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孤独を悲しむ姫よ
一秒ごとに色を変えて














お互いの声を押し殺せばシンと静まり返る部屋の中。
しかし唇を重ねると、持て余した熱が吐息と共にこぼれる。




「ン………しん、すけ。」

「銀時…。」

雲の一つない眩しい夜。
月明かりでお互いの顔を見れば、途端に現れる安堵感。
戦争の音もなければ香りもしない。
そんな空間で、高杉と銀時は静かにお互いの愛を確かめ合っていた。




(また、傷が…)

腰を振れば白い体がビクビクと仰け反る。
その際、浮き彫りになる銀時の傷に高杉は苛々を押さえることができなかった。

新しいもの、布で止血されているもの、もうすぐ完治するもの、性交では銀時の体の全てが見える。
いくら強くても無理をすれば誰でも怪我をする。
それが女であれば尚更。
日に日に重なる傷は、“護りきれなかった痕”として高杉の胸に深く突き刺さっていた。




「ぁ……ん…っ」

「また、増えたな…。」

「…か、すぎ……っ」

「無茶ばかりしやがって。」

白い体に重苦しく巻き付く布。
それを苦しそうに見た高杉は、一ヶ所一ヶ所丁寧に唇を寄せていく。
それどころか、包帯をずらし、まだ完治していない傷口を直接舐め上げた。




「あぁ…ン………晋助…しん、すけぇ…。」

快楽のあまり、銀時は俺の名を連呼する。
これが俺の傷を癒すクスリ。
心地よくて、たまらない。




(疲れは…取れねぇか)

戦況は不利。
明日もまたお互いそれぞれの場所で戦う。
だが日を追うごとに増える傷を見て、それだけは何としても避けたかった。
例え盟友の作戦だとしても。
最期は銀時と共にありたい。




「ぁ……ん…はぁ。」

「お前は女だ。
それをもっと…自覚しろ。」

「ン……っ」

「明日は、俺と一緒に来い。」

お前を突っ走らせるとロクなことが起きねェ。

高杉はそう言って銀時の腰を掴んで律動を速める。
待ち望んでいた快感に銀時も素直に受け入れた。
悦楽した表情が、腰を打ち付ける度に色を変える。
それがこの上なく愛おしかった。




「ぁっあっ…でも、ヅラの作戦…ッ」

「俺の命令が聞けねェのか。
それと…今は他の野郎の名前を出すなっ」

高杉は銀時の唇を塞ぐ。
律動と口付けで呼吸がままならない状態に、銀時は涙を流して必死に受け止めていた。
すると不意に銀時が濡れた目で何かを訴えてくる。




(…馬鹿が)

どこか不安定で虚ろな赤い目。
つまりこれは、心配。

いつまで続くかわからない戦場。
我が見ぬ夢を追いかけて散っていった星達。
どうか覚めぬよう、高杉は己の胸に銀時の手を取って当てた。
そして願う。




「いずれ人は死ぬ。」

「ん……っ」

「人の一生なんざ、長ぇか短ぇかの違いだろ。」

「……………。」

「だが俺は…お前を置いて死ぬつもりはねぇ。」

「晋、助……っ」

「だからお前も誓え。
これ以上、傷を増やさないと。」

そして今は無駄な感情は捨てて全て俺に委ねろ。
高杉は銀時と指を絡ませると、律動を再開して性交に没頭した。




「んんッ…あっぁっ
しんすけッしんすけぇっ」

高杉の名前を呼びながら体を震わす銀時。
奥ばかり攻めてやれば、ひっきりなしに声を上げて限界が近いことを告げる。

それを聞いた高杉は、固く繋がれた銀時の手を己の頬に添えた。




「しんすけ…っ」

「っ……銀時、」

戦場は違えど。
体に傷が増えようと。
その瞳と声、奥底に眠る想いは変わらない。
人はそれを“愛”と呼ぶのだろうが、俺たちには似合わない。

だが、




「ずっと…俺の瞳に従ってくれ。」

こんな俺でもお前を安心させてやりたい。
それが“愛”なんだろ。




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