現在と未来
彼女の物語

しおりを挟む


異世界人……近界民と呼ばれる者に攫われた少女は近界民の世界で生きることを強いられた。
強くなることを強いられた。
選択することを強いられた。
自分の覚悟を見せろと強いられた。

少女は剣を握る。
剣で倒せるものを知る。
剣で守れるものを知る。
強くなれば迷う数が減る。
強くなれば選べるものが増える。
それは少女の中で小さな救いだった。
そう思わせるくらい世界は少女に優しくはなかった。
何度泣いたか分からない。
何度唇を噛みしめたか分からない。
何を諦めたのか覚えていない。
そんな中でも捨てられないものはあった。
何があっても手放したくないものを少女は手にする。
例え口にすることはなくなっても想いは胸にしまい込んで……
そのまま少女は成長した。

少女にとって世界は優しくなかったのかもしれない。
だけど成長した彼女は自分に都合がいい世界なんてないことを知っている。
彼女は思う。
あの少女が歩んだ世界は厳しかった。でもそれはある意味優しかったのかもしれないと――。

弱くて何も掴むことができなかった少女が、
何かを掴み取る強さを持つことができた。

彼女がそれを自覚したのは元の世界に戻ってきてからだ。

世界が優しくないのは相変わらず。
だけどそんなことは彼女からしてみればどうでもいいことだった。

彼女は仲間を得る。
彼女は自分の居場所を得る。

彼女はこの世界で生きることの意味を見つけている。
何を大切にすべきか……答えは出ている。
あとはそれを守れば良かった。

彼女は剣を取る。

誰に強いられたわけでもない。
自分の意志で選んだ。
誰になんと言われても構わない。

ここから先は彼女の物語だ――。


20170829


| | 次 >>