そんなタマではないだろう

黄「桃っちスか。そーいや青峰っちと幼なじみだったっスね…って、ん?」



黄瀬はそこまで言って、違和感を感じた。



黄「あの子たしか雪乃っちのこと好きじゃなかったスか?むしろ本気なんて出せねーんじゃ…」

緑「そうだったのか?」

黄「はあ!?気づいてなかったんスか!?バレバレっつーかむしろ毎日アタックしまくりだったし、青峰っちと取り合いしていたじゃないスか!?あれ見て気づかないとか…サルスか!!!」

緑「なにィ!!サルとはなんなのだよ!!それにあいつらは女同士なのだろう!?」



帝光時代、スポーツドリンクとタオルを積極的に渡しに行ったり、一緒に帰ろうとしようとしたり、青峰と雪乃の取り合いをしたりと、周りから見ても雪乃にアタックをしていた桃井だった。



緑「…まあいい…だったら尚更なのだよ。雪乃が試合で手を抜かれることを望むはずがないのだよ。そもそも形は違えど、アイツのバスケに対する姿勢は選手と遜色ない。試合でわざと負けるようなそんなタマではないだろう」



桃井は鋭いまなざしでコートを見ていた。
そんな桃井を火神は横目で見る。



火「あれがウワサのお前に惚れているマネージャーかよ。てかフツーにかわいいじゃん」

『えぇ、とても可愛い方ですよ』

火「お、おう(女にも惚れられるオマエはもっとだけどな…こんなこと言えねえけど//)」

『ただ、試合じゃなければ」



含みがある雪乃の言い方に、少し疑問を抱く火神。





原「さすが王者を撃破しただけはありますねー」



桐皇学園監督、原澤 克徳は癖のある前髪をイジりながらそう言った。


桐「カントク…ここjは一度T・Oをとった方が…」



原澤の隣に座っていたベンチの選手が不安そうに原澤に提案をする。



原「あーいいいい。あいつらもまだ実物見て少し修正してるだけですよ。それに桃井さんのアレはもう渡してありますよね?」

桃「…はい、もう全部…知ってます」





コート内では、桜井の出したパスを伊月がカットした。



観「おお、スティール!!」



攻守は変わって火神が3Pラインの外でボールを受け取る。
火神の前にいるディフェンスは火神から離れて守っていた。



火「(…このヤロ。ずいぶん深く守ってんな…外は捨てて、とにかく抜かせねーつもりか…)あめーよ!!」



火神は3Pシュートを打つ。



観「3P!?いや…」



打つとほぼ同時に火神はゴールへと走り出す。



黄「あれは…一人アリウープ!!」



それは習得戦で見せたリバウンドを自分で取り、そのままダンクをする火神の作戦だった。



桃「知ってますよー*そう来ると思ったから。単純なんだから男の子って」



しかし走り出した火神をディフェンスの諏佐は、回転をして背中で火神を止めた。
ゴール下にいる伊月や水戸部もディフェンスにより止められてしまう。
火神の3Pも外れ、桐皇ボールになってしまった。



火「(今の動き…初めての対応じゃねぇ!!)」

日「(しかも火神の外の確率の悪さもバレてる…つまりこれは…)」

リ「研究されてるわね、おそらく桃井に」



リコは冷や汗を流しながら言う。



リ「桃井の正体は情報収集のスペシャリスト。いわば諜報部員ってワケね」





試合は流れ、誠凛ボール。
ボールをもらった水戸部はフックシュートの態勢に入る。



降「水戸部先輩!!行けー!!」

若「(フックだろ!!)知ってるつんだコラァ!!」



しかし水戸部のフックシュートは若松にブロックされてしまう。
ブロックされてしまったことに目を見開く水戸部。



伊「(…読まれてる!!)」

降「まずくないすか!?なんか手を打たないと…」

リ「…必要ないわ!このまま行くわよ!」



不安そうな一年生にリコは一蹴した。



福「え!?」

リ「いくら正確な情報を持っていたとしても、それは過去のものでしょ。人間は成長するのよ。そんな常識も知らないで、知ったかぶってんじゃないわよ!」



日向にボールが渡り、3Pシュートの態勢に入る日向。



高「日向!3Pか!?」



それに反応した桜井もブロックしようとして腰が少し上がった。





『そんなタマではないだろう』