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そして翌日。
銀時はいつものように過ごしていた。
朝は先生の話を聞きながら睡眠学習、および剣術の稽古。
だが高杉が視界に入る度に勝手に胸が高鳴るので、睡眠学習も稽古も何一つ集中できなかった。
昨日はあの後、顔を赤らめた高杉がダッシュで帰っていくのを見送った。
何かマズいことでもやってしまったのか、そんな不安と快感が混ざったまま今日を迎え今に至る。
「……………。」
昼間の青空から夕焼けに変わりつつある頃。
銀時は桂と一緒に掃除をし、庭が見える廊下で休んでいた。
「…ふぁーあ。」
ねみぃ…。
夕方になっても暖かい南風が吹くこの季節。
もうこのまま寝てしまおうか、そう思った時、後ろから近づく気配を感じた。
小さく静かに畳を踏む音。
銀時は胸がドキドキし、思わず全身に力をこめる。
「オイ。」
「お、おぉ高杉!
遅かったじゃねーか。」
「ちょっとな。
先生と話してた。」
「へ…へぇ。」
「ほら、行くぞ。」
不意に差し出された手。
銀時はそれを握って立ち上がると、手を繋いだまま歩き出した。
(遅すぎだ…馬鹿杉)
女を待たせるとかサイテー。
もう帰ろうかと思ったんだぞ。
ってのは嘘だけど。
いつものように悪態を晒そうにも、高杉の手から伝わる熱に口をつぐんでしまう。
「先生にも親にも言ったから。
今日は俺の家に泊まっていけ。」
「………………。」
「…銀時?」
「えっああ、そうするそうする!」
いざ喋ろうとするとこの調子。
ガラにもなく緊張している銀時に、「ちゃんと聞いとけ馬鹿」と高杉は告げた。
そんな空気の中、2人は草履をはいて外に出る。
すると先ほど廊下で感じていた南風がサラサラと全身を撫でて心地よかった。
そして高杉の手が引っ張ってくるので、銀時は付いていく。
「……………。」
「……………。」
ザッザッと土を踏む音だけが周囲に響く。
居心地は悪くないが、やはり少し間が空くのはちょっと寂しい。
銀時は握った手をゆるめ、指を絡ませるよう握り直した。
いわゆる恋人繋ぎだ。
すると高杉が何も言わず握り返してくれたので、銀時は思わず頬が緩む。
「あ…。」
「なんだよ。」
前を歩く高杉を見ると視線がぶつかった。
どうやら高杉も後ろが気になり、横目で銀時を観察していたらしい。
全く気付かなかったが、お互いがお互いを気にしていた事に銀時はニマっと笑ってみせる。
「べっつにー。」
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