さぁ…
4時50分―――
大「よし10分前田!」
日「…行くぞ!!」
両チームはほぼ同時に控室を出て会場に向かう。
秀徳控え室では緑間だけがまだベンチに座っていた。
緑「すいません、先に行っててください」
誠凛控え室でも火神はまだ眠っていた。
『…火神君、時間です』
雪乃が火神に声をかける。
緑「(雪乃…そしてヤツの新しい光…火神…)」
緑間は静かに目を閉じる。
緑「(シューティングを欠かした日はない。練習も手を抜いたことはない。左手のツメのケアもいつも通り。今日の占いかに座が一位。ラッキーアイテム(狸の設樂焼)も持っている。バッシュのヒモは右から結んだ。人事は…)」
緑「…尽くした!!)よし…」
火「…行くか!」
二人は同時に目を開いた。
高「…っせーよ!先輩達行っちまったぞ!」
緑間が控え室から出ると、すぐそばには高尾が壁に寄りかかっていた。
『はい』
雪乃と火神も控え室から出た。
誠凛と秀徳が会場入りをすると観客が沸く。
観「おおお、両チーム出てきたぞ!」
観客席には、先ほど誠凛と試合をした正邦の姿もある。
秀徳ベンチでは選手たちが円陣を組む。
大「正直…ここまで誠凛が、勝ち上がってくると予想していた者は少ないだろう。北の王者の敗退は、番狂わせと言う他ない。…だがそれだけのことだ。秀徳(ウチ)にとっては何も変わらん。相手が虎であろうと兎であろうと、獅子のすることは一つ。全力で叩き潰すのみだ!
いつも通り勝つのみ!!」
秀「おう!!!」
一方誠凛ベンチでも円陣を組んでいた。
日「いや〜〜〜…疲れた!」
しかし日向が気の抜けた顔でため息をついていた。
日「今日はもう朝から憂鬱でさ〜、二試合連続だし王者だし、正邦とやってる時も倒してもう一試合あるとか考えるし」
そこまで言うと日向の顔つきが変わった。
日「けどあと一試合。もう温存だのまどろっこしいことはいんねー」
火神は珍しく落ち着いている様子で日向の話を聞いていた。
日「気分スッキリやることは一つだけだ!ぶっ倒れるまで全部出しきれ!!」
誠「おぉ!!!」
誠凛と秀徳のスタメンは整列のため、コートに入る。
日「(……?そういえば火神…思ったよりおとなしいな…)」
日向は火神の落ち着きように疑問を抱く。
緑「まさか本当に勝ち上がってくるとは思わなかったのだよ」
緑間が雪乃に近づき、声をかけた。
緑「だがここまでだ。どんな弱小校や無名校でもみんなで力を合わせれば戦える。そんなものは幻想なのだよ。来い、お前の選択がいかに愚かか教えてやろう。そしてお前が負けたら秀徳に来るのだよ」
緑間はメガネを中指で押し上げる。
『…人生の選択で何が正しいかなんて誰にもわかりませんし、そんな理由で選んだわけではないです。それに一つ反論させてもらえれば、誠凛は消して弱くはありません。
負けません。絶対。だから秀徳にはいきません』
雪乃はまっすぐな眼差しを緑間に向ける。
観客席には正邦との試合に引き続き、黄瀬と笠松の姿もある。
笠「誠凛が王者連続突破の奇跡を起こすか、秀徳が順当に王者のイスを護るか。さぁ…」
決勝だ!!
予選トーナメント戦最終戦、そしてキセキの世代2人目との戦いの火蓋が切って落とされる。
『さぁ…』完