01.僕の心に火をつけたひと※

降谷side.

一週間が終わり、ようやく訪れた金曜の夜。今までこんなにも週末が待ち遠しいと思ったことはなかった。今日の訓練が終わると同時に、食堂にも行かず急いでシャワーを済ませると私服に着替えて寮を出る。向かう先は、僕をこんな風にしたあの人の元…

・・・

数週間前

特に予定もなかった僕は週末も寮にいた。少し仮眠を取ったら勉強でもしようかと思った矢先、同期の萩原からの着信が鳴る。

確かあいつ、今日も合コンって言ってたな…。

嫌な予感を感じながらも、しつこく鳴る着信にもしかしたら何かあったのかもしれないと少しの不安がよぎり出ることにした。

「もしも…」
「あ、降谷ちゃん?俺俺〜今から飲み来れる〜?」
「………」

心配した僕が馬鹿だった。案の定いつもの如く合コンをしていたらしい萩原は、すでに酒を飲んでいるのかテンション高めに問いかけてきた。

「僕は遠慮しておくよ」
「まあそう言いなさんなって。陣平ちゃん誘ってたんだけどさぁ、あいつ全然連絡つかねーの」
「どうせ忘れて寝ているんだろう。部屋に行って起こしてこようか」
「いや、いいわ。寝起きのあいつの態度の悪さったら普段の比じゃねーからな」
「はは、それはそうだな」
「なぁ頼むよ降谷ちゃん、この借りはいつか絶対返すからさ」
「はぁ…倍返しで頼むよ」
「さっすが!マジで愛してるっ!じゃあ店の住所送っとくから、また後でな」
「了解」

初めて会う女性と酒を飲むことがそんなに楽しいのか?僕にはよく理解出来ないが…まあ、あいつには日頃世話になっていることだし付き合ってやることにした。

渋々向かうと、小洒落た店の外で萩原が煙草を吸って待っていた。

「おう。マジ助かるわ、ありがとな」
「はいはい」

店の中に入ると「いらっしゃい」とカウンターで笑顔を向けてきたその人に心臓がドクンッと鳴るのを感じた。今思えば、これが俗に言う一目惚れというやつだったのかもしれない。

「名前ちゃん、こいつ俺の同期で零っていうんだよ。イケメンだろ?ま、俺には負けるけどな」
「はいはい、どっちもかっこいいですー。よろしくね、零君」
「あ、どうも…」
「なーにコミュ症ぶってんだよ!ほら、あっちで飲むぞ!名前ちゃん、こいつにビールね」
「はいはーい」

それが彼女との出会いだった。

言われるがままに初対面の女の子の隣に座って酒を飲むが、こういう場が苦手な僕はいくら友達のためとはいえ早く帰りたくてしょうがなかった。

「零君、ほら飲も?かんぱーい」

露出の高い服を着てボディタッチ…本当に勘弁してくれ。萩原に目で訴えるも「酒が足りねぇよ!ほら飲め飲め〜」と半ば強制的に飲まされ、僕としたことが疲労もあってか少し酔っ払ってきてしまった。

トイレに立つと、隣の女の子がついてきて「このまま一緒に抜け出そうよ」と言ってきた。

「いや、他の人に悪いし…」
「大丈夫だって。私が適当に言っておくから、ね?」

しつこいな…若干の苛立ちを覚え始めたその時、「お兄さん、フラついてるけど大丈夫?具合悪いんじゃない?」とあの人が声をかけてきた。

「え、そうなの?ごめんね零君、気付かなくて」
「大丈夫だよ。それじゃ、また後でね」

僕が名前さんのほうを見ると、彼女はさっきの子に新しいドリンクを渡してさり気なく席に戻していた。

「さっきは助かりました。ありがとうございます」

トイレから戻り、カウンターに座って名前さんにさっきのお礼を伝えた。偶然じゃなくて、きっと困っていた僕をフォローしてくれたのだろうと思ったから。

「酔っ払ってたのは本当みたいだしね、はいお冷」
「あ…ありがとうございます」
「そんなかしこまんなくていいよ?お客さんはみんな友達とか家族みたいに思ってるから」
「なんか、そういうの慣れなくて…」
「研二君と同期ってことは将来警察官になるんでしょ?うちのお店に悪いやつが来たら助けてね」
「さっきの借りはちゃんと返します」
「お、言ったな?」

あまり自分のことを人に話すのは好きじゃないけれど、名前さんと話している空気感はすごく心地良くて、もっと自分のことを知ってほしいし名前さんのことを知りたいと思った。

「あの…連絡先を聞いてもいいですか」
「ふふ、いいよ。そのかわり、またお店に来てね」

それから僕は週末になると名前さんの店へ足を運び、いつも同じカウンター席に座っては名前さんといろんな話をした。楽しそうに僕の話を聞いてくれる彼女を見ると、会うたびにどんどん距離が縮んでいる気がして嬉しかった。

