ボーダー級エイプリルフール
迅さんの言うことは信じない


「お、アキちゃんいいところに!」

アキは玉狛の迅に遭遇した。

戦う
話す
->逃げる

アキは逃げ出した。



――はずだった。

「アキちゃん。いきなり逃げるとか酷くない」
「酷くない。寧ろこの手はナンデスカー」
「アキちゃんが逃げる未来が視えたから。
何で逃げるのかなー俺、悲しい」
「迅さん、つまんない嘘つくね」
「遊真の真似?似てないからやめた方がいいよ」
「じゃあ、この手を放し…」
「どうせ玉狛に用なんでしょ?
目的地は同じなんだから一緒に行こうか」

まさかの強制連行。
いや、目的地は同じだからしょうがないのだろうが
すんなりと受け止めることができないのは相手が迅だからか…
アキは今までを思い出す。
それはボーダーに入隊してからというもの行事があれば
お呼びでないのにふらーっとやってきてはかき回す。
それは彼のサイドエフェクトのせいか性格のせいなのかと言われれば両方である。
この性格にしてこのサイドエフェクト。
最悪の組み合わせである。
勿論、被害を受けたのはアキだけではなく、
ほとんどのものが迅にちょっかいを出されている。
…とアキは思っている。
全てを把握していないので断言できないのが残念なところだが。
それでもこの日、彼のサイドエフェクトを駆使しての嘘と本当のコラボレーションに振り回されて疲れる思いをしてきているアキだ。
今年は同じ轍は踏まないと堅く誓っている。

「あそうそうアキちゃん、この後なんだけど」
「わーわー聞きたくない」
自分の耳を塞ぎながら騒ぐアキ。
言葉通りに迅の言葉は聞きたくないらしい。
頑なに拒むアキに流石の迅も堪える。
「俺まだ何も言ってないんだけど」
「言わなくていい。今日という今日は何を聞いてもろくなことがない。
今まで何回私を嵌めれば気が済むんだ」
「嵌めるなんて人聞きが悪い。
ただアキちゃんが俺の予知を信じなかったり、
信じて無理やり回避しようとして失敗したり、
俺のせいじゃないよね?」
「迅さんのその嘘っぽい行動が悪い」
「嘘っぽいなんて、俺みたいな実力派エリートがそんな嘘何て…。
例えばアキちゃんがこの後、京介と夫婦漫才して、
木虎に詰め寄られたり、冬島さんにこき使われて出水にハチの巣にされたりとか――」
「わーわーわ、何言っているのか聞こえないー!」

迅のエイプリルフールは大体そう。
リアルに起こりそうなことを言って嘘ついたり、
嘘っぽいことを言うがちゃんとサイドエフェクトで視えた未来を言ったりで、はっきりいって読めない。
だからアキの中で、一年にこの日だけは迅の言葉を信じないようにしている…いや、正確には聞かないようにしている。
その方が何があっても迅に踊らされた感がしなくて済むのである。

「あ、ついたね」
迅が手を放したのにちょっとほっとする。
「そういえば迅さん玉狛に住んでたのでは?」
「うん、俺今日朝帰り」
「……」
「嫌だな〜そんな冷たい目で見て、一体何想像したの?」
「うひゃひゃい」
アキのほっぺを引っ張り上げる迅の手をバシバシと叩く。

もうこの男ダメだ。放っておこうと、
アキの中で決定した。


20150403


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