君に贈る白い薔薇
君に会えて良かった
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「私、辻くんのこと好きなんだ」
そう言ってくれた彼女に対して俺がとった行動は視線を逸らすことだった。
嫌だったわけじゃない。凄く嬉しかった。ただ女性が少し苦手なのと照れくさいのとでどうすればいいのか分からず咄嗟にとった行動だった。
それがどれだけ相手を傷つけることになるか……考える余裕もなかった。
もう一度視線を戻した時、彼女の顔を見て事の重大さを知った。
自分が声を出すよりも早くこの場から立ち去ることを選ばなかった彼女はとてもいい人だったのだろう。
俺はその時の彼女の顔を忘れることはない。
慌てて返事をした時の彼女の顔も忘れることはない。
自分もずっと前から好きだった。
大事にしようと思った。
いつまでも一緒にいたいと願った。
そして迎えるホワイトデー。
二人が付き合いだして初めて過ごす日。
今だって目を合わせることままならない自分に彼女は合わせてくれている。
それが嬉しくて同時に自分の不甲斐なさを感じる。
「そんなことないよ?新之助くんが優しくて真面目なの知ってるもん」
そうやってくすくす笑って受け入れてくれるアキ。
本当、敵わないなあ。
……別にそれでもいいのだけど。
「アキさん」
「なあに?」
手にしているのは五本の白い薔薇の花束。
花を贈るのは初めてで似合わないだろうなと考えたりもしたけど、行動するのは君のため。
今日くらい似合わないことをしても許されるはずだ。……と思うんだ。
自分をこうも動かすことができるのは世界中探しても君だけだと思うから――……。
「ありがとう」
君に出会えて良かった――。
20180327
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