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※銀♀注意
本気で嫌だと思ったのだ。
コイツに泣かされた女たちを、今まで散々見てきたら。
応急処置と、
「い……や、だ。」
否定しても体は逃げられない。
それもそのはず。
高杉によって壁に押し付けられているから。
だから精一杯の抵抗という名の涙が落ちる。
(なんで…俺なんだよ、)
お前なら誰だって捕まえられるだろ。
昔みたいに誰彼構わず引っかければいい。
銀時は脱がそうとしてくる高杉の手を掴んだ。
手の甲に力の限り爪を立てて、まるで動物のように全身で威嚇する。
「嫌……ほんとに、」
「…………。」
「も、やめ…。」
堪えきれずまた涙が頬を伝う。
ここまで否定するのは理由がある。
俺は高杉とそんな関係ではないのと、高杉に目をつけられた女がどうなったかを知っていたから。
(人の気持ちを踏みにじりやがって…)
確かに高杉と長く一緒にいて、そういう目で見ていた時期もあった。
しかしそのタイミングで、高杉は余所で女を作る。
そして捨てる。
昔はそれの繰り返し。
ヅラや辰馬からは、それは遊郭で情報収集とか、味方になる輩の接待とか、色々と理由を説明された。
しかし高杉の用が済めばスッパリと終わるような関係にならない。
本気にした女が全てを捨ててまで高杉の元へ来ては必死に追い求める。
だが高杉は相手もせず、逃げ出した女は泣きながら連れて行かれて、その後の事は考えたくもない。
何人も何人も、時には悲鳴のような愛の叫び声だって聞こえた。
そこは人間としての情が移ってしまう。
と同時に思ったのだ。
コイツに口説かれた時は、何か利用価値があるんだと。
「使い捨てになるぐらいなら、」
拾われない方がマシだ。
ガリっと強く爪を立てて引っ掻く。
高杉の手の甲の皮が剥けようと、痕が残ろうと、血が出ようと構わない。
すると押し付けられていた体が軽くなり、銀時は即座に身構える。
「泣くほど、かよ。」
「ッ…当たり前だ!」
「何をそんなに嫌がるんだテメェは。」
「利益のことしか頭に無ぇお前が、俺に何の用だよ!」
ギッと睨みつけると、至って冷静な高杉と目が合う。
突然路地裏に引きずり込まれ、壁に押し付けられてから、初めて視線がぶつかった。
それに鼓動が高鳴ったのは嬉しさではなく緊張だ。
高杉の返事次第では木刀で仕掛けようと考えているから。
すると高杉は煙管を持ち、煙をくゆらせた。
「不眠解消。」
「ふッ………………………、………は?!」
淡々と言う高杉に、銀時は一瞬だけ思考が止まった。
ふみんって、あの不眠?
「う、嘘だろ!
現役犯罪者が不眠って…いやわからなくはないけど!!」
「うるせェな。
事実なんだから仕方ねェだろ。」
「てめぇ…俺を抱き枕にしようってか。」
「昔はテメェらと一緒に寝てたからなァ。
またあの感じになりゃ寝れると思ったんだよ。」
「…………………。」
「どうだ、納得したか?」
あんぐりと開いた口が閉じない。
予想外な答えだったので、これは何か暗に意味しているのではないかと高杉の腹を探ってしまう。
「本気で拒まれたからにゃ俺も無理に触らねェよ。
ただテメェの寝床を貸せ。」
高杉は煙管を持ち直し、ビシッと銀時に向ける。
つまり、昔みたいに寝るってことは、布団を並べて寝るということだ。
同じ部屋だが別々の布団。
なら…問題ないかもしれない。
「え、でも…いや、お前…本当に高杉?」
「偽物がどこにいるってんだ。」
「…………。」
「ころふぞ。」
恐る恐る、高杉の頬を引っ張ってみた。
すると眉間にしわが寄り、総督の殺気が出たので本物だと実感する。
「何で、寝れてねーの?」
「知らねェ。
こうでもなきゃ好き好んでテメェに会いに行かねェよ。」
「あ、お前それすっげー失礼だかんな。
帰れ。」
「ここでテメェを強姦しても良いんだぜ俺は。」
「あーはいはいすみませんでした布団なら貸すから早く寝て早く帰れ犯罪者。」
「言われなくともだ、阿婆擦れ。」
銀時は呆れながらも、万事屋へ高杉を案内する。
仕方ない。
本当に仕方ないが、俺の純潔を奪われるよりマシだ。
ただ、それだけだが。
(少し、面倒なことになったな…)
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