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※裏注意








酔ったフリをしてみた。
飲んで飲まれてもう限界だと言えばあの馬鹿はどうするかと。
そしたら予想通り、というか何というか。
幼なじみだし腐れ縁だからとわかりやすい理由をつけて俺の腕を担いで万事屋とやらに帰る。

なんて話は面白くないので、適当に「どこでもいいから休みてェ」と言って予想外であろう要求をぶつけた。
所謂、お手並み拝見という場面。
すると銀時はぶつぶつ文句を言いながらも迷わず歩き始めたので、俺も千鳥足の演技をしながら付いていくことにした。














  をわかっていながら















が、連れてきた場所が場所なだけに呆れてしまう。




(遊郭を選ぶか…普通)

色々な意味で頭が痛くなる。
「知り合いの知り合いがやってる所だから安全」なんて、後から付けたような文句にやれやれと肩を落としてしまう。
布団に寝かされながら呆れる高杉に、銀時は介抱しようと動き回る。
真面目なのか馬鹿なのかよくわからないが下心が九分九厘だというのだけはわかった。
大人になって少しは嘘がつけるかと思ったが、期待はずれだったようだ。

そわそわして落ち着かない銀時に、高杉は酔った演技を続ける。
すると銀時は、高杉の額や頬に手を当てて意識の確認をし始めた。




「ぅおー…い。」

「………………。」

「…マジで大丈夫?」

「…んだよ。」

「だってお前がこんなに潰れるなんて初めて見たんだけど。
悪い酒にでも当たった?」

「………知るか。」

「ふー…ん。」

銀時が顔色を伺ってくるのがわかる。
だがやけに近いので、うっすらと目を開けると弾かれたように距離をおいた。




「っ…なんだよ、起きんの?」

「いや、」

「びっくりしたなーもう。」

「初々しいこった…。」

「あ?
なんか言った?」

「…さぁな。」

「あ、そう…。」

高杉の言葉にいちいち反応する。
その姿を見るのが昔から面白かった。
斬り合いでは揺るがなかった瞳も、今は高杉の仕草や言葉で色々と変化する。
本当に子供の頃から変わらない。




(別に男色の趣味はねェが…)

銀時を振り回すのは面白い。
小さい頃からずっと、こんな感じなのだ。
俺に触れるだけで顔が赤くなったり、いざこちらから触ろうとすれば逃げたり。
それを見てるのがとても愉快だった。

だがしかし。
どれだけ可愛いと思っても告白はしていない。
恋仲でもない。
こいつを手に入れてあれこれやらせるのも良いかと思ったが、恋仲手前の関係で寸止めしては振り回してきた。
それもこれも、見てて飽きないコイツが悪い。




(詰めが甘ェこった…)

先程は口付けでもしようかと思っていたのだろう。
その誠意に答え、触れられるもんなら触れてみろと、布団の上で無防備に寝転がって銀時の反応を伺った。
すると何を考えたか。
銀時の手が高杉の帯に伸び、そのまましゅるりと引かれた。
ついに意を決したか、そう思った高杉はすかさず銀時を呼び止める。




「……………銀時。」

「………っ」

「何してんだ。」

「べ…つに。
ね、寝苦しそうだったから。」

「そうかい…。」

その場しのぎの下手な嘘。
それがどれだけ自分を苦しめているのか、何度言っても理解しない。

慌てた銀時は高杉の着物に手をかけて少しだけ捲る。
すると胸板と腹筋が露わになり、銀時は息を飲んでそのまましばらく動けなくなってしまった。




(自分でやった事だろ)

高杉は銀時の手を振り払うように寝返りを打つ。
すると銀時が傷付いたような顔をするので、高杉はクツクツと心の中で笑った。

もっと苛めてやりたいが、今日はこの辺でいいだろう。




「たか、」

「迷惑…かけたな。」

「ぇ…?」

「テメェも、もう帰れ。」

疲れただろ。
そう言えば、銀時は返事に困る。
最後まであたふたするのだから、本当に可愛いやつだと思えてしまう。
すると足音がぺたぺたと遠ざかり、襖の開ける音、閉まる音が聞こえた。




(往生際がいいこった…)

さすがに今日は苛めすぎたかもしれない。
苛めすぎると先生の鉄槌が下ったのは良い思い出だと笑いつつ、この後はどうするかと考える。

頭はシャッキリしてる。
このまま休んでもいいし、女を呼んで酒を飲むのも良い。
どうしたものかと高杉が考えていると、不意に水音が聞こえてきた。




「……………。」

前言撤回。
往生際はとんでもなく悪かった。




「…ったく、」

高杉はやれやれと思いながらニヤリと笑う。
どれだけ可愛い反応をされても理性を飛ばさず、何年も踏ん張ってきたというのに。
それを今日、銀時がぶち壊そうとしている。

風呂に入ってる音。
それに混じって時々洩れる銀時の声は、自慰の音。
そんなものを聞かされたら遠慮なく食ってしまうのが男の性。
高杉はもしもの事態を想定し、どう美味しく頂こうか酒の入った頭で考えた。






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