百戦錬磨だ

雪乃の超ロングパスに会場全体は唖然としている。



春「オイオイ…イチローのレーザービームかよ!?バスケだぞ!?」



会場で観戦していた春日も唖然とした表情をしながら言う。



大「なんだと…」

高「あんなパスもあんのかよ!?」



敵である秀徳だけでなく、見方である日向も驚いていた。



日「(オレも初めて見た…けどおかげで流れはまだ変わってない…)まだ…」

『勝負は』

火「これからだろ!」

緑「…フン」



緑間だけは驚きもせず、雪乃と火神の言葉に鼻で嘲笑った。



秀徳ボールになり、緑間にボールが渡る。



観「緑間だ!!また撃つのか超高弾道3P!?」



観客が期待に湧くが、緑間は3Pを打たずにパスを回す。



黄「……!?(珍しいっスね…緑間っちは外れる可能性のあるシュートは打たない…けど今のはいこうと思えばいけたんじゃ…!?)」



黄瀬は緑間がシュートを打たないことに疑問を持つ。



中「な・る・ほ・ど。ふーん…ふん…ふん。へ〜え…見失うほどカゲ薄いのと女の子ってだけでもビックリなのに、あんなパスもあるのか、彼女」



秀徳の監督の中谷仁亮は雪乃のプレイをじっくりと観察をしていた。



中「しかし困ったねー。こんな緑間封じがあるんだね、ふむ…んーどーしよーかなー…」



中谷は独り言のように呟きながら、指をトントンと鳴らす。



黄「緑間っちが封じられてる?」

笠「あぁ、あの透明少女の回転式超長距離パスでな」



黄瀬の疑問に笠松が答える。



笠「緑間のシュートはあの長い滞空時間中に戻り、速攻を防ぐメリットもある。だが全員戻るわけじゃねー。万一外した時のために残りはリバウンドに備えてる。その滞空時間がアダになるんだ。緑間が戻れるってことは火神が走れる時間でもある。
戻った緑間のさらに後ろまで貫通する超速攻がカウンターで来る。だから緑間は打てない。にしてもそのパスを見せつけるタイミングと判断力、一発で成功させる度胸…再認識したぜ」

笠「雪乃(アイツ)あぁ見えて黄瀬と帝光中にいただけはある。百戦錬磨だ」





コート内では高尾は怪しく笑っていた。



高「いやいやいや、そんなんで秀徳(ウチ)抑えられるとか思われちゃ困るなー」



左にフェイントをかけるとあっという間に伊月を抜く。



伊「!!(速いっ!!)」



中に切り込んでいくと水戸部が止めに入るが、すかさずフリーになった大坪にパスを出し、大坪はきっちりとシュートを決めた。



観「おおお、ナイッシュウ」

観「すげえパスだ!!」





7:31
誠凛 秀徳
 2  5





伊「(今の動き……まさかコイツも持ってるのか!?)」



伊月は先ほどの高尾のプレイに既視感を覚えた。



変わって精凛ボール。

雪乃いつも通り、ミスディレクションを使ってフリーになった水戸部にパスをだし、シュートが決まった。



観「おおっ、すぐに返した!!誠凛のパスワケわかんねぇ!けどすげぇ!!」

中「うん…ふんふん、やっぱりここだね」



観客が盛り上がる中、秀徳の監督中谷は冷静に思考を巡らせている。



中「…よし、おーい高尾ー木村ー。マーク交代」



中谷はコート内の高尾と木村に声をかける。



中「高尾、11番(雪乃)につけ」



中谷は雪乃を指差した。



日「雪乃のマーク…?」

降「誰がついても一緒だろ?」

河「見失うほどカゲ薄いんだぞ」



中谷の指示に誠凛側は困惑している。
ただリコだけは中谷の思惑に若干気づいているようだった。



リ「(どーゆーつもり…?いきなり直接的な形にしてきたわね。誠凛と秀徳の共通点…そして、この試合のカギを握る局地戦…つまり)」

高「…やっぱねー。こーゆー形になると思ったんだわー。まっ真ちゃん風に言うなら運命なのだよ。
高尾(オレ)と雪乃(オマエ)、緑間(真ちゃん)と火神(アイツ)がやりあうのは」



高尾と雪乃、緑間と火神はにらみ合う。





『百戦錬磨だ』