やることは決まった!!
緑「オレが倒す前にそう何度も負けてもらっては困るな。来い、その安直な結論を正してやる」
緑間は落ちていたボールを拾い上げ、火神に投げる。
高「(ただケンカ売ってるっつーより…その前…『答えが半分』…!?あのハンパねージャンプ力にはまだ先があんのかよ!?)」
緑「10本だ。オマエが攻撃(オフェンス)、オレが守備(ディフェンス)。一本でも取れたらオマエの勝ちだ」
火「あ?」
緑間の提案にボールを受け取った火神はイラつく。
火「どーゆーつもりか知んねーけど、10本連続で防げるつもりかよ?止められるもんなら止めてみやがれ!」
緑「安心しろ、オレの負けはない。今日の占いかに座(オレ)はしし座(オマエ)に順位も相性も完全に上位だ」
雪乃は静かに二人の様子を見ていた。
同時刻、陽も落ちた砂浜では伊月と小金井が走り込みを行っていた。
小金「どしたん伊月、急に走るとか…」
伊「…なぁ、秀徳の練習を見てどう思った?」
小金「いや…みんな上手だなーと…伊月は?」
伊「オレは…鷲の目(イーグルアイ)以外たいした取り柄もないけど、それだけじゃダメだと思った。とにかくPGなのにバスケを知らなさすぎる。秀徳は全体でも個人でも目的がハッキリしてて漠然と練習してない。そーゆ―所で強い学校(トコ)と差がでる気がする。
…帝光にしてもさ…『キセキの世代』は天才以上に皆自分のバスケがある。伝説のバスケ部でレギュラーを勝ちとるってのは才能だけでできるほど甘くないんだろうな」
火神はドリブルで緑間を抜こうとするが、緑間が行く手を塞ぎ抜くことができない。
火「くっ…(前の試合ではそれほど感じなかったが、改めて1対1(ワンオンワン)するとコイツ…)」
緑「心外なのだよ、まさかオレが3P(スリー)しかないとでも?」
高「(緑間はDFもすげーのは知ってる…けど、ここまで抑える…かよ!?ただなんでだ?二人の動きに差はほとんどねぇ…地上戦ならむしろ互角に見える)」
駐車場にチョークで書かれたバツ印、どうやら火神は一本も緑間から取れていない様子だった。
火神はもう一度ドリブルでゴール下に切り込む。
緑間も火神から離れない。
火「(もっとだ…もっと…もっと高く跳べ!!)」
火神は右足で踏み込み、左手でダンクの構えを取る。
が、ダンクは決まらず緑間にブロックされてしまった。
火「なっ…(今のは前の試合の時より確実に高く跳んでたハズだ…)」
高「(またこれだ…ジャンプ力は火神の方が上なのに…得意なはずの空中戦で必ず火神が負ける)」
火「くそっ」
もう一度勝負する為に、一定の位置に戻る火神。
だが、緑間は火神に背を向けた。
緑「やめだ、このままでは何本やっても同じなのだよ」
火「なっっテメェ…」
緑「いいかげん気づけバカめ。どれだけ高く跳ぼうが止めることなどたやすい。なぜなら、必ずダンクが来るとわかっているのだから」
火神は緑間の指摘に目を見開く。
緑「いくぞ高尾」
高「あり?バレてた?」
緑間は高尾の隣にいる雪乃に目をやる。
緑「…WC(ウィンターカップ)予選でガッカリさせるなよ」
『…はい』
緑「…それと………」
緑間は桐皇戦の青峰とのやり取りを思い出し、口を開こうとしたがやめた。
『?』
緑「いや、何でもない。俺と当たるまで負けることは許さん」
『はい』
伊月と小金井は砂浜での走り込みを終え、合宿所への帰り道である海岸を見下ろせる道路にいた。
小金「走ったー。やべ、なんでこんな走ってんの!?」
伊「あれ?あそこ走ってるの火神?」
伊月は砂浜を見下ろすと、火神が一人砂浜を走っていることに気が付いた。
火神はイラつきでペース配分が早いのか、息も絶え絶えに走っている。
火「………くそっ…」
『火神君、ちょっと速いです』
火「んがっ!?」
いつの間にか火神の隣には雪乃がおり、一緒に並走をしていた。
火「なんでいきなり並走してんだよ!?」
『ちょっと火神君を励まそうかと』
火「!?見てたのか雪乃テメェ!タチ悪!余計なお世話だっつんだよバカ」
『!』
火「負けた理由なんざとっくにわかってる」
緑「火神を抑えられた理由?」
緑間とともに合宿所へと帰っている高尾は緑間に先ほどの勝負のことを尋ねる。
緑「バカめ、オレの方が強いだけなのだよ」
高「いやそーゆーこっちゃなくて…うん…はい、そうだね!」
緑「言ったろう、ダンクしかないとわかっていた。選択肢が一つならそこにタイミングを合わせて跳べばいい」
高「いや、理屈はそうだけど…アイツだってダブルクラッチぐれー…」
『やることは決まった!!』