なりたいじゃねーよ
火神は一人でストリートバスケットコートに来ていた。
火神は目を閉じ、今日の練習試合を頭の中で思い浮かべる。
目の前には徳進高校の2人。
火「(レッグスルーから右ドライブで一人かわす…)」
火神は目を閉じながら再現をする。
火「(ここですぐヘルプがくる。ゴール下には降旗がいたし見えていた。あとはパスを出しゃあいいだけだ…けどそれじゃダメなんだ。ここで普通にパスを出してるようじゃ『キセキの世代(あいつら)』には勝てない)」
火神は目を静かに開ける。
火「(仲間に頼ってやっと戦えるだけじゃ通用しない。試合である以上、敵は『キセキの世代』だけじゃない。ヘルプに一瞬足止めされるだけでもすぐに立て直してくる。勝つためには1対1(ワンオンワン)で仮に抜けなくても…崩すスキを作るか…
オレ一人でもまず戦えるレベルまでいくんだ。それができて初めて…)」
『火神君!』
火神は声がした方を振り向くと雪乃が息を切らし、苦しそうに膝に手を置いていた。
火「…雪乃?」
『ちょっと話いいですか』
火「…なんだよ話って」
『…すみません』
火「?」
突然謝られたことに疑問を浮かべる火神。
『実はまだ考えがまとまってません』
火「オイ!!」
『少し待ってください』
火「今から!?…ったく、ん」
火神は突然雪乃に持っていたボールを投げて渡した。
火「ボーッと待っててもヒマだろーが。とりあえず相手しろよ。やりながら考えろ」
そして雪乃と火神の1対1が始まった。
すこし時間が経ち、火神が雪乃を軽々と抜き、シュートを決める。
火「よーっし14点目ー!!」
『あの、今はもう少し手を抜いてください』
火神は息も切らさず余裕であるが、雪乃は先ほどよりも息が上がって苦しそうだった。
火「やってるよカルく!!お前が弱すぎ!!」
『………』
火「そういや…初めてやった時もこんなんだったな!その後、正体知った時は正直たまげた…しかも」
(私は脇役(影)だ)
(主役(光)の影として私も主役(キミ)を日本一にする)
火「…なぁ、あんときから一つ気になってたことがある…なんでオレを選んだんだ?」
火神の問いに雪乃はすぐには口を開かない。
『…すいません』
火「は?」
『私は謝らなくちゃいけません。私は嘘をついてました」
火「!?」
雪乃はぽつりぽつりと淡々と話し始めた。
『私は中学時代、6人目(シックスマン)としてユニフォームをもらっていました』
火「知ってるよ。『キセキの世代』の切り札だったんだろが」
『それは少し違います。確かに私は信用されていたかもしれません。けど信頼されてはいませんでした。…いえ、もっと正確に言えば…信頼されなくなっていったんです。
私は一年の時はまだなんの取り柄もないただの選手でした。6人目(シックスマン)としてベンチ入りしたのは二年目からです。その頃はまだ…信頼されていた…と思います。
けど青峰君のようにみんなの才能が開花していくと…信頼は薄れていきました。なぜなら開花していくにつれ、『キセキの世代が最も信じるのは自分になっていったからです。
仮に残り数秒で1点差のような大事な場面ではパスはきません。『キセキの世代(彼ら)』が自分で決めます』
そこで雪乃は一拍一呼吸を置いた。
『本当は…火神君でなくてもよかったんです。ただ…『キセキの世代(彼ら)に私のバスケを、火神君を利用して認めさせようとしただけなんです』
静寂が二人の間に流れる。
火「…ったく、何を言い出すかと思えば…そんなこったろーと思ったよ。ずっと感じてたよ。そもそもオレと『キセキの世代(あいつら)』は同種だ。
『キセキの世代』のバスケを否定して帝光を辞めたはずのお前がそんなオレとなんで組むのか。むしろ合点がいったぜ。バスケやる理由なんて人それぞれだろ。オレは別に…」
『いいえ』
雪乃は少し強めの口調で否定をする。
『火神君はもう違います』
『なりたいじゃねーよ』