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毎度の事ながら。
高杉との性交はとてつもない快感を与えられる。
最近じゃそこに心が締め付けられるような感覚が加えられて全てを満たされるのだ。

高杉の舌で濡らされた体。
それに欲情して何度も何度も突かれては射精する。
脱がされた衣類の上での激しい性交に、着物が使い物にならなくなるまで抱かれた。
これではしばらく帰れない。
それを狙ったとしか思えないが、嫌ではないのでしばらく高杉に縛られてやるとする。




(あつい…)

熱烈な性交後。
布団の中で、高杉の腕に閉じ込められている銀時は、目を閉じてお互いの鼓動や温度を感じていた。
雨もシトシトと静かに降っていて、湿気はあるが嫌いではなかった。




(ずっと…このまま、)

こうしていられたら。
もしくは、またすぐにでも会えることができたら。
性交後にこんなに切なくならないのに。

先ほどの熱い交わりとは反対に、今度は逢瀬の終わりを考えさせられてしまう。
毎度の事ながら、この時間は苦手だった。




「おい。」

「っ………。」

「起きてんだろ。」

そんなことを考えてたら、不意に話しかけられた。
肩をビクリと揺らしてしまったため、仕方ないが返事をせざるを得ない。




「んだよ…。」

「顔上げてみろ。」

「や。」

「や、じゃねェよ駄々っ子が。」

高杉の指が銀時の髪に触れる。
ふわふわと撫でては指で梳かれて、頭皮から体にかけて甘い痺れが走った。
昔から髪に触られるのは好きだ。
高杉なら尚更。




「静かなのもいいがな、俺はテメェと喋りてェんだよ。」

だから顔を上げてくれ。
なんて言われたら、離れたくなくなる。
高杉のお望みは、いつものように俺と話すだけなのだが、それがなかなかに難しいのだ。




(苦しいんだよ…ばーか)

今はいつもの俺と違うから。
高杉に満たされて、めっちゃ女々しくなってる野郎だから。
でもこれが普通になってはいけないのだ。
何故なら俺の帰る日常に、高杉がいないから。

尚且つ今は、甘く切なく疼く心を抑えているため、いつものように笑える自信はない。
寂しさに感づかれて宥められたら、それこそ悲しくなって泣いて縋ってしまう。
悔しいが、それほどまで高杉に依存しているのだ。




「……け…。」

「ん?」

「しん…すけ。」

だけどせめて、という配慮で名前を呼んでみる。
すると高杉も応えるように背中を撫でてきた。
この優しさに、少しだけ切なさが混じった。




「あまり儚げな声を出すな、煽られる。」

「…るせぇ。」

「やった後にそんな感じだと気分悪ィからな。
早くいつものテメェに戻れよ。」

「お前こそ何だよ…喋りたいって。
女子じゃあるまいし。」

「時間が限られてる分、テメェを縛りたいだけだ。」

少しだけ背中を押されたと思ったら、高杉と正面から体が密着する。
それだけで興奮してしまうのは男の性か。
互いの脚や性器を触れさせてくるところは策士である。




「どこまでもだよな…俺が嫌なのわかっててやってるんだろ。」

「不覚にも、自分の気持ちを無理やり抑え込もうとする奴に惚れちまったからなァ。
そんな面倒な生き方すんなって話だ。」

「面倒にしたのはどこの誰だよ。
俺だってそうしたくてしたわけじゃねーのに。」

「そんな俺に惚れたんだろうが。」

「意地悪。」

「いいなそれ、もっと言え。」

「ふざけんな。
今のはサービスだコノヤロー。」

「ならとことん焦らして言わせてやるよ。」

「ばーか。
そっちの方にしか頭が行かねーのかよエロ杉。」

「淫乱なテメェを満足させるって解釈しな。」

「うっせ。」

高杉の指が頭から顔に滑る。
顎を撫でられたら口付けがしたいという合図なので、銀時は渋々顔を上げて唇を重ねた。




(お前は変わらねーのな…)

始まりも、性交も、事後も、別れ際も。
高杉は調子を変えないから、安心の裏に少しだけ不安がある。
こんなに固執してるのは俺だけで、高杉は何とも思ってないのか、と。
そう思うと更に寂しくなってしまう。
マズい、顔に出てしまったかもしれない。




「っ…ん。」

「…テメェは本当に色事に関しては不器用だな。」

「な、ッぶ!!」

突然頭をわしゃわしゃと撫でられては胸板に顔を押しつけられる。
それに抵抗して顔を上げると、バッチリ目が合ってしまった。
そしてお馴染みのニヤリとした笑いが出る。




「なァ銀時。」

「っ…んだよ、」

「俺の好きなところ、500個言ってみな。」

「ごッ………は??!!」

「被りは無しだ。
きっちり言えるまで帰さねェからな。」

「いやお前の好きなところって…しかも何で500個?!
ノルマが高すぎて思いつかねーよ!!」

「まず目、だったかな。
あとは声とか髪とか…そういや手も好きだとか言ってたな。」

「いっいいい言ってない!
言ってないから!!
お前の目なんざ普通の人間の目じゃねーし!
髪とかこれ見よがしにストレートだしっ…こ、声なんて…ッッッッ」

「あ、それよりテメェを満足させる唇か。
悪ィ忘れてた。」

「謝るとこ違だろボケェエエエエっ!!!!」

突然の課題、そして解答が地味に当たっている、というかバレていることに銀時は逆上する。
それを治めるように再び唇が重なれば、簡単に流されてしまうのだから、俺の恋心は安い。




「お前…俺で遊んでんだろ。」

「治療の間違いだろ。
どうだ、言えんのか言えねェのか。」

「…………。」

目の前にある緑色の目がこちらを見据えてくる。
じっと見つめ返せば、頬を撫でられ、唇を指でなぞられた。
それに体が震えてしまう。




(また遠回しかよ…)

おそらく高杉の言い分は「まだ帰るな」だろう。
足りないのか、寂しさを醸し出す俺が心配なのか。
どちらにせよ、俺もまだ離れたくない。
だが、




「そういうの…はっきり言って。」

「俺の口説きが不満なのか。」

「回りくどいのは嫌なんだよ、なぁ。」

高杉の首に腕をまわして目を合わせる。
自分から言うのは遠回しだが、言われるのは直球の方が好きなのだ。
答えを急かすように高杉を煽ると、目の奥がゆらゆらと欲望に揺らいだように見えた。

言葉が早く欲しい。
俺を縛るのも苦しめるのも気持ち良くなるのも、全ての始まりは高杉の言葉だから。
その唇から出る口説き、それも俺は好きなんだよ。
…っていうのもバレてんのかな、と思っていると、高杉の唇が動いた。




「…まだ帰さねェ。」

ん。

「そしてこれからも、テメェを離すつもりはねェ。」

うん。

「俺だってテメェを離したくない。
別れ際は引き止めたくてたまらないんだぜ。」

本当に?

「これからも、テメェは俺に愛されてな。」

……ん。




「晋助…。」

「わかったか?」

「…ありがと。」

けど、少し恥ずかしかった。
やっぱすげーよお前。
そういうのも、好き、かもしんない。

そう呟けば、お互いにクスクスと笑って再び重なり合った。












16,05/06
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