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万事屋に着いて、
とりあえず神楽と定春に事情を説明。
そして了承。
すると神楽が「私はヅラ役で間に寝るヨ」と言ってくれたのだ。

普通に寝るとは言え、高杉の隣だけは抵抗があった。
と思ったら神楽様のお言葉。
神だと思った。
俺より年下の女子を盾にするなんて最低だが、本当に神だと思った。
神楽が男なら惚れている。








(……………で、)

何だこの状況。
横から高杉、神楽、俺、そして頭上に定春。
不思議すぎて俺が寝れなくなってしまった。




「……………。」

「……スー……。」

「…クー……………。」

「……………、」

俺以外…普通に寝てやがる。
いや、高杉だけ不確かだが、それでもみんな寝返りの回数が少ないし。
俺だけゴロゴロと動いている。

マジかよー、何でだよー、とゴロゴロしては色々と考えてしまう。
実は高杉の不眠症は嘘で、本当は俺の息の根を止めようとしてきたんじゃないか、とか。
万事屋へ潜入捜査で来やがったんじゃないか、とか。
でもそれでコイツに何の利益があるんだと解決できずにモヤモヤする。




(高杉の腹が読めればな…)

昔から何を考えているのかよくわからない奴だ。
そう思っていると、不意に布団が擦れる音がする。
目をこらして様子を伺うと、神楽の奥、どうやら高杉が起きたらしい。




「……………。」

「……………。」

即、寝たふりをする。
しばらくして、コンコンと何かを打つ音と、馴染み深いにおいがした。
お得意の煙管が登場したらしい。

こんな月も出ていないような夜中に、何の風情があるんだ。
疑問に思いつつ、やはり不眠は本当なのかとまた考える。
そして同時に、頭上の大きい気配が動いた。
これは定春。
畳を踏み、高杉に近寄ってくしゃみをした。
どうやら煙を吸ったらしい。




「……………。」

畳の踏む音。
襖が開く音。
大きい気配が動く音。
襖が閉まる音。
静かな部屋にそれだけ響いて、再び静かな部屋となった。




(定春も一緒だな…)

銀時はゆっくり起き上がり、襖を薄く開けて様子を伺った。
暗くてぼんやりとしか確認できないが、煙管を吸う高杉の隣に定春がいるらしい。

何で定春がそこまで懐いてんだ、とか。
やっぱ獣は獣と仲がいいのか、とか。
悪代官のイメージしか無かった高杉の別の顔を見てしまった。




「…夢か。」

うん、そうだ。
これは夢だ。
まさかあの高杉が不眠で、定春がこんなに懐くわけがない。
寝て起きれば何て事のない普通の朝がくる。




(ばかみてぇ…)

女の事情など気にせず、自分の効率の良い道具として扱ってきた奴なのに。
こういう人間じみたところを見てしまうと、だめな気がする。
高杉に情が移ったらダメなのだ。
あとは良いように利用されるだけ。

銀時は布団に潜り込んで目を閉じる。
これは夢だと願いながら、例え現実であっても高杉の不眠が早く治ることを祈る。
別に下心があるわけじゃない。
早く治れば関わることも無くなるからだ。




(また厄介事が増えた…)

確かに万事屋だが。
これ以上何かに巻き込まれるなら…そうだ、
万事屋をやめて…何か、別 の 名前 に …



































ーーーー-----……‥‥‥




音がする。
2つ。
トタトタ歩く音と、ペタペタ踏む音。




「んン…………。」

寝ぼけた頭でもなんとなくわかる。
これは神楽と定春だろう。
新八の声がしないということは、まだ早朝らしい。
もう一眠りするかと布団を身体にかけ直した瞬間、ふと頭が冴えた。

あれ、高杉の気配が無い。




「っ………、」

銀時は起き上がって横を見る。
敷かれたまま、誰もいない布団が隣に2枚。
布団に近づいて鼻を寄せると、確かに高杉の煙管のにおいがした。

どうやらアレは夢では無かったらしい。
と同時に、もう出ていったのかとキョトンとしてしまう。
夜中に居間で煙管をくゆらせて、あれから本当に眠れたのかは知らない。




「あっ起きたアルか。」

「ッッッ!!!!」

高杉の布団に鼻を寄せたままの銀時は、襖が開けられたと同時に起きあがる。
こんなところを見られてはただの変質者ではないか。
ドギマギしながら神楽に挨拶をして何て声をかけようか迷う。




「あ、えっと…た、高杉は?」

「朝早くに行ったアルヨ。」

「ふー…ん、え、何で知ってんの?」

「トイレに起きたらちょうど出て行くタイミングだったネ。
でもあんまり寝れなかったみたいアル。」

「あぁ…そう。」

「だからまた寝たくなったら来るよう言っといたヨ。」

「な!!!!」

何でそんな余計なことを!!!
と、銀時が言おうとしたら先に「良い金ヅル持ってるアルな」と告げられて納得した。

あぁそうだ。
あんな奴でも財政力はある。
あいつが万事屋に来たのは不眠解消、解決できれば報酬を貰うのが世の筋だ。




「精一杯働けヨ。」

「………………えぇー。」

でも嫌なものは嫌なのだ。






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