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銀時の言葉に、高杉は眉を寄せる。
そしてしばらく考えた後、盆の上に湯呑みを置いた。
「寂しさと虚しさ、か。」
「!」
高杉の発言に、銀時は驚いて顔を上げる。
すると高杉に顎を掴まれ、自然な流れで唇を重ねた。
舌を絡ませようとしない。
ただ触れ合うだけの口付け。
その際、少しだけ体に熱が籠もった気がした。
「たか…すぎ、」
「お前の考えなんざすぐわかる。」
「んン………。」
「…戦時中と同じ顔をしやがって。」
唇を合わせ、そして離れた瞬間に高杉が喋る。
その繰り返しで銀時は何も言えず、ただ高杉に任せて口付けをしていた。
すると銀時の腰が揺れ始める。
裸体が羽織と擦れるたび敏感に反応し、全てが快感へと変わった。
「ン……たか、」
「お前はいつもそうだな、銀時。」
何かを埋めるために敵を殺し、寂しさのあまり色んな奴と関係を持つ。
全ては虚しさからきたもの。
埋めようとしても満足しない己の欲求を、がむしゃらに満たそうともがいている。
「だから俺に縋ったんだろ。
お前の埋め合わせの繋ぎとして。」
「ぁ……あ、」
「惚れてるか惚れてないかの話じゃねぇ。
埋まるか埋まらないかの話ってわけだ。」
「っ……ちが、」
「だがその様子じゃ、俺も役不足ってことだな。」
畳み掛けるように告げる高杉に、銀時は顔を離して首を横に振る。
すると高杉は銀時の羽織を脱がし、再び全裸にさせた。
「俺を惚れさせたきゃ、
いつもの悪態と減らず口で甘えてみせろ。」
捨てられた犬みてぇな顔は二度と見せるな。
高杉は銀時の頬を撫でる。
すると目尻から一滴、涙が零れ落ちた。
それを高杉が己の指の腹で受け止める。
(同情、か…)
胸が少しだけチクりと痛む。
それが寂しさなのか悔しさなのか、よくわからない。
いつものようにしていろと言われたが今はそんな余裕はなかった。
「高杉……。」
「満足なんざ諦めろ。」
「っ…………。」
「強がんな。」
「強がってなんか…。」
「これはお前のせいじゃねぇ。」
高杉は銀時の腕を掴んで引き寄せる。
その力に反抗することなく、銀時はそのままギュッと高杉の着物に縋りついた。
人間の欲は元から埋まらない。
そんなこと、わかってる。
孤独な日々、絡んだ糸、過去の悲しみ、それらに別れを告げても再び同じ事を繰り返す。
だけどわかったところで止まらなかった。
それを高杉は責めない。
人間として当たり前のことだと諭された。
(成長しねーなぁ…)
こうして高杉に諭されるのは何回目か。
村塾で先生に叱られた時、戦争中に色んな隊士と体の関係を持った時、
その度に何故か銀時の心境を理解し支えていたのが高杉だった。
これが高杉に惚れた最大の理由でもある。
心臓がドクンと大きく高鳴る。
そして次第に胸の中がじんわりと熱くなる。
呼吸をするたびに熱くなった血液が巡り、体温が戻ってきた気がした。
「お前、歳いくつだよ…。」
「大差ねぇだろ。」
「なんで…こんな冷静なんだよ。」
「どっかの馬鹿が落ち着つきのねぇ女だからだ。」
「高杉…。」
「あ?」
「ごめん…。」
ありがと。
小さな声でそう呟くと、高杉に強く抱き締められる。
裸なのに体が熱くなっていくのを感じた。
「でも…高杉のことは本気、だから。」
昔から惚れていた。
ずっと前から欲しかった。
そこらへんの男みたいに、繋ぎになるのは嫌だと思ったのは本当。
でも、それも欲に負けていずれは他のものに走ってしまうのだろう。
この矛盾が本当に、嫌。
銀時は高杉の首筋にチュッと吸い付く。
それはあまりにも軽かったため、痕には残らなかった。
それで良いのかもしれない。
「本気、か。」
「……………。」
「こんな餓えたアバズレに付き合うほど、俺は寛大じゃねぇが…。」
「!」
高杉は銀時の体を持ち上げ、再び布団の上に寝かせた。
そしてその体に高杉が跨がる。
「俺も他人を言えた義理じゃねぇからな。」
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