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※大人設定注意




この兄貴は。
過去に媚薬を盛られた経緯から、耐性を作ろうと地道に体に慣らしていったらしい。
そのおかげか並大抵の薬では効かなくなったし、代わりにスイッチが入れば年中発情期にもなれる。
戦うためとはいえ、ここまでやるのかと。
いつになれば落ち着くのかと。
それでも今は、そんな喧嘩馬鹿のお相手をしなければならない。




「ねぇ神威。」

「んん……。」

「くっつきすぎ。
そんなに甘えてどしたネ。」

「…神楽の母性をくすぐる、でしょ?」

「ばーか。
私はこれからおやつしに行くから邪魔アル。」

「そんなの頼めばいいじゃん。
なんなら俺が神楽ごと食べるし。」

「食うってコイツ…。」

「あぁそうだ。
神楽が大好きな俺のもんにもつけるとか?
前やった女体盛りは嫌じゃなかったんでしょ。」

「まぁたそうやって遊ぼうとする…。
食べ物を粗末にしたらバチが当たるネ。」

「ちゃんと食べたから粗末にしてないって。」

「だからって、」

「神楽。」

後ろから抱きついてきた神威に呼ばれ、顔上げればさらりと口付けを交わす。
なんの前触れなく重なる唇。
だが私はそんな簡単な女じゃない。




「へぇ、昔は1発KOだったのに。」

「マンネリってやつヨ。
諦めろ馬鹿兄貴。」

神楽は神威の腕から抜け出して離れようとする。
抵抗したら逆効果かと思いきや、案外すんなり腕はほどけた。




(まったく何なんだか、)

意地でも離さないってわけじゃないってこと?
ならその硬くなったブツは自分でシコればいい。
キスで腰抜かしてた昔の私とは違う。




「………………。」

服や髪を整えた神楽は1歩、2歩と前へ進む。
しかし、ふと考えて足を止めた。

まぁでも、おかずぐらいなら買ってきてやるか。
おかずってアレ。
普通に、食べる方の、おかず。
夕飯のおかず。
わざわざ「家庭的なものが食べたい」って呼び出すとか私は家政婦じゃない。
でも報酬はもらったし?
まずは自分のご褒美からでも良い。
うんうん、めっちゃ奮発してやろう。




「じゃあ夕飯は何が、」

良いか。
そう聞く前に壁ドンされて顎クイされて再び唇が重なった。
どえらい手際の良さだ。




「ん……。」

「……すぐ逃げれば、見逃してあげたのにね。」

「なにそれ…。」

「神楽もその気なんでしょ?」

ならばと唇が重なる。
角度を変えては唇に吸い付く。




(やば……)

これはやばい。
このまま舌を入れたらぜったい気持ち良くなるやつ。
なのにしてこないのは押してもダメなら引いてみろってやつ?
あぁもう。




「ん……ぅ、」

「神楽…。」

「んン……。」

低音で呼ぶ声に、体がゾクゾクする。
この感覚は神威でしか感じられない甘い痺れ。
キスだけで、なんて思っていた少し前の自分に怒られてしまうかもしれない。

口付けも触れ合いも、色恋は神威だけ。
だから会ってなければそれだけ乾いてしまうもの。
自分の体を触って慰めようとも、唇から伝わる感触や体温は、神威がいなければ感じられない。
唇を重ねる度に、自分の腕は神威の首に近寄る。




「ん……はぅ、」

もう、お手上げが。




「ん……か、むい、」

「舌を出しなよ、神楽。」

「ふ…ぁ、」

素直に舌を出せば、神威の舌に絡め取られる。
待ち望んだ快楽に心も震える。
神威の首に腕をまわし、思う存分舌を絡ませてはため息がこぼれた。




(ばぁか…)

私をその気にさせやがった。
相乗効果で神威がかっこよく見えるし。
こんなにしたら…最後までやりたくなる。




「んっ…ふ…ぁ、ぅ…。」

「は…、」

「はぁ……はぁ……。」

「…いい具合に火照ったかな。」

「ぁ…っ」

神威の指が、服を脱がしていく。
最後に下着姿までなると 、体をなぞってゆっくり興奮させるよう攻めていく。
その指は、昔の喧嘩野郎の指ではない。
女の触り方を理解した、大人の指。




「感じたでしょ?」

「ん………。」

ゆっくりとした神威の指に合わせて、腰を揺らしてしまう。
耳元で囁かれては、否定することができない。

神威で濡れた。
神威を感じたい。
神威が欲しい。

ハァハァとため息がこぼれる。
いつものように、もっとがっつり触ってほしいのに。
さらりさらりと触れてくるだけで、これではお仕置きのよう。




「ん………かむい…。」

「食べちゃってもいい?」

「……………。」

ここまでやっておいて何を今更。
神威の目は勝利を確信しているし、もう我慢はできない。
神楽自ら口付けて、舌を絡ませ合った。
そして熱いと悶える部分に指が入り、ついに甘美な刺激が始まった。




(変わったなぁ…)

顔も体つきも。
喧嘩ばかりのオスの面しかなかった昔より、今は色んな顔を持ち合わせている。
加減を覚えて遊ぶようになった顔、傷を負えば楽しく狂喜に笑う顔、何か秘密があれば愛想笑いを張り付けた顔、妹を抱くときに本性が見える顔、射精の一瞬に見せる快楽に歪む顔、やすらぎの時のみ見せる幼さが残る寝顔。




「神楽……。」

「…………。」

神楽を伺うように目を見てくる。
視線の先に自分がいるのか、そして奥には更なる疑問と迷いがある。
神楽は神威の手を取って、男の言い分を受け入れた。




「いいよ神威…早くするアル。」

そう答えれば、途端に盛ったオスのように神楽の体に貪りつく。
発情のスイッチが入ったらしい。
今はこれでいいと、神楽は神威の表情を見ながら性交を受け入れた。

神威のすべてを見てきた私は、少なからず神威の手助けになればと思って行動している。
でもそれが神威に知られると「お前は俺が守るから」「余計なことはしなくていい」の一点張り。
兄貴の顔になると弱みを見せなくなる悪い癖は、今も健在。
そして困ったときは色恋を楽しむフリをして言葉を濁す。
この無理して余裕のある感じを装ってるのがムカついてしょうがない。

ならばお望み通り。
よそ見をしないよう、何も考えないよう、私が快楽の底に落としてやるまで。



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