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※大学生×高校生パロ注意





大人はいつもズルい。
夜の街で遊んでも何も言われない。
朝帰りしても何も責められない。
どれだけ心配しても「ごめんね。」の一言で終わる。

そんな大人がズルくて、羨ましかった。



























「夜中に遊びたい?」

「うん。」

神楽は兄の部屋でクッションを抱きながらお願いをする。
それは“禁止されていること”や”いけないこと“を頼むときの仕草である。

神威は突然やってきた妹の頼みに、少しだけ考える。
そしていつもの笑顔で返した。




「ダメ。」

「何でアルか。」

「だって神楽はまだ高校生だし補導されちゃうじゃん。」

「女は化粧で何歳にでも化けられるアル。」

「そんなことしたら家族会議になるから。
怒られんの俺だから。」

「大丈夫、バレなきゃいい話ヨ。」

「完全犯罪できないくせによく言うよ。」

神威はやれやれと思いながら着替え始める。
今晩は地元の知り合いたちとの飲み会。
いつものことだが、朝帰りになっても良いようなるべく楽な服を選んでいた。




(まぁ仕方ないか)

規制があれば破りたい。
行ってはいけないと言われると更に行きたくなる。
思春期にありがちな考えは、神威自身も経験していた。

ただ一つ違うのは神威が男、神楽が女だということ。
男なんて中学生で飲酒しているし、素行の悪い輩は夜中に出歩くのも厭わない。
神威も夜中に散歩をしてはそこらにいる不良グループと抗争していた。
それらをふまえて、神楽の気持ちもわらなくはない。
だが兄として、ましてや男として許すわけにもいかなかった。




「神楽は女の子なんだから。
喧嘩が強くても夜中に出歩いたら何が起こるかわからないでしょ。」

今まで何回もそう忠告してきた。
なのに妹は聞く耳を持たず、兄の背中を追いかけては見失っていた。
そして道の真ん中で泣いているのを、いつも兄が探しに行かなければならない。
そんな思い出を未だに覚えている。




「もう探しになんて行かないよ。」

「……………。」

「高校生なんだし、あとは自己責任ってことで。」

神威は適当に選んだシャツを着て、上からコートを羽織った。
そして淡々と持ち物の確認をし始める。

朝帰りになっても場所は近くの居酒屋。
なら財布と携帯を持って行けば心配ないだろう。
そう考えていると、突然後頭部にボフッと何かが当たって床に落ちた。
横目で見れば神楽が抱き締めていたクッションが落ちており、今度は何だと神威が振り向こうとしたその瞬間、不意にギュッと抱きしめられた。




「…神楽?」

「………………。」

「おーい。」

「……アル。」

「ん?」

「っ…い、今に見てるアル!
私にだって完全犯罪なんてできるヨ!!」

そう言って、神楽は兄の部屋から逃げるように出て行こうとした。
しかし部屋の扉を開けた瞬間、一度だけ振り向いて「本気だからネ!」と指をさして神威に訴える。
そして扉がバタンと閉まった。




「今に見てろって…。」

悪い予感はする。
というか悪い予感しかしない。

部屋に残された神威は、どうしたものかと悩む。
だが今は神楽を説得するだけの時間は無く、参ったなぁと複雑に笑った。




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