01.青峰先生と隣の黄瀬くん



青い髪、小麦色の肌、一般的に背の高い人より更に高い身長、筋肉質な体、低い声、気だるそうな雰囲気…今日も素敵だなあ、青峰先生。

青峰先生は日本史と体育を担当していて、ラッキーなことに私たちのクラスの担任でもある。素っ気ないし口も目つきも悪いので怖がる生徒も多いが、私のような隠れファンもたくさんいる。

「名前っちは全然隠しきれてないっスけどね〜。毎回ガン見し過ぎ」
「だってあんなに格好良い人が目の前にいるのに、見ない方が失礼でしょ。てか人の心の中勝手に読まないで」
「あんなオラオラ教師のどこがいいんだか…」

隣の席の黄瀬涼太は整った顔立ちと189センチの長身を兼ね備えているためモデルなんかもしている。おまけに運動神経も抜群なもんだから女の子が放っておかない。休み時間になるたびにファンの子が押し寄せてくるため、隣の席の私は結構、いやかなり迷惑している。神様は黄瀬を贔屓しすぎだと思う。

・・・

体育の時間。

青峰先生はバスケが好きなのか、体育はやたらバスケをやらされる。そういえばバスケ部の顧問も担当してるし、先生が学生だった頃はバスケ部だったのかな。

「「きゃー!!黄瀬くんかっこいい〜」」

…またか。調子にのってファンの子たちに手なんか振っている。確かに綺麗な顔だとは思うけど…やっぱり青峰先生の方が格好良いじゃん。

おっと。またいつもの癖で無意識のうちにガン見していた。眼力が強過ぎたのか青峰先生が私に気付いて目が合った。やばいやばい、青峰先生そういうミーハーな騒がしいファンとか嫌いそうだし、バレないようにしなきゃ。という思いから、咄嗟にぱっと目を逸らしてしまった。

「なーにやってんスか」
「黄瀬。コッチ来ないでよ、あんたのファンに殺される」
「はは、殺されるって。名前っちといる時くらいしか落ち着けないんスよ〜。オレといるの、嫌っスか?」
「別に嫌じゃないけどさぁ…ま、あんたも大変だね」
「モテる男はつらいっス」
「死ね」
「冗談っスよ名前っち〜」
「おい、次お前んとこの試合だろ。喋ってねーでさっさと行ってこい」
「あ、はいっ」

黄瀬と話している内に順番が回って来たらしく、すれ違いざまに先生に頭をポンと叩かれた。何気ないそういう行動に、人の気持ちがこんなにも掴まれてるってこと、先生は自覚ないんだろうなあ。

黄瀬だけにわかるように、「先生に、私のこと、宣伝しといて!!」と口の動きとジェスチャーで伝えると、溜め息をつきながら呆れたような顔をされた。

「黄瀬ー」
「なんスか?」
「お前苗字と付き合ってんの?」
「付き合ってないっスけど…なんでそんなこと聞くんスか?」
「別に」
「えー?聞いといてそれはないっスよー」


まさか本当に自分の話題が出ているなんて思いもしない私は、全力でバスケを頑張っていた。活躍したら青峰先生見てくれるかなーなんて、呑気なことを思いながら。