記憶力がちょっとあれな人が忘れないよう走り書きしてるメモ帳です。雑感を呟いたり覚え書きで補足したり五月蝿いです


▼ 00:44 うーん 呟き

鍵にクッキー集め、ぽつぽつ書きたい欲はあっても書けない言葉が出てこない纏まらない、圧倒的読書不足。言葉難しい
全然たどり着けなくて、プロットだけたまってゆきます。もどかしい。
追記に肉付けできてない引き司書の番外編まとめを置いておきます。司書要素高め。本編では司書が全く出ず、番外では司書ばかりでるこの感じ。空白の期間が明かないから違和感しかない。はやく何とかしたいですね


奇特なことに司書が体調を崩したらしい。ある一件でも全くもって丈夫だったあの司書が。普段通りに出勤した司書の助手を勤めた男が、ほんのわずかな違和感を覚えて問い詰め、熱を測らせたことで発覚した。司書がいなければ有碍書の浄化は芳しくない、万が一はイコールで司書の首に繋がっている。そういうわけで、絶対安静とのことだ。文士は皆心配したり怒ったりめずらしがったり休暇を喜んだりといろいろだったが、司書を気遣って二言みこと見舞ったあとにはそっとすることになった。騒がしく見舞いにいっても良くないだろう、寝ている頃に顔でも見に行けばいい。そう思ってタバコを一服二服、頃合いをみてゆけば魘されている司書がいた。
……あつい、汗のたまを浮かべて、苦悶に満ちた表情をする司書のなんと珍しいことか。可哀想にと起こしてやれば、息荒く、涙を浮かんだ目をして、せんせい、とつぶやく。なんとか息を整えて、水でもやろうと、なにかほしいものはあるかい、と聞けば……本を、と言った。どんな。……机の右の、一番上の引き出しに、入っている……。そうかい。いまだに判然としない司書が、こんな頼み事をするのも珍しくて。持ってきてやろうと思ったのだ。
陽にやけて黄ばみ擦りきれて、古い紙の匂いがする本だった、知っている本だった。何故なら中に己の歌も、弟子のうたも、同僚の話も載っている。
落ち着いたのか、使い走りにしたことを謝って、受け取って撫でる手は優しかった。いつだか、あまり皆さんの本には詳しくないのです、申し訳なさそうに謝った司書が、こんなものを持っていたなんて。おおよそ似つかわしくない。
歌えるのかい。少しだけでしたら。司書は歌おうとして、声がかすれて不格好になるし、音程もおかしい。下手くそだね、そういってつないだ北原の唄に、懐かしそうにまどろんだ司書の寝顔は存外こどもらしかった。


司書の私室は常に一定の湿度、温度を保たれている。どれだけ蝉の鳴く暑い夏でも、どれだけ雪の降り積もる冬でも。しかしそれ以外の部屋はそうではないし、例えば今みたいに洗濯物を干している時なんかは日の照る場所である。長く伸びた黒髪をひとつにまとめあげて晒された細い首に、汗のたまが浮かんでいるのを見ながら、暑いなぁと呟くように言った。
「そうですね」、珍しく不快そうな顔をしていた司書が、参ったように笑って同意する。
「なんだ、夏は嫌いか?」
「あついのは苦手です。ひに、やかれるので」
「おまえさん、生っ白いもんなぁ」
こうして洗濯物を干したり、温室に植物の世話をしたりと外に出ていないわけではないが、基本的にはインドア派、空調の整った部屋に引きこもってばかりの司書である。太陽の光を受けてもさんざめくような白さをもった肌は、赤くもくろくもならない。一種の不気味さを伴う女だ。
「……そろそろなかに戻るか」
「はい」
振り向いた瞳は相も変わらず、氷のような冷たさを内包している。


「蝉の声がうるさいなぁ」
図書館で呟かれた声は、司書のもとへ届く。徳田が不快そうに言ったのだ。
「そうですね」
独り言のつもりだったのだろう、思わぬ同意を得て、驚いたように司書を見る。その顔に微笑みながら、司書は雑談に興じる。
「実は、虫の声を認識できる人間と、そうでない人間がいるのですよ」
「はぁ? つまり、耳が聞こえないとか、そういうこと?」
「いいえ。聞こえていても、虫の声と認識できず、雑音と同じようにとらえるんです。例えばひぐらし、例えば鈴虫、たとえばキリギリス……そういう虫の声を認識できるのは、日本語に親しんだもの特有の現象なんだそうです」
「へぇ……。君、ずいぶん楽しそうだね」
「そう見えますか。楽しい、……いえ、嬉しい、ですかね」懐かしむように司書は目をすがめ、助手に笑いかけた。
「暑いですし、打ち水でもしましょうか」


その日の助手は堀だった。業務の切りのいいところを見計らって、司書と己に紅茶をいれた。ティーポットとカップ二つに、シュガーボウルとクリームジャグをトレーに乗せて運ぶ。司書は放っておけば飲まず食わずでずっと仕事をしている人だったが、適度に休息も必要だ。助手の仕事のメインはいかに司書を休ませるかである。幸いにして、あの一件以来、勤務時間中の助手からの申し入れを断ることは少なくなった。
「司書さんは、お砂糖、いれますか」
「そうですね、二杯お願いします」
「わかりました。どうぞ、ここにおいておきますね」
「ありがとうございます」
資料の邪魔にならないようにおいたカップを受け取って、報告書を読みながら二口飲み、報告書をまとめる司書を見ながら、助手は紅茶を飲む。司書はだいたい砂糖は二杯、ミルクはいれない。そして同じテーブルについて飲んだことはない。いつか飲める日が来るだろうか。そう思いながら香りを楽しんだ一杯目を終えて、二杯目、今はともに楽しめないならせめて、司書の飲む紅茶と同じにしようと思い立つ。シュガーボウルから二匙、さらさらとカップに注いで一口飲む。
「んん、げほっごほっ……!」噎せた助手に司書は驚いたように報告書から顔をあげて、大丈夫ですか、とすぐに給湯室からタオルをとってきた。
「気管に入りましたか?」
背中をさする司書からタオルを受け取って二三度咳をする。「し、司書さん……」苦しい声が出た。
生理的に涙が出たがすぐに落ち着いて、タオルの礼を言いつつ司書をみた。「ありがとうございます……その、司書さん、紅茶が」
「紅茶の誤嚥……たぶん問題ないと思います。高齢者や嚥下困難者だと肺炎の危険性があるけど、堀さんは健康なので」
「は、はぁ」
真面目な顔でいう司書の机、紅茶は半分ほど消えている。


暑い、と開けられた第一ボタン、ちら、と覗いた首筋、その白いカンバスがあかくぷっくりとふくらんでいた。なんだろう、と首をかしげて、ああそうか、蚊に刺されたのだ。指摘するとああ本当ですね、と呟いて、暫く良い匂いのするようになった。ミントの香り、蚊除けになるんだという。ふと通る残り香が涼やかで好ましい。それ以来、釦はきっちりと上まで閉められていることが多かったが、次に見たときには青く痣のようになっていた。内出血をしたのだろう、ましろい肌にまだら模様と目立って、痛々しいような色をしている。彼女のなかには血が通っていて、この身体にはインクだけ。蚊も災難だろうな、こんな人がほぼいない図書館にうまれて。我も触れ得ぬ司書の肌に口付けた虫けらなんて、同情の余地はないけれど。せいぜい覚えた独りの女の血をもう一度求めて、さ迷って、飢えながら死んでしまえ。