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※銀時♀、裏注意
『変わっていく自分のことを愛した』の続編










寂しさ
どんな小さな傷にも涙の理由














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身震いで目が覚めた。
布団を肩まで掛けているはずなのに、何故か体の芯まで冷たい。
それはここ何年も感じたことのない最悪な目覚めだった。




「……………。」

銀時はゆっくりと目を開ける。
視界はぼやけているが、次第に焦点が合ってくる。
するとまず最初に、見覚えのある色が見えた。

この色は確か…。




「ぁ………。」

「起きたか。」

煙管を咥えて煙をくゆらす。
見覚えのある色は目の前の男が好んで着ている着物。
その着物からチラつく胸板や首もとに見とれていると、不意に先程までの情事を思い出した。

ああそうか、
俺、高杉を巻き込んで体を…。




「…ごめ…なさい。」

銀時は寝転がり、高杉に背を向けて小さく謝罪をした。
聞こえてもいい聞こえなくてもいい。
むしろ聞こえない方がいい。
そう思いながら、銀時は自分の体を抱き締めた。

本当はこんなはずではなかった。
心の内をさらけ出す気はなかったはずなのに。
昔のように高杉に心を見透かされ、懐かしさと餓えのあまり調子が狂ってしまった。




(馬鹿だなぁ…俺)

嫌われたくなかったのに。
見事に関係をぶっ壊したんだ。




「…ごめん…なさ、」

「………………。」

銀時は言葉の続く限り謝る。
すると不意に、背中に大きな熱を感じた。
とても温かくて、何故だか安心する熱。
それが高杉の手とわかったのは、背中を撫でられてしばらくしてからだった。




「冷てぇな。」

「……………。」

「昔は人を低体温だの不健康だの馬鹿にしやがった奴が、情けねェ。」

「っ…………。」

「茶でも入れて飲んでこい。
隣の部屋に全て揃えてある。」

話はそれからだ。
そう告げる高杉の言葉に、銀時は何故か泣きそうになった。
いつもなら「ふざけんな」「テメーが飲みたいだけだろ」ぐらい反抗する。
だが、寝起きの銀時を責めないその対応に再び調子が狂ってしまう。




(ごめん、なさい)

銀時は心の中でも謝り、ゆっくりと起き上がった。
そして裸のまま立ち上がろうとした時、不意に羽織を肩から掛けられた。

誰の羽織か、なんて考えなくても色とにおいでわかる。
銀時は高杉と目を合わせず、軽く頭を下げて部屋の襖を開けた。
そして隅に置かれている湯呑みや急須を見つけると、茶葉を急須に入れ、ポットのお湯を注いだ。




「……………。」

ふわりと漂う茶葉の香り。
しばらくして2つの湯呑みにお茶を注ぎ、フーフーと冷ましながら銀時はお茶を飲んだ。




(あつい…)

だけど、体は冷たい。

まだ冷たい。
何でこんなに冷たい?




「………………。」

銀時は湯呑みを盆の上に置き、目を閉じた。
そして深呼吸をする。
するとお茶に混じって、羽織から高杉と煙のにおいがした。

それにひどく安心している。
ということは、本当に惚れているのだろう。
本命というのがよくわからなかったが、理解できた気がした。
だが、それも時間が経てば一気に冷めてしまう。




(嫌なもんだよな…)

愛も、夢も、永遠も、希望も。
満たされるのは一時的で、更にもっと優れたものが欲しくなるのだ。




「………………。」

「話す気になったみてぇだな。」

「……どうだろ。」

「そこまできたんなら上出来だ。」

銀時の隣に高杉が座る。
そして湯呑みを持ち、銀時が入れたお茶を飲んだ。




「それで、お前は俺に何を望む。」

「…………何も。」

「ほう…。」

「ただ、高杉が繋ぎになるのは嫌だと思った。」

「繋ぎだ?」

「ん…。」





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