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※沖田♀、裏注意









「……………。」

「……総悟。」

「………………。」

「もう諦めろ。」

「っ………。」

土方の言葉に、沖田の肩が揺れる。
そして泣きはらして真っ赤になった顔を上げた。




「んですかィ。
言いたいことがあるならいつもみたいにバッサリ言えよ土方コノヤロー。
俺はどこぞのマヨラーみたいに気持ちが割り切れるほどクールじゃねェんで。」

「早く仕事しろ。」

「ああ、もう本当にバッサリ言いやしたよ。」

最低、死ね土方。

そう言うと、沖田は再び顔を伏せる。
それどころか畳の上にごろんと寝転がってふてくされてしまった。




(っとにコイツは…)

土方は頭を悩ます。
それもこれも、沖田の失恋が原因である。
最初に聞いたときは下手な嘘をつく、と軽く受け止めていた。
あの総悟が失恋なんてするわけない。
これはまたサボリの口実だ。
そう思っていた。

本人の涙を見るまでは。




「その…何だ。」

「………………。」

「お前は若い。
まだまだチャンスだって山ほどあるだろ。」

「………………。」

「だからもうスッパリ忘れて公務に専念しろ。」

物に執着しない、それがお前のやり方じゃなかったのか。
やはり人斬りと呼ばれようが中身は女なのか。




「仕事場での女は捨てたんだろ。
隊服を着ている今のお前は一番隊隊長なんだよ。」

土方は沖田に辛辣な言葉を浴びせるが、それもこれも沖田を奮い立たせるため。
上司に噛みついてバズーカを構えるいつもの沖田に戻って欲しいのだ。

だが土方の期待とは裏腹に、再び鼻をすする音が聞こえてきた。
これは本当にマズい。




「っ………ぅ、」

「総悟…。」

「ひじ、かたさ……っ」

そう言って、沖田はまた泣き出した。
涙を拭っていたタオルも、もう意味を成していない。
これはどう慰めるべきか。
土方は自分のポケットからハンドタオルを取り出し、沖田の前へ置いた。




(っとに、)

いつもこれだけ素直なら、
少しは可愛げがあるというのに。

土方は沖田の頭を撫でながらしみじみと考えた。
常にバズーカと刀を構えて暴れ回る、武州で出会った時から手の付けられない不良女だった。
しかしSが打たれ弱いのは本当らしい。

俺なんてさんざん女に振られてきたんだぞ。
マヨネーズの何が悪い。
土方は気を利かせて己の体験談を語ろうとしたが、余所は余所うちはうち、と跳ね返されるだけ。
今はこうやって見守るしかない。




「あー…ったく、仕方ねぇ。」

「……?」

「今日の仕事はいいから、もう休め。」

「っ………でも、」

「こんな状態で攘夷浪士に襲われたらどうするんだ。
今のお前じゃ、確実に負ける。」

「………………。」

「今日はおとなしく寝てろ。」

土方は沖田の頭をわしゃわしゃと撫でると、そのまま部屋を出る。
同情する反面、沖田が弱さをさらけ出したことに何故か嬉しくなってしまった。

できる限りのフォローはした。
あとは本人の気持ち次第だ。





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