Tip off

帝光 駒木
48 69





監「…黄瀬」



21点差が付いたところで、二軍の監督の手が黄瀬の肩に触れた。



オフィシャル「帝光選手交代(メンバーチェンジ)です」

黄「(一軍同時投入じゃねんだー、どっちにしろムリだったっスね)」



黄瀬がコートの中に入り、試合が再開されると黄瀬のマークはかなりきつかった。



黄「って…」

観「おおっ!?」



黄瀬がボールを持った瞬間、ディフェンスは二人つき身体を容赦なく黄瀬にぶつけてくる。



黄「(あたりキッツ…てか)いってっっ」

駒「一軍かなんか知んねーが、一人ぐらいすげーげのいても集中してつぶせばいいだけさ!」



黄瀬はドライブで駒木選手に少しぶつかりながら切り込もうとするが、そこで審判の笛が鳴る。



審「オフェンスチャージング」

黄「(っこのっ…こっちにはまたキビシイっスね、クソ!)」



あまりの偏り過ぎているジャッジと駒木選手達のプレイに黄瀬のフラストレーションは溜まっていく。





帝光 駒木
61 75





黄「(やっべ点差縮まんねー。こんなセコいカンジで負けるなんて…いやすぎっス)」



黄瀬は涙目になってきたところで、ブザーが鳴る。



オフィシャル「帝光選手交代(メンバーチェンジ)です」



コートの中に入ってきたのは雪乃だった。



観「……!?」

観「え!?」

観「交代ってドコ…」



観客は雪乃を一瞬見失っていた。



観「またずいぶんショボいの出てきたぞオイ。しかも女かよ」

観「バスケなんてできんのかー?ケガすんなよ!」



観客を無視をして雪乃は黄瀬に話しかける、



『すみません、力を貸して下さい』

黄「いや…オレ!?逆じゃねんスか!?」

『私は影(脇役)だ、点を獲る光(主役)は黄瀬君です』



試合は再開されるが、相変わらずキツイ当たりにあっている黄瀬。



黄「(なんかカッコイイこと言ってるけど、ウスいだけの人が何できるんスか、マジで!)」



黄瀬は雪乃を見るが、雪乃は特に何もせずにただ立っているだけだった。



ディフェンスも雪乃についていない。



黄「(てゆーかDFの眼中にも入ってねぇじゃん!!)」



その時、目の前にボールが迫ってきた黄瀬は、手の中にボールを収める。
いつの間にかパスをされていたことに黄瀬は驚愕した。
パスの先を見ると、そこには雪乃がいる。



黄「なっ…」

駒「えっ…」



黄瀬は驚きながらもフリーでシュートを決める。



観「なっ…なぁ―――!?」

観「何が起こった今―――!?」

黄「(まさかカゲのうすさを逆に利用して、パスの中継役に…!?って…そんなのアリか!?)」

『ボールから目を離さないでください、点差が点差何で本気でいきます』









そのころ、帝光中学校では一人の少年が将棋を打っていた。
そこに緑間が少年がいる部屋に入ってくる。



緑「赤司」

赤「緑間か、どうした?」

緑「今回雪乃と黄瀬の二軍同伴を勧めたそうだな」

赤「別に…黄瀬はすぐにユニフォームを着る。先に雪乃の力を紹介した方がいいと思っただけだよ」

緑「すぐに…か。相変わらずなんでもわかったようなことを言う」

赤「…わかるさ、雪乃の力を見出したのだってオレだぜ?」









試合が終わった駒木中学校では、駒木中学校の選手たちが呆然と立ち尽くしている。



最終のスコアボードには、帝光中が2点差で勝っていた。





帰り道、黄瀬は隣に歩いている雪乃に声をかける。



黄「ちょっとだけ…言ってたことがわかったっス。けどやっぱわかんねーっス!」

『?』

黄「すべきことってのがもしわかったとしても、それが自分をギセイにしなきゃいけないんだったら、オレにはムリっス!」





言いながら思った





黄「雪乃っちがスゲーのはわかったけど…それって楽しいんスか?」





多分この人はギセイとか考えてない





『………楽しくないですよ』





だからスゲーと思った

この勝利への純粋さを―――





『負けたらもっと』



雪乃は黄瀬を振り返り、微笑みながらそう言った。
初めて見る綺麗な雪乃の笑顔に、黄瀬は顔を真っ赤に染めた。





とか言ってみた中二の春





『それに…いいんです、あの人と一緒にバスケが出来れば』





あの人…というのが青峰っちのことに気が付き、初めて嫉妬を覚えた中二の春でもあった





『Tip off』完