07.欲しいもの※


「…はぁ」

あれから数日経ったけど青峰先生と桃井先生のことを考えない日はなくて、その度にこうしてため息が出る。今が体育の授業でしかもこの年齢になってプールっていうのも憂鬱になってる原因のひとつなんだけれども。やっとバスケじゃなくなったと思えばまさかのプールとか、つくづく自分本位な教師だなと呆れる。好きだけど。みんなの前で水着になりたくなくて仮病を使おうとした矢先、青峰先生に「サボんじゃねーぞ」と先手を打たれたので、せめてもの悪あがきで上からパーカーを羽織っているが暑くて死にそう。

「まーたため息ついてる」

幸せ逃げるっスよ?なんて笑いながら足だけパシャパシャ浸かる私の隣に腰を下ろす黄瀬。わぁ、青峰先生も凄かったけど、黄瀬もいい身体してんなあと思わず見てしまう。

「幸せ逃げてったからため息ついてんじゃん、相変わらず頭悪いね」
「憎まれ口叩く元気残ってるなら大丈夫そうっスね」
「うっせ」

手で掬った水をパシャっと顔にかけると「うわ!冷た!」と顔を歪める黄瀬に、にししと笑う。

「つーか暑くないんスか、ソレ」

そう言ってパーカーに目をやる黄瀬に、私は胸がコンプレックスだということを話していない。まあ黄瀬といえど一応男だし、なんか気恥ずかしい。ちょー今更だけど。しかしさすがに暑いな、もういいや、プールの中に入っちゃえばそんな見えないし青峰先生に見られてるんだからもう怖いものはないようなものだもの。

「暑い。脱ぐ」

私がパーカーを脱ぐのを見ていた黄瀬の顔が少し赤くなった気がした。…エロガキ。

先にプールの中に入った黄瀬が手を伸ばしてきたので両手で捕まって中に入る。あー冷たくて気持ちいい!プールも悪くないな、なんてまたまた単純な私はそう思った。

来週25メートルの個人記録を測るからそれまでに泳げるようになればプールの時間は自由だそうなのだが、私は正真正銘のカナヅチなので黄瀬が練習に付き合ってくれることになった。私の両手を持って黄瀬が後ろに歩くので私は顔を水につけて足をバタつかせる。…てどんだけ初歩だよ、来週とか間に合わねええええ。

内心半分諦めつつも、少しレベルアップして片手ずつ離してクロールっぽい動きをしてみる。おう、なんか意外とイケそうな気もしなくもないかも。あれ、もしかして感覚掴んじゃった系?黄瀬もそう思ったのかスッ…といきなり手を離しやがって一瞬で沈む私。いや内心私も調子乗ったけどさ、そんなことは棚にでも上げてとりあえず黄瀬をぶん殴りたい。

沈んだ私に焦った黄瀬が潜って抱き上げてくれたけど、私のイライラは収まらずむっとした表情で黄瀬を睨む。そんな黄瀬は反省しているのかいないのかわかんないけど、頭をポリポリかいている。また顔を赤らめて。

「なに照れてんの、きもい」
「いや…」
「もう、なに?」

たじろぐ黄瀬にいらついて端まで追い込んで首をしめる。と、太腿になんか硬いものが当たり時間差で察した私の顔も赤くなった。

「…信じらんない。黄瀬も他のしょうもない男達と一緒なんだ、友達だと思ってたのに」

だめだ、青峰先生とのことで自信なくしてるのと身体へのコンプレックス意識がまだ消えてないせいで、黄瀬に当たってしまう。黄瀬は悪くないってわかってるのに、私には身体しか価値が無いみたいに思えて悲しくなる。

「もう出るね…」

黄瀬に背を向けると腕を掴まれた。

「…ごめん、友達だけどオレも男だから。オレは名前っちのこと、女の子として見てる」

思えば黄瀬はいつだって優しくて、こんな私を女の子として扱ってくれていた。下ネタ話したり口悪くなったりもするけれど、いつもなんとなく守られているような感覚があった。黄瀬だって年頃の男の子だ、水着でこんな密着したら反応するのは当然のこと。無意識だったけどさっきの体勢、脚を黄瀬の脚の間に入れて胸も黄瀬の身体に当たってたし、こんなんしといてキレるとかむしろ私の方がよっぽど鬼じゃないか。

