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※攘夷時代、裏注意






夏の夜は短い。
夕刻になっても外はまだ明るいし、鳥が鳴いている。
いつもならば三味線を片手に夏の情緒を楽しむところだが、今はそこまで心に余裕はない。




「チッ…。」

何で俺があの馬鹿天パを呼びに行かなきゃならねぇんだ。

それは数分前。
銀時を呼んできてくれと桂に頼まれた時だった。
最初は拒否していた高杉だが、そんな高杉の態度に桂の小言(という名の説教)が始まってしまったので、仕方なく銀時を呼びに出た。
というより逃げ出したのだ。
そして今に至る。




「……………。」

所々穴だらけの廊下を歩く。
戦争という緊張と、夏の暑さで苛々しているというのに。
これはまた遊郭にでも行って遊ばなければ。
そう思いながら銀時の部屋に着いた高杉は、襖を開けようとした。

その時。




『あぁんッ』

突然、甲高い声が聞こえた。
高杉は襖にかけた手が固まり、その場に立ち尽くす。




『白夜叉…っ』

『んッ…あ、あっ
そこ、だめぇ………っ』

荒い息遣いと水音。
声の一つは白夜叉と連呼し、もう一つはひたすら喘いでいる。
どちらも高ぶっていて、外にいる高杉には気付いていないようだった。




(意外だな)

好きな奴ができても自ら動かず、ウジウジと落ち着きがなくなって、最終的には鳶に油揚げ。
とにかく銀時は不器用だった。
今でもそういうところは成長しないままだと思っていたが、いつの間にか大人の階段を上っていたらしい。
しかも男相手に、だ。
まぁ戦時中のこの場では周りに男しかいないので、仕方ないと言えば仕方ない。

ふぅとため息を吐いた高杉は、どのタイミングで襖を開けようか考える。
生憎、こちらは虫の居所が悪い。
なのでここはあえて空気を読まない瞬間を狙うことにした。




「白、夜叉…ッッ」

「あぁあんッ
も、ぁっ‥イくッ…あぁ!」

「オイ銀時。」

「なッッ?!
あ、やっあぁ!!
あぁあああーーーッッ!!」

突然呼ばれた声に驚いた銀時は、首だけ高杉に向ける。
絶頂の手前なら二人とも驚いて不完全燃焼になるだろうと、高杉は寸前を狙って襖を開けた。
しかし、どうやら少し遅かったらしい。
銀時は高杉に顔を向けたまま絶頂してしまった。




「ぁ…あぁ……、」

銀時は体を震わせて射精を続ける。
二人は互いの性器をすり合わせていただけで、入れてはない。
はだけた着物から見える銀時の白い肌に、二人分の精液が散らばった。




「第三者に見られながらいくなんざ、とんだ淫乱だな。」

「た…かす……ッ」

「どうした。
白夜叉ともあろう者が、声が出なくなるほど悦かったのか?」

「…………っ」

銀時は火照った頬を更に赤くさせる。
プルプルと体を震わせて、悔しそうにキッと高杉を睨み付けた。

へぇ…コイツ、言葉攻めに弱いのか。




「そ、総督…これはっ」

「いや構わねぇよ。
銀時、ヅラが呼んでる。
さっさと着替えて行ってこい。」

高杉はそう言うと、二人に背を向けて部屋を後にした。
頼まれ事は済んだ。
しかし高杉は未だに現状を整理できずにいる。




「……………………。」

恐らくあの馬鹿のことだ。
人に同情し、求められたら、足を開くことも厭わないだろう。
だがそれ以上に予想外だったのは、男によがる銀時の姿だ。

絶頂のときに見せた顔。
いつもより高い声。
アイツはそっちの才能もあるのではないかと、高杉は考えてしまった。




「…俺もだいぶ自棄がまわったな。」

あんなので興奮しちまうとは。







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