「なあ、降谷ちゃんさ」
「ん?」
「もしかして、名前ちゃんに惚れちゃった?」

ある日食堂で昼食を食べていると、隣に座ってきた萩原が突然そんなことを聞いてくるもんだから一瞬手が止まった。その後すぐに平静を装ったものの、内心はすごく動揺していた。

「いや、仲良くしてもらっているだけだけど」
「ふーん…ならいいんだけどさ。名前ちゃん彼氏いるから、期待させてたら悪いなって思ってよ。俺が紹介したみたいな感じだし、責任感じるっつーかなんつーか…」
「心配ご無用、余計なお世話だ」
「はは、だよなー。でもぶっちゃけ俺も最初狙ってたからさぁ、惚れてたら気持ちわかるなーって思ってよ。だって名前ちゃんめちゃくちゃ可愛いじゃん、おっぱいもデケーし!」

そこで思わず萩原に一発拳を食らわせてしまったことにより、萩原にも気持ちがバレ、学校にも暴力を振るったことがバレ、反省文と一週間の謹慎処分を受けることになってしまった。

付き合っている相手がいたのか…。そりゃあそうだよな、この僕が惚れるくらいの人だ。他の男が放っておくはずがない。このまま会うのをやめたほうが傷も浅くて済むのでは…謹慎中どこにも行けないこともあり余計名前さんのことばかりが頭に浮かんで離れなかった。


謹慎が明け、週末僕はまた名前さんの店を訪れた。この気持ちを伝えて、そして忘れるために。

「あ、零くん!生でいいよね?」
「ああ…はい」
「先週来てくれなかったから寂しかったよ?今日はその分ゆっくりしてってね」

営業トークだとわかっていながらも嬉しいと思ってしまう。こんなこと、きっと誰にでも言っているのに。キャバ嬢に翻弄されるオジサン達の気持ちが少しわかった気がした。

だってせっかくの決意が揺らぎそうなほど、やっぱり名前さんはかわいい。この笑顔を、俺の知らない名前さんを独り占めしている男がいるのかと思うとだんだん腹が立ってきて、いつになく酒が進んだ。

「どうしたの、今日ペース早いね。お店としては有難いけど…無理しちゃダメよ?」

頭を撫でて子供扱いする名前さんの手を払った。嬉しいけど…僕は男として見られたいのに。
簡単に触れてくることが、全く意識されていないと思い知らされているようでなんか嫌だった。

「僕だって飲みたいときくらいありますよ」

終いにはこんなめんどくさい酔っ払いみたいな台詞まで吐く始末。そんなに酒は弱くないはずなんだが…これじゃあ本当に子供みたいじゃないか。

「そーですか。でももうダメでーす。お店もそろそろ閉めるし、今日はもう帰りな?はい、これは没収」

カウンターから出てきた名前さんにグラスを取り上げられて、むきになった僕は取り返そうとする。

「返してください、それだけ飲んだら帰りますから」
「もう、ダメだってば」
「いいから飲ませてください!」
「きゃっ!」

取り合いになったグラスは床に落ち、勢い余って名前さんは転んでしまった。

「すみませんっ…大丈夫ですか…?」
「もう、零君力強すぎ。ふふ…酔っ払い」

その笑顔に、何もかもどうでもよくなった。残った感情は、好きって気持ちだけ。しゃがんで差し出した俺の手に重ねられた名前さんの手を引き、ぎゅうっと抱きしめた。

「零君…?」

気持ちだけ伝えて綺麗にサヨナラなんて出来るわけなかった。自分で思っていたよりも、気持ちは大きなものへと変わっていたことに今更気付く。

「んっ…」

溢れる感情のままに、名前さんの唇に自分の唇を重ねる。もっともっと欲しくて何度も角度を変えて重ねると、唇を割って舌を入れた。

舌を絡めながらそのまま床に押し倒して、名前さんの唇を犯し続ける。唇から名前さんの体温が伝わってきて気持ちいい。

ちゅ…んちゅっ…と静まり返った店内に僕達のいやらしいリップ音が響く。顔を赤く染めながら苦しそうな表情で僕にキスされる名前さんに更に欲情する。

唇を離すと、必死に息を整えながらも困惑している名前さん。ああ、かわいい。

「すみません…名前さんのこと、好きになっちゃいました」
「零君…。ダメだよ、私…」
「彼氏のことなら萩原から聞きました。名前さん、僕のこと嫌いですか…?」
「…そんな聞き方、ずるい」
「ちょっとは好き、ですよね?」
「ん…でも…」
「もう…黙って」

再び唇を重ねて抵抗する言葉を遮る。僕の腕をぎゅっと掴みながら、戸惑いつつもゆっくり舌を絡めてくる名前さん…悪い人だ。悪くて、ずるくて、かわいい人。ああ、めちゃくちゃにしたい。もう止められない。

