の後ろで組んでいた手を土方の首にまわせば、口付けはさらに深くなる。
どんどん激しくなる舌に、体も熱くなって甘い声を洩らした。
そしてある程度絡ませたら舌を引っ込ませて啄むような口付けを繰り返す。
これは土方の癖であり、本当に懐かしい感触であった。




「ふ……ぁ…。」

「総悟…。」

「土方さん…もっと。」

「っ…………。」

甘えた声を出す沖田に、土方の理性がグラリと揺れる。
とろんとした表情は破壊力抜群で、軽く勃ちあがった性器に触れれば、更に甘い声を出した。
お互いにその気なら、もう我慢しなくてもいいだろう。




「続きは俺の部屋でな、織姫様。」

もう絶対帰してやらねぇ。









(優しくしてくだせェよ、彦星様)








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沖田君誕生日おめでとう、ございました(大遅刻)



14,07/23
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