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そして数日たったある日。
仕事もないのでパチンコ帰りに再び吉原へ寄った。
別にあの煙の出所が気になるわけではない。
いつものようにひのわ茶屋に立ち寄り、茶を飲みながら日輪との会話を楽しんだ。
そこに寺子屋帰りの晴太、見回りの月詠も加わりいつもの面子で喋る。
「あーあ。
俺も花魁と遊びてーな。」
「二億じゃ。」
「いやいやツッキー、俺は可愛くて上品で女らしい花魁のこと言ってんの。
クナイ常備のアバズレ太夫を指名して何の価値が…ッギャァアアア!!!」
「別にわっちだと言っておらぬわ。
救世主様は救世主様らしく大盤振る舞いしろと言ったまで。」
「だぁーかぁーらぁー!!
金がねーから困ってんだろうが!
救世主様専用の割引券でも寄越せや死神太夫!」
「あ、じゃあコレはどうだい?
大和撫子で細やかなサービスが売りだよ。」
「懐からブス専クラブの割引券を出す大和撫子なんて聞いたことねーよ!
渡す野郎を間違えてんだろ!
俺は若くてピチピチした可愛い子がいいの!
一夜の夢を見たいの!!」
「そうだね。
ココならきっと銀さんの望むようなサービスもしてくれるよ。」
「あの、日輪さん?
話聞いてましたか?」
「じゃあ銀さんの好みはどんな感じなの?
ついでに初体験とかも教えて!」
「ガキにゃ刺激が強すぎる。
十年経ったら教えてやるよ。」
「銀さんのけちー!」
銀時は持っていた団子を晴太の口に放り込み、湯飲みの茶を一気に飲む。
「ったく…何で俺の周りは人の話を聞かねー奴ばかりなんだ。」
だが嫌いではない。
皆は自分を貫き通している、つまり良い意味での頑固さが出ているのだ。
万事屋や真選組、柳生に吉原と、馴染みの攘夷志士たち。
皆が皆で個々の信念を持っているだけ。
勿論、あいつも。
「どうしたんだい銀さん。
頭の具合でも悪いのかい?」
「母ちゃんの言う通りだよ。
なんかさっきっから沈んでてさ、いつもの破天荒ぶりがないね。」
「確かに…人一倍鈍感な奴が繊細になっておる。
これは槍が降るぞ日輪。」
「テメェらの中の俺が最悪なイメージだってことだけは理解したわ。
覚えとけよ。」
じゃあな、と言って銀時は立ち上がる。
そして頭を掻きながら夕暮れの橙色に染まる街を歩き出した。
「………………。」
遊廓特有の灯りが周辺を照らす。
そして次第に花魁の声が響いた。
女の甘ったるく誘う声は嫌いではないが、積極的な女は好きではない。
確か奴もそう言っていた気がする。
なのにわざわざ遊廓に来ているのは何故か。
ちょっと疑問だったが、探していたにおいは何処にもいなかった。
「ったく……。」
俺が万事屋で待ってる間に遊廓たぁ、ずいぶんと舐められたモンだ。
あんな商売女より俺のテクニックの方が上って自信あんのに。
「………………。」
銀時はピタリと足を止める。
例の煙のにおいが、一瞬ふわりと感じたような気がしたからだ。
そして何気なくそのまま顔を上げる。
「な…っ」
鮮やかな装飾の遊郭。
賑わう見世。
そして開かれた窓から街を見下ろす男。
さすがの銀時も驚いた。
まさかとは思ったが、本当にいるとは思わなかった。
黒髪に包帯、派手な着流し。
間違いない。
「高杉…。」
男は驚いた顔の銀時を見て面白そうに笑う。
そして持っていた煙管をクイっと動かし、店に入ってくるよう促した。
「マジかよ。」
こりゃ夜遊び決定だな。
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