嫌だ!!

オフィシャル「第4Q始めます」





桐皇対誠凛の試合は第4Qが始まるにもかかわらず、観客は静まり返ってしまっていた。



高「ここまでかよ…」





桐皇 誠凛
82−51





すでに30点以上も誠凛は離されてしまっていた。
雪乃にパスが渡り、いつも通りパスを出すが、すべて青峰によってカットされてしまう。
青峰はゴールへと向かうが、その前には火神がいた。
青峰はロールっでゴールに背中を向けると、そのままゴールに向かってボールを放った。



火「なっ(ロール中に撃った!?いよいよメチャクチャしやがる…!)」



そのシュートも決まってしまった。
火神はオフェンスに走るが、様子がおかしい。



リ「(火神君の様子が…!?…足!?なんで!?ほとんど完治してる上にテーピングもキッチリやった…そう簡単に悪化なんて………!!違う…!これは…)」



リコはオフィシャルに後退を申し出る。



オフィシャル「誠凛メンバーチェンジです」

土「火神!!」

火「な」



火神は突然の交代に目を見開く。



火「なんでまた…!?テーピングも問題ねーよ」

土「いいから戻れよ」

火「大丈夫っすよ、それにまだ試合は…こんな所で…」

リ「いいから戻りなさい!!」



リコの怒鳴り声に、桐皇の選手達も視線を向ける。
火神は唇を噛みしめる。
雪乃はただ見つめていることしかできない。

リコは火神をベンチに座らせ、足を視る。



リ「(…やっぱり、今まで痛めた足を無意識にかばいながらプレイしてしまってたんだわ。そのせいで今度は逆の足に極端な負荷が…もう出すわけにはいかない…それどころか決勝リーグ残り二日も…)」



火神の深刻なケガの様子にリコも表情を歪める。



原「…いよいよ決まりですかね、桃井さん黒子の対処もあったんでしょう?どうします?」

桃「…いえ、もう必要ない…と思います」



桃井は悲しそうに俯きながら原に応えた。





火神は拳を握りしめる。



若「…オイオイ、すんげーな火神。人でも〇すんか?」

桜「ええ!?」



若松の言葉に驚く桜井。



若「今まで青峰とやった奴はみんな、才能の差に諦観するか茫然とするか、どっちにしろ意気消沈てカンジだったんだけどな。オレだって正直、味方じゃなかったら分かんねー。けどアイツはあんだけやられてなお、つかむしろ今まで以上に

ほとばしってんぞ、怒りが」



火神は自分のふがいなさに腹が立ち、怒りで体を震わせていた。



若「諦めるどころかやり返す気マンマンだ。あんな奴初めて見たわ」



青峰は火神の様子を静かに見ていた。






日向が3Pシュートを放つ。



日「(落ちる…!撃たされただけだ…DFは青峰を止められない上に、OFは桃井のせいで全部読まれてる…!!)」



日向のシュートはリングに弾かれ、リバウンドは若松に取られてしまい、そのままカウンターでどんどん点差が開いていく。
誠凛メンバーの表情はすでに絶望で染まってしまっていた。



観「…終わったな…」

観「さっきからもう一方的だ、見てらんねーわ」

観「40点差…もうどうあがいても…ムリだ」



残り約5分半。もうすでに40点差まで開いていた。



日「(マジで手も足も出ねー。雪乃もとっくに限界だ。むしろ小金井(コガ)に代えた方がいんじゃねぇのか?)」



ボールは青峰の手の中にあり、青峰の前には雪乃がディフェンスについている。



青「思ったより早かったな。もう決まりだろ。自慢のパスも通じず、体力も尽き、火神(光)もいない」



雪乃は体力の限界をとっくに過ぎており、立っているのも辛そうだった。



青「ミスディレクションもとっくに切れた。もはや並の選手(プレイヤー)以下だ。オレの勝ちだ、ユキ」



青峰の言葉は試合中にもかかわらず、妙に雪乃の耳に響いてくる。



『…まだ、終わってません』



雪乃は静かに口を開く。





『嫌だ!!』