跳んでみて
木「火神の利き足は左ではなく、右だ」
倒れたゴールに目を向けると、火神の手のあとは先ほどのジャンプで付けた後よりさらに遥か上、アクリル板の一番上に跡がついていた。
高「なっっ(にぃ〜!!?)」
木「とは言え、左で跳んでる時も自身の負荷に耐えられず、負傷している。右ならもっと跳べる数は限られるだろう。関節に負担が少ない砂浜でひたすら走らせていたのは、自身すら傷つけるほどのあり余る力を制御するためだ」
リ「わかった?あなたの最大の武器は跳躍(ジャンプ)力。けどまだ全てを引き出せてはいないわ」
リコはジャンプをした勢いで、仰向けに転んでしまった火神を見下ろしながら言う。
リ「今はとにかく体作り。そこからどうするかは自分で考えてね。あとゴールはちゃんと起こしときなさいよ」
それだけ言うとリコは合宿所へと帰っていった。
火神は仰向けに倒れたまま考える。
火「(跳躍(ジャンプ)力…それを生かすオレの戦い方…そんなもん答えは一つだ!)」
火神は右手を空へと突き上げる。
火「(空中戦!!『キセキの世代』とわたりあえるのはそこしかねぇ…!)」
雪乃もちょうど通りかかり、歩道に座り込んでいる高尾に気づく。
『どうも』
高「…よう!何してんの?」
『いえ、もうすぐ夕食何で火神君を呼びに…』
高「もうそんな時間か。じゃウチもそろそろ…」
高尾が腰を上げようとしたが、もういちど火神の方を見た。
高「頭下げろ!」
高尾は雪乃の頭を掴み、一緒に隠れるように屈ませる。
緑「む?」
なぜか火神のいる駐車場には緑間がおり、二人は目が合うと青筋が浮かぶ。
『!?』
高「ちょっと静かにしろよ」
雪乃は何かを言おうとしたが、高尾に口を手でふさがれ、高尾はその光景を面白そうに見ていた。
火神は倒れっぱなしだったゴールを直し、緑間に向き合う。
火「……んだよ」
緑「用などない、ただ飲み物を買いに出ただけなのだよ」
緑間の手にはおしるこの缶が握られている。
火「飲みもん…?よく夏にそんなもん飲めんな」
緑「『冷たい』に決まっているだろうバカめ」
火「そーゆーこっちゃねぇよ!」
高尾は火神と緑間のやり取りに必死に笑いをこらえている様子だった。
緑「まったく…お前には失望したのだよ」
火「なんだよいきなり!」
緑「オレに負ける前に青峰にボロカスに負けたろう」
火「ぐっ…次は勝つ!いつまでもあの時と同じじゃねーよ!」
緑間は火神の手のあとがついたアクリル板をみる。
緑「フッ…まさか『空中戦なら勝てる』などと思ってないだろうな?」
図星を突かれて火神は目を見開く。
緑「跳ぶことしか頭にないのか、バカめ」
火「あぁっ!?」
緑「たかくなっただけでは結果は変わらないのだよ。その答えではまだ半分だ。そんなものはまだ武器とは呼ばん」
緑間は左手の指に巻いていたテーピングを外す。
緑「オレが倒す前にそう何度も負けてもらっては困るな」
緑間の言葉に火神は目を見開く。
緑「来い、その安直な結論を正してやる」
『跳んでみて』完