1/7









※銀時♀、高校生パロ注意











「っはぁ、はぁ…。」

銀時は荒い息を整えようと胸に手を当てる。
幸い、駆け込んだ車両には乗っている人が少なく、息を荒くしても目立つことはなかった。

よし、乗ってしまえばこっちのもんだ。




「っと、」

途端、車両がグラリと揺れる。
電車が動き始めたことに気付かなかった銀時は、咄嗟に近くの手すりに掴まった。




(つ、疲れた…)

いつものように学校を終えて下校する時間。
本来ならば家に帰りたい病の銀時には嬉しい時間だが、
駅に着いた直後に電車が発車するという最悪なタイミングに、入学してからずっと悩まされていた。
歩く速度が遅いのか、それとも学校の嫌がらせか。
故に銀時は今まで持ったことがない腕時計を身につけ、時間を確認しながら下校するのが日課となっている。

そして今日は学校が長引いてしまったので猛ダッシュ。
駆け込み乗車はいけない、なんて言ってられない。
これは早く帰りたいがため時間との戦いなのだ。
そのへんは見逃して欲しい。




(スカートは)

挟まって、ない。




「よし。」

銀時は後ろを見て自分の身なりを確認する。
駆け込み乗車をした因果か、一度スカートが扉に挟まって身動きがとれないことがあった。
しかもそれは朝だったので、周囲の人からクスクスと笑われてしまった。
苦い思い出である。




「………………。」

銀時は車内を見渡す。
さて、どこに座ろうかなと思っていた矢先。




(え………)

あれは、まさか…。




「………………。」

「………………。」

銀時はその人物にゆっくりと近付いていく。
だが本人は脚を組んだまま眠っているため、銀時には気付いていないようだ。

学ランに長い前髪、そして眼帯。
どこをどう見てもそれはご近所に住んでいる同級生の姿だった。




(うーわーやっぱ高杉だ)

頭の先から長い脚まで、銀時はまじまじと見つめる。

高杉とは昔からよく遊んでいた。
近所に住んでいる同い年、それだけで何となく一緒にいたのだ。
だが何かあればすぐ張り合うような仲で、最終的にはいつも銀時が泣かされていた。
…というのは思い出話で、高校生になった今では関わることは少なくなった。
今回も会うのは数ヶ月ぶりである。




「っとに、」

立派な不良になりやがって。
昔から成績が良いからって何でも許されると思うなよコノヤロー。




(相変わらずなヤローだよ、本当)

それでも、高杉の変わらない姿に安心している自分がいる。
鬱陶しいだの煩いだの抵抗していたが、何だかんだ一緒にいた。
小馬鹿にしながらも、女である銀時を助けてくれたこともある。
それに惹かれ、将来は高杉と結婚するなどを短冊に書いたこともあった。
だがそれも思い出話。

銀時はフゥとため息を吐いて、高杉の隣の席に目をやった。




「…お邪魔します。」

銀時は小声で断り、高杉の隣に座る。
席はどこも空いているというのにわざわざ隣を選ぶのは不自然すぎるが、それもこれも久々の再会に心が浮かれていたのが原因。
普段は反応しない乙女心が疼いた気がした。







[*前へ] [次へ#]



戻る

←TOPへ