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帰宅して早々、とんでもない光景が広がっていた。




「えー………っと…?」

何コレ。
銀時は目を懲らしたり瞼を擦ったり頭を壁にぶつけたりしては目の前のアリエナイ光景を確認する。

これは夢だってか夢であってほしいと願う。
が、何度やってみても痛いので、どうやらこれが現実のようだ。




「何してんだ銀時。」

「何してるアルか銀ちゃん。」

同時に声をかけられた銀時は再びその光景を目にする。

そこには今日来るかもしれないと言っていた男と、定春の散歩に行ったはずの大食い娘がいる。
その二人が出くわさないよう時間をズラしたはずだが、見事に鉢合わせている。
しかも。
いつも子供を相手しないはずの高杉の膝に、いつも高杉にガンとばしていたはずの神楽が寝転がっているのだ。
その姿はまるで休日の親子さながら。
そして定春は高杉の近くで昼寝をしている。




「何で……え?…二人とも、」

聞きたいことがありすぎて銀時の頭はパンク寸前だった。
すると甘える神楽に満更でもなさそうな高杉が口を開いた。




「そこで会ったんだよ。」

「あ………はぁ、」

「白い犬が俺に気付いてなァ。
そしたら後ろにコイツもいた。」

「いつも銀ちゃんに煙吹きかけてるから定春がにおいを覚えたアル。
あとコイツじゃなくて神楽ネ!」

「あぁ悪かったな、神楽。」

「……………。」

高杉は膝の上にある頭を撫でた。
すると神楽は嬉しそうに笑うので、高杉も口角を上げていた。




(……………………え)

そんだけ?
いや、そんだけでこんなに?
仲良く?
なるもん?

……………………………………………え???




「神楽、何か美味いもんでも奢ってもらったのか。」

「それはこれからアル。」

「じゃ、じゃあ好きな服とか女子的なものを買ってもらったとか!」

「あ、それもいいネ!」

目を輝かせる神楽は、高杉の手を握ったり離したりしてあれこれ語り出す。
一方の高杉も好きなようにやらせている。

どうやら餌で釣ったわけではないらしい。
それが更に銀時を迷宮入りさせる。




(だって特別なイベントとかは…)

無かったはず。
そう思ってふと見上げたカレンダーに、4/1の文字が目に入った。

…これは、もしや。




「なら俺は夕飯の買い出しにでも行ってくらァ。」

「あ、アタシも!」

高杉の言葉に神楽はガバッと起き上がる。
そして高杉の後を追って外へと出かけていった。
外から「定春とお留守番よろしくネー!」という元気な声がした気がするが、あまり耳に入ってこなかった。




「…………………。」

な、なーん…だ……。




「あー…そういう。」

呼び止めることなくその場に立ち尽くしていた銀時は、やっとのことで我に返る。
そして一気に脱力し、頭を掻いてため息を吐いた。

ったく、俺としたことが。




(エイプリルフール、か)

何だよアイツら。
そうか、そうですか。
エイプリルフールですか。
便乗してこの俺を騙そうってか。
はっ、ベタな芝居やりやがって馬鹿どもめ。
無駄に頭使わせやがったなコノヤロー。
俺はてっきり神楽と高杉が、




「…………………。」

銀時はその場に座って深呼吸をした。
そして寝ている定春の頭を優しく撫でる。
確かに、エイプリルフールに騙されたのは苛つく。
だがそれ以上に神楽に高杉を奪われたんじゃないかと不安になったのが悔しい。

猫みたいに甘える神楽。
それに嬉しそうに応える高杉。
同時に、いつも高杉に言われている言葉が嫌でも流れてくる。
思い出すほど不思議で不可解で不愉快だった。




(素直になれ…か)

どっちにしろ俺に対しての嫌味かよ。




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