「私こそ、ごめん」
「はは、なんで名前っちが謝るんスか」
「…私自信なくて。胸が大きいのがずっとコンプレックスなんだけど、男の子はみんな胸ばっか見るし先生だってきっと…私のこと、桃井先生の代わりにしてるんだろうなって。それで過剰に反応しちゃって…八つ当たりしてごめん」

黄瀬はいつでも笑って隣にいてくれてそれが当たり前みたいになってるけど、いつか黄瀬が私に愛想を尽かして離れていっちゃうんじゃないかって怖くなった。単純に言うと、なんだかんだ言って私は黄瀬を失いたくないんだと思う。

「確かに名前っち想像以上にスタイル良くて驚いたっスけど、なんか最近綺麗になったなってふとした瞬間によく思うんス。男子の間でも噂になってて、だからさっきも変に意識しちゃって。女の子は恋したりセックスすると綺麗になるって言うけど、本当なんスね」
「…黄瀬がそんな風に褒めてくるとか変な感じ」
「そう言うと思ったから黙ってたんスよ〜!青峰っちもきっと、単純に名前っちのこと気に入ってんじゃないっスか?桃っちの代わりだなんて思い悩む必要ないっス」
「黄瀬…ラブ」

黄瀬の優しさが嬉しくてぎゅっと抱きつく。水着で、プールの中で、身体が密着して、髪も濡れてて。確かにこりゃエロいわ、なんて呑気なことを思った。

「また勃っても知らねっスよ…」

黄瀬は苦笑いしながらも水の中で私の腰に腕を回した。黄瀬の腕の中はすごく安心できて心が落ち着く。ドキドキさせてくれる青峰先生とはまた違った心地良さがあって、ふと「黄瀬が彼氏だったら…」なんて思ってしまった自分に驚いた。今までそんな風に思ったことはなかったから。

「…でももし万が一青峰っちがそんなクズ野郎だったとしても、名前っちには俺がついてるから大丈夫っスよ」
「ありがとう。頼りにしてますぜ、相棒」

へへっと笑う私とは少し違う作ったような笑顔の黄瀬に一瞬違和感を感じたけど気のせいだと思った。黄瀬の気持ちにも、自分自身の気持ちの変化にもまだ気づいていなかったんだ。


授業が終わりシャワー室へ行こうとすると青峰先生に腕を掴まれ、手伝うことがあるから先に監視員室に寄れと言われた。監視員室に行くと青峰先生はいなくて、寒くなってきたのでパーカーを羽織る。先生まだかなぁ、早くしないと次の授業に間に合わなくなっちゃうんですけど。

着替え終わったクラスメイト達の声が聞こえなくなり、静かになると同じく水着姿のままの青峰先生が戻ってきた。

「先生お手伝いってなんですか?早くしないと次の授業始まっちゃいますよ?」
「あーあれ嘘。次の授業はサボりな」

え?と驚いている私の手を引き監視員室を出ると青峰先生はシャワー室の個室へ入った。

「あ、あの…せんせ…」

全て言い終える前に私の唇はせっかちな青峰先生の唇によって塞がれた。壁に押し付けられて舌を絡められるとパーカーのファスナーをジーッと下げられ脱がされる。

「んっゃあ…っ」

唇は首筋から胸へ。水着の上から揉まれ、そのまま吸われる。水着越しの舌の感覚にこっちまでいやらしい気分にされてしまう。

「ゃ…あっ…はぁ…っ」
「直接おっぱい舐めていい?」

コクリと頷くと青峰先生は水着を肩から下げて胸を口に含んだ。青峰先生の口の中で器用に乳首を転がされて感じてしまう。

「やんっ、…はあぁんっ、ぁ…あんっ」

唾液で濡れぷっくりと膨れあがった乳首を今度は指で擦り、もう片方の胸を口に含み吸う。静まり返ったシャワー室にちゅぱっ…ちゅぱっ…といやらしい音が響いて恥ずかしい。

「あぁっ、やあっ青峰、先生っ…音が…っ」
「誰も、来ねーよ…んっ」
「あんっ、…はぁ、で…も…」

快感に耐えられず青峰先生の腕を掴むと、くるりと体勢を変えられ、後ろから青峰先生が抱きしめてくる。息があがってる青峰先生に耳元で「なに堂々と黄瀬といちゃついてんだよ…」と言われいろんな意味でドキッとした。

