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どう振り払っても追いすがってくる。
昼夜を問わずに憑き纏うデイドリーム。
終わりの兆しもない。
「おいコラ。」
「でッ」
頭に衝撃が走る。
怠そうに顔を上げると眉間にシワを寄せた教師が目の前に立っていた。
「何だ…先生か……。」
「何だ、じゃねぇ。
人が授業してんのに夢の中たァ良い度胸してんじゃねぇか。」
「だって臨時なんだろ。
どうせ自習…ッだぁっっ!!」
「監督付きの自習だ。
早く終わらせねぇと居残りだぜ。」
「へーい…。」
せっかく『アイツ』も出てこない夢だったのに。
銀時はブツブツと愚痴を呟きながらも、叩かれた頭を撫でて目の前の課題と向き合う。
しかし3秒も経たないうちにペンが止まった。
「…高杉先生。」
「質問1回につきタバコ1箱。」
最初の問題から躓く銀時を、高杉は軽くあしらう。
しかも求めるのがリアルな金額なので尚更性格が悪い。
しかし何だかんだ言いながらも教えてくれるので、よくわからないものだと思う。
銀時が渋れば、ため息を吐きながらも順を追って説明してくれる。
解説を聞いてふむふむと納得する一方、銀時は横目で高杉を盗み見た。
(性格だけだもんな…)
授業は上手いし、顔立ちも良い。
性格がひねくれているだけで、人生は難なく進んでいそうだった。
「おい。」
「!」
「目ェ開けたまま意識飛ばすな。」
「ぁ、う…うん。」
額を指で突かれて我に返る。
まさか先生の顔を見てましたなんて言えないので、銀時は首を縦に振って何でもないような素振りで返した。
そして再び解説が始まる。
銀時は緊張しながらもペンを進めて問題を解いていった。
「…ここまでやりゃ、頭がカラなテメェでもできるだろ。」
一通り解説した後、高杉は先ほど殴った銀時の頭を撫でる。
まるで犬のような扱いだが、悪くない。
そんな顔を見た高杉はフッと笑って銀時の前から立ち去ろうとした。
その瞬間、誰かの背中と高杉が重なる。
(また…)
あの、既視感。
銀時が気づいた時には、離れていく手を無意識に掴んだ。
「あ………。」
「何だ、まだ質問でもあんのか。」
「う、うん。
あと少しだけ…。」
銀時は再び高杉の言うことに素直に頷き、ゆっくりと手を離した。
前にもこんな事があったと、記憶にはない感覚に翻弄されては我に返る。
クラスを見渡しても特に変わったことはない。
これは何なのだ、
そう思った瞬間チャイムが鳴り響いた。
「悪ぃが、質問ならこの後だ。」
そう言うと高杉はスタスタと離れていく。
前の教卓に出されたプリントを揃え、生徒と会話しながら教室を出ていった。
(何だろうな…)
あの笑った口元。
前々から思っていたが、夢の中の『アイツ』とよく似ている。
それに気付いてからは自ら接触するようになった。
そして今日。
勉強は御免だが、いい機会かもしれない。
(抱かれたくはねーけど…)
何かが変わる、かもしれない。
今回の指導でせめて既視感は無くなって欲しい、今の銀時はそれだけだった。
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