酒を被ってびしょ濡れになったブラウスから黒い下着とピッタリと浮き出るシルエットが僕を更に煽る。いつだったか萩原が言っていたことが無意識に頭に蘇った。

「へぇ、こんなえっちな下着つけてたんですね」
「やだ…恥ずかしい…」
「ダメ、もっと見せて…?」

ブラウスのボタンを外していくと、想像以上に大きい胸が黒のレースの下着に苦しそうにおさまっていた。深く刻まれた谷間にパンパンに張ったそれは、サイズが合っていないんじゃないかと思うほど大きくていやらしい。

下着をずらしてその大きな胸を取り出すと直接揉みながら口に含む。柔らかくて、重みがあって、僕が舌でいじめる度に名前さんの甘い声が漏れるのが堪らない。

「…んん…あっ…零君っ…ダメ…」

口の中で乳首を転がしたり吸ったりする度に僕を押していやいやと抵抗するけれど、本気で嫌がっていないことくらい僕にだってわかりますよ?

「ダメ…じゃないでしょう?」
「ん、誰か来ちゃうかも…こんなことしてるの…もし見られたら…」
「そうなったら、酔っ払いに襲われたとでも言えばいい」

僕は見られたって構わない。客だろうが、名前さんの彼氏だろうが。むしろ見せつけてやりたいくらいだ。この人を今こんな顔にさせてんのは僕だよって。

「ほら…ココ、こんなに硬くなってる」

僕の唾液で濡れた名前さんの乳首はぷっくり腫れあがっていた。

「零君のせい、でしょ…ん…あんっ」

再び胸にしゃぶりつきながら名前さんのスカートをたくしあげパンツの中に手を入れるとすでにぐちょぐちょに濡れていて思わず笑みが溢れる。

「こんなに感じてくれてたんですね…かわいい」
「いや…言わないで…」
「もっと溢れされてもいいですか?」
「…あっ…ああっ…いや…だめっ…ああんっ…」

指を入れてかき混ぜるとソコは卑猥な音を響かせながらどんどん溢れていく。僕の指をギュウギュウ締め付けて、まるで早く挿れてとでも言うかのように。

「挿れて、いい…?」
「零君…ダメ…」

ダメと言いながら僕の腕をぎゅっと握り胸に顔を埋めてくる名前さんが可愛すぎて、唇を重ねて舌を絡めながら僕自身を押しつけた。

名前さんのソコはぐちょぐちょであったかくて、擦り付けているだけでも気持ちいい。

「力抜いて…あとちょっとで…全部…入る…っ」
「…んっ…んん…あ…あああっ…」

僕自身が全部名前さんの中に収まると少しずつ腰を動かしていたが、耳元で鳴く名前さんのいやらしい声も相まって気付けば僕の理性も飛ぶように夢中で腰を打ち付けていた。

「ああっ…零君、激しっ…」
「今まで僕がどれだけ我慢してきたと思ってるんですか…ずっとこうしたいと…思ってたんですから…っ」

僕の首に腕を回して引き寄せると自ら唇を重ね舌を絡めてくる名前さんに僕の限界が一気に訪れる。パンッパンッと激しく肌がぶつかり合う音と僕達の乱れる呼吸だけが耳に響いてきて、ぎゅうっと名前さんを抱きしめると奥に何度も打ち付けた。

「ぁあっ…もうダメ…零っ…」
「…ん……あっ…僕も、もう…っ…」
「…あっ…あっ…ぁああっ…」


事後処理を終えた後、名前さんを抱きしめてもう一度キスをした。優しく、気持ちを伝えるように。

一度離れた唇は、名前さんの「もう一回…」
という言葉で再び重ねられる。

最後になんて、出来るはずがない…
彼女への愛おしさが、より深くなってしまったのだから。



そんなことがあってから、僕は会えない時間も名前さんのことが頭から離れずにいた。訓練中も、講義中も、寝る前も…名前さんのかわいい笑顔やこの間初めて見た色っぽい顔が忘れられなくて胸が苦しくなる。

店に着くと名前さんはいつものようにカウンターにいて、僕に気が付くと少し照れたように微笑んだ。以前までと少し違った表情に、ついこの間のことを思い出してまた心臓がぎゅっと掴まれる感覚に襲われる。

それでもしばらくすると、いつものように楽しくてほっとする時間が訪れる。会っていない間の一週間の出来事を話したり、名前さんの仕事する姿を微笑ましく見守ったり。

今週もいい時間を過ごせたな、とほろ酔いでトイレに行こうと席を立つと、すれ違いざまに名前さんが僕の手をきゅっと掴んで耳打ちしてきた。


「今日も、えっちなことしたい…?」


顔に一気に熱が集中するのがわかる。きっと僕は彼女に弄ばれているんだろう。僕と名前さんの好きは一緒じゃない。でもそれをわかっていても、僕は彼女を愛さずにはいられないんだ…