「このおっぱいはオレんだっつったろ。なに黄瀬に押し付けて誘惑してんだよ…淫乱」
「ち、ちがっ…!」

反論する隙も与えず青峰先生は水着をずらして私のアソコに指を滑らせた。

「もうびしょ濡れじゃん…いつから?俺がおっぱい舐めてから?その前のキスした時から?それとも、黄瀬と抱き合ってから?」
「やあっ!先生っ…!あっああああんっ」

青峰先生は容赦なく指をズブッと中に入れると中でバラバラに動かしたり、出し入れを繰り返す。もう片方の手は私を後ろから抱き締めたまま乳首を責めていて、逃げ場が無い。

後ろから首筋に噛み付くようにキスをされ、立っているのが精一杯。お尻には硬くなった青峰先生のが当たってて、こんな状況でも嬉しいと思ってしまう私はやはり彼が好きなんだと改めて思い知った。

青峰先生は水着を脱ぐと私のも脱がし、私の腰を掴むと自身を当て、ゆるゆると数回擦り付けた後中に挿入した。

「あああっん!」

壁に手をつき青峰先生からの激しい打ち付けに耐える。パンッパンッと激しさを表すかのように響く音と強い刺激に中がギュウギュウ締まる。

「…っく…名前、こっち向け」
「んっ」

振り返るとキスされて、舌を絡めながら指でクリトリスを押し潰され、限界がきておかしくなりそう。

「イキそう?」

イクという感覚をまだよくわかっていなかった私だけど、これがきっとそうなんだと思った。

「えーどうすっかな…お前、黄瀬がいいんだろ?」

ふるふると首を横に振るものの、青峰先生は意地悪く動きを調整してイカせてくれない。

「私が好きなのは、青峰先生だけですっ…だからお願い、意地悪しないで…」

涙が溢れて落ちそうになるのを堪えそう訴える。私が先生を好きなの知ってるくせに、他の人のことを想ってるのは先生の方じゃん、私のこと、好きじゃないくせに…

青峰先生は自身を一度抜き、私を抱き上げてきたので脚を絡ませるとまた中にぐっと押し入れてきた。ぐちゃぐちゃに濡れたソコは簡単に先生を受け入れて、最初から先生をきつく締め上げる。顔を歪めて快感に耐える先生が愛しくてぎゅっときつく抱き締める。

私の背中を壁にドンッと押し付けると先生は欲望のままにガンッガンッと奥に突き上げた。

「ああっ…あんっ…あぁんっ」

青峰先生が桃井先生を好きだとしても、桃井先生には他に彼氏がいて、青峰先生と今セックスしているのは私で、それが事実で現実なんだ。

青峰先生の頬を両手で包んでキスした。自分から舌を絡めて、欲望のままに。こんな姿、青峰先生以外には見せられない。

キスをしている間青峰先生がまたクリトリスを押すように撫でてきて快楽の波が押し寄せてくる。気持ち良すぎて中もすごく締まってるのがわかるから恥ずかしい。

「…一緒に、イク?」

「…イクっああっああああっ」

青峰先生に激しく突き上げられて最後は一緒に果てた。青峰先生が私の身体にかけた精液がいやらしい。青峰先生は私を抱き締めキスをすると、「お前はオレだけ見てろ」と得意の俺様発言を吐きかけ首筋に吸い付いた。見えそうなところにわざと付けてくる青峰先生に所有欲の強さを感じた。


青峰先生、そんな嫉妬みたいなことされたら私勘違いしちゃいますよ?無理なのはわかってるけど私、やっぱり青峰先生の彼女になりたい。身体だけじゃなくて心も欲しがるのは、欲張りですか…?